鬼雲彦によって岩窟に一年押し込められていたお節は、悦子姫によって救い出され、平助・お楢の祖父母の元に帰ってきた。
そして三五教の宣伝使、岩公、勘公、櫟公と共に、雪の中を真名井ケ原へとお礼参りに出かけた。爺・婆は足元に難があるため、岩公、勘公、櫟公三人は先に雪の中を発って行った。
話は戻って、鬼虎、鬼彦の両人は心の鬼に責められながらとぼとぼと雪道を行くうちに、路傍の糞壺に落ちてしまった。
厳寒の中、二人は命からがら進んで行くと、一軒のあばら家があった。着物を洗濯し、古ごもや古ござを巻いて、ようやく命をつないだ。
部屋の隅に加米彦がいて、二人に豊国姫命の命で悦子姫より衣を授かってきた、という。鬼虎と鬼彦は喜ぶが、その着物は、真名井ケ原に着いて体を清めてから出ないと渡せない、という。
そこへ岩公、勘公、櫟公が追いついてきた。
加米彦は、家の中からぼろぼろの着物を探し出して、当面の用にと鬼虎と鬼彦に着せた。
しばらく行くと、道端にこざっぱりとした家があり、女が招く。一同が中へ入ると、おコンと名乗る女は、鬼虎と鬼彦に禊をさせ、悦子姫からの立派な着物を授ける。
その着物には、鬼彦は彦安命、鬼虎は虎彦命という宣伝使名が書いてあった。おコンはもうすぐ真名井ケ原なので、ここで天津祝詞と天の数歌を唱えるように、と導師の役をする。
一同が一生懸命祝詞を唱えていると、平助、お楢、お節の三人が追いついて来て声をかけた。気づくと、おコンも加米彦もおらず、岩公、勘公、櫟公、鬼彦、鬼虎の五人は、真っ裸で雪の中に座っていたのであった。