紅包む弥生の空に朧に月がかかる。和知の里の小路をとぼとぼと、悦子姫、音彦、加米彦、夏彦らの宣伝使一行が歩いてくる。
向こうから二人連れがやってきて、宣伝使たちの方を見ながらひそひそとささやきつつ眺めていた。これは英子姫と亀彦であった。
一行は邂逅し、芝生の上に座って、これまで宣伝の旅の経緯を語り合った。
英子姫は、弥仙山に父神・神素盞嗚大神の神務を帯びて登ったというが、その内容については明かさなかった。悦子姫一行は、英子姫に勧められて弥仙山に登ることとし、英子姫と亀彦に別れを告げた。
険しい弥仙山を登っていく折りしも、加米彦と夏彦は軽口をたたいている。
途中で、一人の爺に声をかけられ、家によって神様の話をするように懇願される。聞けば、以前にここを通った英子姫一行が、後から来る宣伝使に神の道を聞け、と諭したのだという。