正月二十七日の進撃の前、三軍の将に任命された夏彦、常彦、岩高、菊若は、出発に先立って、大将の黒姫への不平不満談に花を咲かせている。
曰く、黒姫の言行一致が最近怪しくなってきた、というのである。そこへ黒姫が現れて、四人の言行を非難し、説教を始めた。
そして出陣したが、青彦、加米彦にさんざんに敗北したのは、先に述べたとおりである。
黒姫の幹部であった夏彦、常彦、岩高、菊若は、黒姫・高山彦結婚の一件以来統一を欠き、三五教に心を移しつつあった。真名井ケ原攻撃の際も、この四人がわざと敗走したところも大いにあったのである。
人心を収攬するためには、ウラナイ教のように権謀術数・巧言令色では行かないのである。
三五教はただ至誠至実をもって神業に奉仕し、ミロクの精神を惟神的に発揮するのみである。そうすれば人心は期せずして三五教に集まり、何時とはなしに天下の大勢力となる。
黒姫は、青彦に懸想しているお節をまず篭絡し、お節を介して青彦をウラナイ教に引き戻そうと画策していた。