竜国別は吹雪の山を高春山に向かって進んで行く。岩の陰に雪を避け、一夜を明かすことになった。
うつらうつらしていると、妙齢の美人が赤子を抱いてやってきた。女は、自分は浪速の者で高春山の鬼婆にさらわれていたのを、逃げてきたのだ、と言った。
竜国別は枯れ柴に火をつけて暖をとった。女は、高春山の内情に通じていると言って、竜国別と一緒に魔神征服に行こうと言う。竜国別は断るが、女は竜国別を誘惑しようとする。
女は自分の審神をしろと竜国別に迫り、竜国別を困惑させる。女は羽衣の舞を舞って竜国別の身魂の曇りを取ってやろうと言い出し、そのために赤子を抱いてくれるように、と竜国別に頼む。
竜国別は、魔神征服の途上、赤子とは言え女の子を抱くことを渋るが、女は女性がいかに勝れているかをとうとうと演説し、とうとう竜国別は不承不承に赤子を抱こうとする。
するとどこからともなく法螺貝の音が響き、大男が雪を踏んで現れると、女に対して大喝した。女は金毛九尾白面の悪狐の正体を表して逃げて行った。竜国別は肝をつぶして夢心地になってしまった。
またそこへ、美妙の音楽が聞こえて天女が現れた。先の大男は鬼武彦、天女は言依別の本守護神・言依姫であった。二柱は竜国別の急を救うために現れたのであった。
鬼武彦は、玉治別、国依別、竜国別の三人では高春山征服は荷が重いので、自分に三人の加勢を命ずるようにと言依姫に頼むが、言依姫はこれは三人の卒業試験だから、危急の場合以外は見守るようにと鬼武彦に依頼した。
竜国別は夢が覚めた心地して、宣伝歌を歌いながら進んで行った。