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文献名1霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
文献名2第4篇 奇窟怪巌よみ(新仮名遣い)きくつかいがん
文献名3第16章 玉遊〔542〕よみ(新仮名遣い)たまあそび
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-26 18:03:29
あらすじ
三人(音彦、亀彦、駒彦)が進んで行くと、赤白のゴム毬のようなものが上下左右に浮動していた。毬はどんどん増えていく。

音彦が毬に向かって怒鳴りたてると、玉の中でもっとも大きなものに、目鼻口が現れて、笑い出した。玉は、三人に天の声を聞け、と諭すが、三人は聞く耳を持たずに玉の言うことを非難したり嘲笑したりしている。

玉はついに手足を伸ばし、他の小玉と一緒になって、いっせいに三人に打ってかかった。頭をしたたかに打たれたと思った瞬間、三人は夢から覚めた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月20日(旧02月22日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年10月30日 愛善世界社版189頁 八幡書店版第3輯 99頁 修補版 校定版190頁 普及版81頁 初版 ページ備考
OBC rm1316
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本文  明るくなつた道を三人は足を早めて進み行く。前方に当つて赤白の護謨毬の様なもの上下左右に浮動廻転してゐる。音彦は目敏く之を眺め、
音彦『ヤア駒彦、又面白いぞ。先を見よ、魔窟の魔神が玉突をやつてるわ』
亀彦『オー、あれや野球戦だ、流石は魔窟だな、味な事をやりよるわ。此次には又ダンスの余興が見られるかも知れないぞ。文明の空気は山の谷々はおろか、斯様な地底の巌窟内迄もゆき亘つてゐるのだね』
音彦『マア一寸ここらで腰を下して見物し乍ら臨時将校会議を開いて、その結果吾々も魔神の打球会に参加するかせないかを決定したら如何だ』
亀彦『三人では将校会議も良い加滅なものだな。何は兎もあれ、ゆつくりと見物する事に仕様かい。ヤアヤア殖えるわ殖えるわ、沢山な毬が現はれた、十が二十になり、二十が四十になり、四十が八十になり、八十が百六十になり、百六十が三百二十になり……』
音彦『コラコラ、貴様はコンナ処で算術の稽古でもするのか』
亀彦『ヤア会計検査院へ決算報告をする必要があるから、遺漏ない様に十分のベストを尽して居るのだ。会計検査官も骨の折れたものだ』
音彦『それは数十万年後の豆人間のする事だ。吾々は神代の英雄豪傑だ。ソンナ取越苦労はやめて現実的活動をやらなくてはならぬでは無いか』
亀彦『智識の宝庫とも言ふべき亀サンは、万年の先まで前途を達観してるから、天眼通に映じて仕方がない。コンナ神秘的な事は貴公等には諒解出来まいが、然し原始的で頭脳の発達せない宣伝使には無理もないワイ』
駒彦『貴様は如何してもウラル教の垢が脱けないから直に物質的の智識を出したがるのだ。神代には計算等は必要が無い。神は無形に見、無声に聞き、無算に数へ給ふものだ。ソンナ時代に適合はぬ前後のそろばん様な、迂遠な事は没にした方が面倒臭くなくて良からう』
亀彦『フト不成立の問題を提出して非難の焦点となつて仕舞つた。ヤア仕方が無い。本案は撤回します』
音彦『撤回も何もあるものか、吾々は白紙主義だ。ソンナ愚案は忽ち握り潰しだ』
亀彦『それでも上院は如何する積りだ。ヒヒヽヽヽ』
 三人は又もや立つて幾百とも数へ尽くせぬ玉の前後左右に浮動廻転する中心目がけて驀に進撃せむと一決し、音彦は先頭に立つて、
音彦『ヤイ、選手も居らぬのに玉ばかり何だ。コンナ処で民衆運動を開始しよつて良い加減に廃めないか、不穏当だぞ』
亀彦『ヤア此奴、中々野球にしては大きいなり、重たい玉だ。此奴は石玉だ。うつかり衝突でも仕様ものなら大変だ。ヤイ数多い化け玉、この亀サンの言霊と競争だ。如何だ、屏息するか』
玉の中の最巨大なるもの忽ち目、鼻、口、現はれて、
『アハヽヽヽヽ、玉げたか、玉らぬか』
亀彦『ヨウ、矢張醜の巌窟式だ。貴様一箇丈けでは興が尠い。何奴も此奴も一斉に目、鼻、口を現はせ』
『御註文とあれば幾百万でも現はれて見せてやるぞ』
亀彦『貴様は螢の燐の様な奴だ。何程にでも砕けよるのだな。一体全体何物だ。三五教の宣伝使のたまたまの御探険だ。玉を飾つて歓迎するのか、それとも俺達の御威勢に恐れて、こいつはたまらんと言ふので騒ぐのか。眼の玉の飛び出る様な目に会はねばならぬぞ。胆玉がデングリ返るぞ、オイ玉公、返答は如何だ』
巨大の玉は『ウフヽヽヽヽヽイヒヽヽヽ』を連続してゐる。
亀彦『ヤア怪体な奴だ。旅をして居れば偶にはコンナ事も慰みになつて良いが、斯う沢山にやつて来よると五月蝿くて堪らぬワイ。一体貴様等の目的は那辺に在るのだ。神に代つて世界を救済する天下の宣伝使だ。何でも不平な事があれば、俺に遠慮は要らぬ、逐一開陳したが良からうぞ』
『吾輩は何にも欲しくない、普通選挙の玉が欲しさに、斯う皆の霊魂が一団となつて活動してゐるのだ』
音彦『貴様は共産主義だな。仰山らしい隊を組んで其態は何だ。何故代表者を選定して交渉せないのか』
巨大の玉『盲目、聾計りだから三人や五人の代表者が言つたつて貴様等の目には着きはせない。それだから已むを得ず多数の団体を組んで目に留まる様に、聞える様に甲声をあげて団体運動を開始してるのだ。之だけ大勢の玉が叫んで居るのに貴様の耳には這入りはしまい』
亀彦『何だ、蚊の泣く様なチツポケな声を何万集めたつて、吾々の耳に進入するものか。第一俺等は鼓膜がすつかり麻痺して居るから、もつと大きな声で大声叱呼せないか』
巨大の玉『大声俚耳に入らずと言ふ事がある。天の声が貴様の耳には入らぬか』
亀彦『貂の声か鼬の声か知らぬが、ソンナ事騒ぐよりも鼬の最後屁を放らぬ様に気をつけたが良からうぞ。糞蝿の様に臭いものを嗅ぎ出しよつてブンブンと跳ね廻つても、元が蝿だから敗北するのは当然だ。どうせ優勝劣敗、強い者の強い、弱い者の弱い現代だからジタバタしても駄目だよ。正当な事を言ふ奴は排斥されるものだ。貴様は時代に不忠実な奴だ。処世法を解せない馬鹿者だ。アハヽヽヽヽ』
 巨大な玉は、目を怒らし眉毛を逆立て、鼻息荒く手足をニユウと出し拳骨を固め、
『皆の奴、コラコラ皆これから直接行動だ』
と亀彦に向つて四方八方より打つてかかる。亀彦は蠑螺の如き拳骨に頭蓋骨をしたたかに打たれてアツと言うた途端に夢は覚めた。
亀彦『ヤアコンナ処にコクリコクリと舟を漕いで居たワイ。オイ音サン、駒サン尻に白根が下りた様だ。良い加減に立つて強行的前進を続けようかな』
(大正一一・三・二〇 旧二・二二 北村隆光録)
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