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文献名1霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
文献名2第2篇 深遠微妙よみ(新仮名遣い)しんえんびみょう
文献名3第13章 神集の玉〔603〕よみ(新仮名遣い)こうづのたま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグドイツ(独逸) データ凡例 データ最終更新日2021-01-27 17:26:42
あらすじ
亀彦、英子姫、悦子姫は秋山彦の館に戻ってきたが、門番らは宣伝使は鍵盗人に違いない、と言い張って中に入れず、ちょっとした騒ぎになっていた。

秋山彦はそこへやってきて、亀彦らに宝庫の鍵が盗まれた経緯を知らせた。亀彦は鬼武彦に祈願をこらすと、鬼武彦はたちまち現れた。そして神力で、高姫らが冠島・沓島に向かって漕ぎ出していることを突き止めた。

さっそく、鬼武彦と亀彦は、秋山彦の家の郎党十数人を引率して、高姫を追いかけた。

高姫はすでに、冠島に上陸して、素盞嗚尊が秘め置いた如意宝珠を取り出し、木の根元に埋めて隠していた。

そして鰐に守られた沓島に近づき、鰐の背を渡って上陸した。そして頂上の岩窟に入り、金剛不壊の宝玉を盗ろうとしたが、この宝玉は巌に密着していてなかなか取れない。

そうしているうちに鬼武彦らは追いついて、岩窟に蓋をして、高姫と青彦を閉じ込めてしまった。

高姫と鬼武彦・亀彦は交渉の末、如意宝珠の玉を返す代わりに、岩窟から高姫らを出すこととなった。

高姫は冠島で如意宝珠の玉を隠し場所から掘り出すと、しっかりと握って、田辺の港で返すと言って船に乗り込んだ。

この如意宝珠の玉は、一名神集の玉と言い、近代の蓄音機の玉のような活動をする宝玉である。現在はウラナイ教の末流の悪神の手によって、ドイツのある地点に深く秘蔵されているという。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月15日(旧03月19日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月25日 愛善世界社版157頁 八幡書店版第3輯 458頁 修補版 校定版161頁 普及版70頁 初版 ページ備考
OBC rm1613
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本文  秋山館の門番なる銀公、加米公両人は由良の港に立出て船出の用意致さむと表門へ駆け出す。折から現はれし一男二女の宣伝使、宣伝歌を謳ひ乍ら悠々として門内に入らむとする。銀公、加米公は大手を拡げて、
『其方は亀彦の宣伝使、鍵盗人の同類であらう。もうもうもう宣伝使のせの字を聞いても嫌になる哩、最前来やがつた二人の宣伝使奴が、大切なる鍵をちよろまかして裏門より逃失せやがつた。それが為めに当館の中は上を下への大騒動だ、貴様ももう駄目だ、肝腎要の鍵は先の宣伝使が持つて帰つた、神秘の鍵を盗まれ当館は空前絶後の大混雑、之から沢山な番犬でもかり集めてかぎ探させる処だ、貴様も宜い加減に帰れ』
亀彦『之は心得ぬ其方の言葉、吾々に対し盗人扱ひをなさるのか』
加米公『極つた事だよ、宣伝使と言へば鍵盗人の代名詞だ、通る事罷りならぬ、貴様の様な者を奥へふみ込まさうものなら、それこそ大変だ』
亀彦『一応合点の往かぬ汝が言葉、二人の宣伝使とはウラナイ教の宣伝使であらう、吾々は三五教の宣伝使だ、神秘の鍵を与へる者だ』
銀公『何、神秘の鍵を与へるとな、サア早く其鍵を見せて呉れ、鍵を渡せば通行を許して与らう、宣伝使と言へば何奴も此奴も皆鍵盗人の様な気がする、貴様は何処で神秘の鍵とやらを盗みて来たのだ、サアサ早く手に渡せ』
亀彦『アハヽヽヽ、訳の分からぬ門番だな、サアサ英子姫さま悦子姫さま参りませう』
と行かむとする。銀公、加米公は大声をあげて呶鳴り立てる。此声を聞きつけたる秋山彦は何事ならむと表に飛び出し到り見れば亀彦の宣伝使一行なりけり。
秋山彦『ア、之は之は亀彦様、英子姫様、悦子姫様克く入らせられました。少し許り取込が出来ましたので大騒ぎを致して居ります、素盞嗚大神様よりお預り申した大切なる玉鍵を何者かに盗まれ、唯今僕共を四方に遣はし探索の最中で御座います』
亀彦『ア、それで分りました、門番共が私に対し鍵盗人だとか何だとか大変な事を言つて居ました、然しそれは大事ですな、何か心当りは御座いますまいか』
秋山彦『先程ウラナイ教の高姫、青彦と言ふ二人の宣伝使が玄関まで来訪致し、其儘姿を隠しました。あとを見れば玄関の間の額の裏に匿ひ置きたる大切な玉鍵が紛失致して居ります、人を疑ふは決して良い事ではありませぬが、よもやと思ひ心の裡に罪を作つて居ります』
亀彦『ヤア、それは御心配、お察し申す、吾々も共々に力添を致しまして、鍵の所在を捜索致しませう』
秋山彦『あの鍵は冠島、沓島の宝の鍵で御座いますれば、万々一其鍵を以て両島に押し渡り、如意宝珠の玉を盗み取る様な事が御座いましては、折角の神政成就の基礎も滅茶々々になつて仕舞ひまする、生命に代へても此鍵と玉とは守らねばなりませぬ』
亀彦『アヽ、さうぢや、斯ういふ時こそ鬼武彦殿にお頼み申さねばなるまい』
と大江山の方に向つて天津祝詞を奏上し救援を求めたるに、言下に、
『オウ』
と答へて現はれ来る覆面の大男、能く能く見れば鬼武彦なりける。
亀彦『ヤア貴下は鬼武彦様、能うこそ御入来下さいました、お願ひの筋は斯く斯く』
と鍵の紛失せし事を詳細に物語れば、鬼武彦は暫時頭を傾け目を閉ぢ居たりしが忽ち顔色華に、
『アハヽヽヽ、此鍵の掠奪者はウラナイ教の宣伝使高姫、青彦と言ふ奴、只今由良の港より船に乗り博奕ケ岬迄漕ぎ出して居りまする、サア吾々がお伴致しませう、船を出しなさいませ、秋山彦殿、御心配御無用だ』
秋山彦『有難う御座います、何卒何卒宜しく御願申します』
鬼武彦『某は之より亀彦と共に船を準備へ冠島、沓島に向ひませう、秋山彦を始め英子姫、悦子姫は当館にあつて吾々が帰るを待ち受けられよ、亀彦来れ』
と言ふより早く、加米公その他秋山彦の家の子郎党十数人を引率し三艘の小船を艤装して由良の港の月照る海原を艪櫂の音勇ましく漕ぎ出したり。三五の月は海底深く姿を浮かべ、船の動揺につれて忽ち上下左右に延長し海底に銀竜の姿を現じつつ、うつ波の博奕ケ岬を後に見て潮の飛沫をカブラ岩、経ケ岬を左手に眺め高雲山を右手に望み矢を射る如く高姫の後を追ひしき行きぬ。
 高姫は二時ばかり以前に冠島に上陸し玉鍵を以て素盞嗚尊が秘め置かれたる如意宝珠を取り出し、山上の大桑樹の根元に密に埋め目標をなし、又もや青彦と共に船に乗り沓島に向ひける。
 巨大なる鰐は数限りなく沓島の周辺を取り囲み堅く守り居る、鰐の群に圧せられて、船は最早や一尺も進む事能はず、高姫は船の綱を腰に結び付け鰐の背を渡つて青彦諸共漸く断崖に登り着きぬ。此間殆ど二時許りを要したりける。鬼武彦、亀彦の一行は忽ち此場に追ひつきける。数多の鰐は左右に分れ船路を開く。一同は直に島に駆け上り頂上の岩窟に向つて登り行く。釣鐘岩の絶頂に直立一丈許りの岩窟あり。其処には黄、紅、青、赤、紫其他色々の光彩を放てる金剛不壊の宝玉が匿されあり。二人は余念なく其岩窟に跳び込み玉を取らむとて汗み泥になつて働き居る。鍵は穴の端に大切相に木葉を敷いて置きありぬ。亀彦は手早く其鍵をとり上げ懐中に捻ぢ込みける。金剛不壊の此玉は、地底の世界より突出せしものにして巌の尖端に密着しあれば容易に摂取する事能はず、鬼武彦は密に傍の大岩石を引き抜き来り岩穴の上にドスンと載せたり。二人は徳利口を塞がれて如何ともする事能はず悲鳴をあげて泣き叫ぶ。
 鬼武彦始め一同は此処に悠然として天津祝詞を奏上し宣伝歌を唱へ且その周囲に蝟集して休息し雑談に耽りぬ。岩と岩との隙間より二人の藻掻く態は歴然と見え居たり。亀彦は隙間よりヌツと中を覗けば、穴の中より高姫は亀彦の顔を見上げ、
高姫『ヤア汝は三五教の宣伝使、吾々は神勅を奉じて此玉をお迎へに参つたもの、神業の妨害すると地獄の釜に真逆様に落されるぞ、早く悪戯をやめて誠の道に立ち復り、此岩を除けて日の出神にお詫を申さぬか、不届な奴めが』
亀彦『アハヽヽヽ、末代上れぬ岩穴に放り込まれて減らず口を叩くな、此岩は巨大なる千引岩、仮令百人千人来るとも容易に動かぬ代物だ、マアマア悠りと此処に安居して沈思黙考なされませ、吾々は之より聖地を指してお先へ御免蒙る』
高姫『岩石を取らぬなら取らぬで宜い、其代りに冠島の玉の所在は分るまい、玉の所在が知り度くば此岩を取り除けて吾々二人を救ひ上げ船に乗せ鄭重に田辺の港まで送り帰せ、如意宝珠の玉は欲しくは無いか』
亀彦『エー、抜け目のない奴だ、鬼武彦さま、如何致しませうか、貴方の天眼力で、玉の所在をお探し下さらぬか』
鬼武彦『一旦悪神の手に渡つた如意宝珠なれば外部は穢れ曇り一向霊気を放射致さぬ、あの玉を再び用ひむとすれば七日七夜の間、和知の清泉に清めて磨かねばなりませぬ、さりとて、所在が分らねばこれ亦素盞嗚の大神に対して申し訳が立たぬ、エー仕方がない、高姫、青彦両人に白状させるより外に道はありますまい』
亀彦『困つたな、万劫末代此岩穴に封じ込めて与らうと思つたに惜しい事だ、オイ、高姫、青彦の両人、貴様は余つ程幸福者だ、玉の所在を逐一申せ、然らば此岩を取り除いて与らう』
高姫『ドツコイ、さうは往きませぬぞ、岩石を除いて吾々を冠島迄送り届けなければ仲々白状致さぬ、万一迂濶所在を知らすが最後此儘にして置かれては吾々の立つ瀬が無い、吾々を救ふ方法は玉の所在を知らさぬ一法あるのみだ、ホヽヽヽ』
亀彦『エー、酢でも蒟蒻でも往かぬ奴だ、一歩譲つて此岩を取り除けて助けて与ろか、打たぬ博奕に負たと思うて辛抱するかなア』
と呟き乍ら鬼武彦に目配せすれば鬼武彦はウンと一声、力をこめて岩を蹴る、岩石はガラガラガラツ、ドドンツと音響を立て眼下の紫色の海中に向つて水柱をたてつつドブンと落ち込みぬ。高姫、青彦は漸く這ひ上り、
『ヤア皆さま、御心配を掛けました。お蔭さまで助けて貰ひました。サアサ、帰りませう』
亀彦『コレヤコレヤさうは往かぬ、何処に隠した、白状致さぬか』
 高姫『如意宝珠の玉は冠島に隠してある。此処では無い、早く船を出しなさい、愚図々々して居ると荒風が吹いて帰る事が出来なくなる』
 鬼武彦一行は釣鐘岩を辛うじて下り船に乗り込みぬ。高姫、青彦は鬼武彦、亀彦の船に分乗せしめ彼が乗り来りし船には秋山彦の僕を乗せ、艪櫂の音勇ましく冠島に向つて漕ぎ帰る。高姫は冠島へ着くや否や、猿の如く山上に駆け上り、手早く珠を掘り出し懐中に捻込み、
『サア如意宝珠は之で御座る、今お渡しすると貴方は都合が宜しからうが妾の都合が一寸悪い、万一船中に於て海中に放り込まれでもしては大変だ、もし放り込まれたら懐中の玉と一緒に沈む覚悟だ、サアサ田辺の港でお渡し申す』
亀彦『何処迄も注意周到な奴だナア、吾々は決して汝等を苦しめる考へでは無い、今直に渡して呉れよ。屹度田辺に送り着けてやる』
高姫『滅相もない、其方の出様次第に依つて此玉を岩石に打付けて砕いて仕舞ふか、疵をつけるか、海中に投げ込むか、未だ見当が付いて居らぬ。渡す渡さぬは田辺へ着いた上の事だ、オホヽヽヽ』
亀彦『ソンナラ貴様だけ船に乗せてやる、青彦は此島に暫時居つて修業をしたが宜しからう』
高姫『滅相な、車の両輪、二本の脚、御神酒徳利、鑿と槌、二人居らねば何事も一人では物事成就致さぬ、一本では歩けない。青彦も一緒に連れて帰れ』
亀彦『何処迄も図々しい奴だ、それ位でなくては三五教の切り崩しは到底出来よまい、アア感心感心、韓信の股潜りだ、アハヽヽヽ』
鬼武彦『サア亀彦さま、話は悠りと船中でなさいませ、東北の天に当つて怪雲が現はれました。暴風の襲来刻々に迫つて来ました。サア早く早く』
と急き立てる。亀彦、高姫其他一同は四艘の船に分乗し艪櫂の音勇ましく田辺を指して帰り来る。アヽ此宝珠は如何なるであらうか。
 因に言ふ、此如意宝珠の玉は一名言霊と称し又神集の玉とも言ひ言語を発する不可思議の生玉である。丁度近代流行の蓄音器の玉の様な活動をする宝玉にして今はウラナイ教の末流たる悪神の手に保存せられ独逸の或地点に深く秘蔵されありと言ふ。
(大正一一・四・一五 旧三・一九 北村隆光録)
(昭和一〇・五・二六 天恩郷 王仁校正)
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