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文献名1霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
文献名2第1篇 神軍霊馬よみ(新仮名遣い)しんぐんれいば
文献名3第10章 白狐の出現〔600〕よみ(新仮名遣い)びゃっこのしゅつげん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-01-27 17:11:26
あらすじ
鬼雲彦が無念の思いにその場に沈んでいると、鬼雲彦妻子の死体は巨大な白狐に還元し、這い出した。手下と見えた鬼彦らも、白狐の正体をあらわして、鬼雲彦を取り囲む。

鬼雲彦は暴れ狂い、鬼ケ城山を指して逃げていった。多くの従卒も鬼雲彦に続いた。しかし鬼ケ城山方面からは、亀彦宣伝使らが向かって来た。鬼雲彦は元来た道を逃げ戻り、大江山本城に逃げ込んだ。

本城で妻の鬼雲姫と合流したが、夫婦共に城内の井戸に落ち込んでしまった。そこを亀彦に引き上げられた。

一方、鬼武彦はさいぜん、鬼彦らを閉じ込めた洞窟の蓋岩を開けた。鬼彦一行は大江山本城に戻ってみると、鬼雲彦夫婦が、亀彦らに囲まれて説諭を受けていた。

鬼彦一行は亀彦らと宣伝歌を唱和した。いたたまれなくなった鬼雲彦夫婦は、一目散に駆け出して伊吹山方面指して逃げていった。

鬼武彦は、大江山は邪神の集まる霊界の四辻であるので、神政成就の暁まで、自分がここを守護することを宣言した。

亀彦、英子姫、悦子姫は鬼武彦の働きと神術を激賞した。そして東を指して進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月14日(旧03月18日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月25日 愛善世界社版126頁 八幡書店版第3輯 447頁 修補版 校定版130頁 普及版56頁 初版 ページ備考
OBC rm1610
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本文  八洲の国を駆け巡り  この世を曇らす自在天
 自由自在の活動を  続けて茲に婆羅門の
 大棟梁と仰がれし  鬼雲彦の猛将も、
 最愛の妻の非業の最後に又もや続いて子女の浅ましき此姿を見て胸も張り裂く許り、魂消え、魄亡びる如き心地し乍らドツカと其場に打倒れ無念の涙にくれ居たり。鬼彦は肩を揺り乍ら大口開けて高笑ひ、
『アハヽヽヽ、吾こそは鬼彦とは詐り誠は大江山に現はれし白狐の鬼武彦、汝悪神の計略を根底より覆へさむと千変万化の活動を続け、神素盞嗚の大神の大命を奉じ、汝が一類を征服に向うたり、汝が力と恃む鬼彦は魔窟ケ原の岩窟に匿ひあれば汝が神力を以て索め出せよ、さり乍ら彼は最早汝の意志に従ふ者に非ず、立派なる三五教の信者となりて居るぞ、汝が妻と見えしは汝が眼の誤り、吾眷族の名もなき白狐の変化』
と言葉終らずに鬼雲姫は忽ち巨大なる白狐となつてノソリノソリと這ひ始め、鬼雲彦に向つて眼を光らせ牙を剥き飛びかからむとする勢を示し居る。鬼虎は又もや威丈け高に胸を打ち乍ら大口開けて高笑ひ、
『アハヽヽヽ、吾こそは大江山に現はれて四方の魔神を征服し言向け和す神の使、旭の白狐が化身なるぞ、汝が力と恃む四天王の随一と聞えたる鬼虎は前非を悔い今は三五教の信者となれり、魔窟ケ原の岩窟に匿ひあれば未練あらば汝自由に岩戸を開いて面会せよ、汝が伜と見えたるは、之も白狐の化身なり、汝が妻子は手段を以て、或処に匿まひあれば改心次第にて親子夫婦の対面を許し呉れむ』
と言葉終らぬに又もや一つの網代籠よりノソノソ這ひ出た巨大の白狐、以前の如く鬼雲彦が身辺に目を睜らし牙を剥きつつ進み寄る。熊鷹は又もや立ち上り、
『吾こそは神素盞嗚の大神の立てさせ給ふ三五の教に仕ふる白狐の高倉、熊鷹と見えしは此方が化身』
と言葉終らぬに又もや這ひ出た巨大の白狐、同じく鬼雲彦に向つて襲ひ行く。石熊は又もや立ち上り、
『吾こそは月日明神と名を頂きし常夜の国の大江山に現はれたる白狐なるぞ、汝は今より前非を悔い婆羅門教を振り棄てて三五の神の教に信従するか、違背に及ばば大江の山は木端微塵に踏み砕き、草の片葉に至る迄焼き亡ぼさむ、返答如何に』
と詰めかける。又もや一つの駕籠よりは巨大の白狐現はれて鬼雲彦を前後左右より取り巻きコンコンと啼き立て乍ら改心を迫る。鬼雲彦は忽ち精神錯乱して大刀を引き抜き前後左右に荒れ狂ひ、館を後に木の茂みを指して姿を隠したり。数多の従卒共は鬼雲彦が後を追ひ、山を越え谷を渉り鬼ケ城山の方面さして力限りに遁走したりける。
 鬼ケ城山の方面より亀彦を先登に英子姫、悦子姫は宣伝歌を謡ひ乍ら此方に向つて前進し来る。流石の鬼雲彦も前後に敵を受け死物狂の勇気を現はし、長刀を引き抜いて亀彦目蒐けて斬つて掛るを、心得たりと亀彦は右に左に身を躱し飛鳥の如く挑み戦へば鬼雲彦は踵を返し、もと来し道を一目散に帰り行く。数多の従卒は吾後れじと三十六計の奥の手を出して散り散りバラバラ、足に任せて逃げて行く。何時の間にやら鬼雲彦は又もや本城の門前に帰り来たりぬ。門内には鬼雲姫が叫び声、
『鬼雲彦の夫はあらざるか、虎彦、亀彦、山姫、河姫は何所ぞ』
と身を藻掻き声を限りに叫び居る。鬼雲彦は息も絶え絶え門戸を敲き、
『ヤアさう言ふ声は女房なるか、俺は無事に此処まで帰つて来たぞよ。鬼武彦は如何なつた、白狐の奴等は何処へ行つた、返答せよ』
と呶鳴り立てる。鬼雲姫は門内より、
『アヽ恋しき吾夫、能くも無事に帰らせ給ひしぞ』
と中より門を颯と押し開き鬼雲彦が手を執つて奥へ奥へと進み行く。余りの嬉しさに足許見えず鬼雲姫は夫の手を携へたる儘、かねて穿ち置いたる城内の井戸に夫婦共々にドスンと許り陥みぬ。大江山の本城は敵も味方も影を隠し幽かに鼠の泣き声のみ聞え居る。門前には大江山の山颪、岩も飛べよと許り吹き荒みゐる。月は早西に没し黒雲四辺を包み咫尺を弁ぜず、暗黒の帳は下されたり。鬼雲彦夫婦は千仭の井戸の底に数多の蝮と諸共に世間知らずの楽隠居、否蝮地獄の苦き生活哀れなりける次第なり。
 かかる処へ後追ひ来たる亀彦はツカツカと門内に進み入り城内隈なく探せども人影さへも見えざれば如何せしやと三人は四辺に心を配りつつ窺ふ折しも井戸の底より怪しき叫び声、はて訝かしやと手燭を点して覗へば紛ふ方なき鬼雲彦が夫婦の者、九死一生の此苦みを見るに見かね館の井桁に太縄を打ち掛けツルツルと井中に釣り下せば、鬼雲彦夫婦は無我夢中になつて手早く此綱に跳び付くや否や綱はツルツルと何物にか引き上げられて再び旧の処へ帰り行きぬ。暗を通して聞ゆる三五教の宣伝歌、鬼雲彦夫婦は叶はぬ時の神頼み、婆羅門教の神歌を唱へ声を限りに哀願する。一方鬼武彦は先に据ゑ置きたる千引の岩を取り除き岩蓋をサツと開けば待ちかねたる如く現はれ来る鬼彦、鬼虎、熊鷹、石熊其他数多の帰順せし人々は、枯木に花の咲きしが如く喜び勇み、大江山の本城目蒐けて帰り来たりぬ。
 東の空はホンノリと白み初め、明けの鵲がカアカアと啼き初めたり。漸く山上の鬼雲彦が門前に立ち帰れば亀彦、英子姫、悦子姫の三人に取り巻かれ、鬼雲彦夫婦は何事か説諭を受けつつありぬ。鬼彦初め一同は亀彦一行に一礼し天津祝詞を奏上し三五教の宣伝歌を声を揃へて宣りつれば、鬼雲彦夫婦は居たたまらず館を捨てて一目散に雲を霞と駆け出し伊吹山の方面を目蒐けて天の岩船に手早く打乗り夫婦諸共中空を翔り行く。
 亀彦、英子姫、悦子姫は、鬼武彦の神を言霊を以てさし招けば忽ち昼の天を掠め白煙となりて南方より現はれ来り忽ち三人の前に英姿を現はしたり。
亀彦『ヤア鬼武彦殿、貴下の活動天晴れ天晴れ、吾は之より聖地に向つて再び進まむ。貴下は此処に留まり給ひて、旭、高倉、月日の諸使と共に悪魔征服の守護をなし給へ』
鬼武彦『委細承知仕る、当山は天下の邪神集まり来る霊界の四辻なれば国武彦の大神、以前の如く国治立の大神と現はれ給ひ、神素盞嗚大神、瑞の御霊と現はれて、神政成就の暁まで代る代る当山を守護し奉らむ、吾々此処にあらむ限りは豊葦原の中津国なる自転倒島は先づ先づ安心なされ度し、貴下は素盞嗚の大神様の御後に従ひ天下に蟠る八岐の大蛇を言向けて神政復古の神業に奉仕されよ、万一御身の上に危急の事あらば土地の遠近を問はず、鬼武彦、旭、高倉、月日の名を呼ばせ給へば、時刻を移さず出張応援仕らむ』
 亀彦、英子姫、悦子姫は一度に満足の意を表し鬼武彦の千変万化の神業を激賞し此処に目出度く袂を分ち東を指して進み行く。
(大正一一・四・一四 旧三・一八 北村隆光録)
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