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文献名1霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
文献名2第4篇 反復無常よみ(新仮名遣い)はんぷくむじょう
文献名3第16章 約束履行〔690〕よみ(新仮名遣い)やくそくりこう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-05-02 02:27:11
あらすじ
杢助・お初、玉治別は高春山の中腹・天の森についた。ここで竜国別、国依別と落ち合う手はずになっていたため、三人は待っていたが、なかなか竜国別、国依別はやってこない。

玉治別はしきりに、二人が女難の相が出ていることを心配している。そこへ竜国別が登って来て合流した。

玉治別は竜国別の額に傷があることを見とがめ、わけを尋ねるが、竜国別は約束だから話すことはできない、と言って傷の由来を隠そうとする。

しかし杢助はその傷の様子から、大谷山の鬼娘に血を吸われたことを見通してしまう。竜国別は仕方なく、鬼娘のお光と邂逅した有様を白状した。

すると早速黒雲を起こして鬼娘がやってきた。竜国別は隠れて杢助が鬼娘の相手をする。鬼娘は竜国別を渡せとわめくが、杢助の楯にして竜国別は、約束は履行しないと宣言する。

鬼娘は悔しがって、杢助がいないときに竜国別を襲ってやると言う。しかしそのとき、お初が鬼娘を呼んで、自分を覚えているか、と話しかけた。

鬼娘はお初の顔を見ると、一声叫んで白煙となって消滅してしまった。あたりを包んでいた黒雲は吹き払われてしまった。杢助はこれで鬼娘も成仏したと言って、竜国別を安堵させた。

そこへ国依別が男たちを引き連れて登って来た。国依別はいきさつを一行に語る。するとお初が突然、作戦を申し伝える、と荘重な声で呼ばわった。宣伝使たち四人はハイと答えて大地に平伏し、お初の宣旨を待った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月21日(旧04月25日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年4月5日 愛善世界社版263頁 八幡書店版第4輯 361頁 修補版 校定版272頁 普及版119頁 初版 ページ備考
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本文  高春山の中腹なる天の森の祠の傍に漸う登り着いた玉治別、杢助、お初の三人は、周囲に碁列せる平岩に脚を休め乍ら、ひそひそ話に耽る。
玉治別『此処へ着いてから殆ど二時ばかりになるが、まだ竜国別も見えず、国依別も顔を見せないが一体如何したものだらうなア。先へ行つて居る気遣ひは無い筈だ。此の森に落ち合ひ、一団となつて上ると云ふ計画だから、マサカ約束を無視して一人上る筈もなからう。アヽ遅いことだワイ』
杢助『ナニ心配は要りませぬよ、軈て見えませう。噂をすれば影とやら、其の人のことを云つてをると、ツイ来るものだ。軈て堂々と登つて来られるでせう』
玉治別『あの国依別にしても、竜国別にしても随分女難の相があるから、途中で魔性の女にチヨロ魔化されて、肝腎の御神業を忘却して居るのではあるまいかなア』
杢助『決して決して左様な御心配は要りますまい。津田の湖辺で別れた時には、余程の堅い決心の色が見えて居ましたよ。女に対しては何の交渉もありますまい。枯木寒巌に倚る三冬暖気無し程の堅家だから、屹度女なんかに目をくれるやうな人物とは認められませぬワ』
玉治別『イヤ余り安心は出来ますまい。何分元が元ですから、随分若い時は発展したものです。大勢の前では石部金吉、金兜、梃子でも棒でも、女位に動かない堅造のやうに見えて居つても、心の中の情火と云ふ曲者が煙を噴出すと、ツイその煤煙に包まれて目が眩み途方も無い所へ脱線する虞のある代物です。教主言依別命様は彼等が心情を御洞察遊ばして、出立の際にも、決して女にかかり合つてはいけない、今度の言霊戦は汝等宣伝使の試練だと仰有つた位ですから、実に心許ない代物ですよ。鬼でも閻魔でも美人の顔を見て怒る気遣ひはない。況んや人間に於てをや。何と云つても今迄の経歴が経歴ですからなア』
杢助『此の連山重畳たる山道に、そんな女が迂路ついて居る気遣ひはありますまい。生物と云つたら猪、狼、蛇、狐、狸位なものでせう。人間と言へばアルプス教の連中が徘徊してゐる位なもの、私は女よりも案じるのは、アルプス教の集団に出会し苦戦に苦戦を重ね、其の為に時間を費やして居られるのではあるまいかと思ひます。大谷山も随分魔神の多い所、六甲山も時々テーリスタンが部下を率ゐて構へて居る地点ですから、それ等に対手になつてゐるかも知れますまい。昨夜の女を虐めたやうに、あの通り沢山な奴が徘徊して居るのですから、随分に苦戦をやつてゐられるのでせうよ』
玉治別『それはさうと、あの秘密書類に依つて敵の配置を覚り、間道ばかり進んで来る筈だから、滅多に敵に出会す筈はなからうと思はれます』
杢助『さうだとすれば随分暇の要ることだなア。併し此方は船に乗つて真直に来たのだから、余程早いのは道理だ。二時や、三時遅れたつて寧当然かも知れますまい』
玉治別『我々は湖上に於ていろいろと時間をとりましたから、平均すれば向方の方が早く此処へ到着してゐなければならないのですワ』
 斯る処へ蓑笠の影、霧の中よりポコポコと浮き上り登り来る。
杢助『アー誰か登つて来ましたよ。大方竜国別様でせう』
 玉治別は首を伸ばして見つめてゐる。追々近寄つて来る一人の男。
竜国別『アヽ長らく待たしたでせう。思ひの外嶮しい山坂、それにいろいろの道草を喰つて居たものですから、ツイ遅れました』
玉治別『ヤア結構々々、又谷底へでも沈澱したのぢやなからうかと、実は心配して居ました』
竜国別『国依別さまはまだお見えになりませぬか』
玉治別『まだ見えませぬワ、如何したのでせう』
竜国別『中々予定通りには進めないものでしてなア。私も大変な面白いことに出会つて来ましたよ』
と笠を脱ぐ。見れば額を石で割られた傷、
玉治別『ヤア貴方の額は如何なさつた。大変な傷ぢやありませぬか』
竜国別『石に躓き倒けた途端に、額を打ちました』
玉治別『それは又妙ぢやなア。一割高い鼻を打ちさうなものだのに、如何して又その額を打たれたのでせう』
竜国別『アヽこれは一寸訳があつて、明白に申上げ兼ねます。どうぞ此の事だけは堅い約束がしてあるのだから、聞いて下さいますな』
玉治別『約束ぢやありますまい。貴方はアルプス教の部下に取り巻かれ、頭をこつかれたのでせう。折角三人揃つて、無疵で、天晴勝利を得て帰らうと思つて居るのに、負傷者を出したと云ふことは実に残念だ』
竜国別『イエイエ アルプス教の連中には、一人も逢うたことが御座いませぬ。道中は至極無事平穏でした』
玉治別『無事平穏の途中に其の傷は又如何なさつたのだ。吾々は親子兄弟よりも親密にして居る仲、何故御隠しなさるか』
竜国別『何うしても斯うしても秘密は秘密です。これ計りは私一生の間云ふことは出来ませぬ。もしも半口でも言はうものなら大変です。やつて来ますからなア』
玉治別『やつて来るとは、そりや又何ですか。世界の鬼、大蛇、悪狐、醜女、探女を悉く言向け和さねばならぬ宣伝使、何がやつて来たところで怖ろしいものがある道理はない。怪体なことを仰有るのですな』
竜国別『これは誓約がしてありますから、約束を破れば矢張違約の罪になりますワ』
玉治別『ハヽヽヽヽ、エライ惚気方だなア。途中に於て立派なナイスに出会し、夫婦の約束を結び、女の方からお前様の様な男らしい男、鼻の高い方は他の女に惚れられると困るから、傷をつけて置かうなんて、ナイスに頭を割らせ、さうして夫婦の誓約をしたのでせう。その代り貴方も女の小指位は預かつたでせうなア』
竜国別『イヤもう迷惑千万、ナイスと婚約を結ぶやうな、そんな気楽なことですかい。大変な椿事が突発したのですよ。言ひ度いは山々なれど斯んなことを言ふと、鬼娘がやつて来ますよ』
杢助『ハヽヽヽヽ、大谷山の谷底に巣を構へて居る鬼娘のお光に逢うて、血を吸はれたのだなア』
竜国別『メヽヽ滅相な、そんなものに逢うたことはありませぬワ』
杢助『貴方は宣伝使であり乍ら、我々を偽るのですか。偽りの罪は随分重いものですよ』
竜国別『約束を破つても罪になる。偽つても罪になる。エー仕方がない、実はお光と云ふ鬼娘に出会し、頭をこづかれ、血を二升許り吸ひとられ、何処ともなしに気分がサツパリとしました。併し何となく意気沮喪したやうな感じが致します。千里向ふでも私の耳は聞えるから、人に言つたが最後、生命を奪ると云ひました。私も男だから鬼娘の一人や二人は怖れませぬが、やつて来たら何とかして下さいますか』
玉治別『竜国別さま、御心配なさいますな。言霊を以て忽ち鬼娘を消滅させて了ひますよ』
杢助『万一やつて来居つたなら、此の杢助が足で踏み躙り降参させて呉れます。御心配なさるな』
 斯る所へ黒雲を起し、山麓より鬼娘、面ばかり現はし、ヌーヌーと雲と共に上つて来る。
竜国別『ヤアどうやら見覚えのある鬼娘がやつて来たやうだ。モシ杢助さま、頼みますよ』
杢助『心配なさるな。貴方は早く言霊戦を始めなさい。其の他のことは、みんな此杢助が御引受け申す』
と云ふ折しも鬼娘はグワツと耳迄引裂けた口を開き、舌をノロノロ出し乍ら、
鬼娘『竜国別の宣伝使は、此処へ来た筈だが、何処に居るかな』
杢助『此処に確かたつた一人居る。さうして貴様は竜国別を探して何をする積りだ。見つともない。小ぽけな角を生やし、大きな口を開けてやつて来たところで、誰一人貴様に同情するものはありやしないぞ。あんまり馬鹿にすな。貴様の顔と相談して来い。男の尻を追ふのなら女らしいオチヨボ口をして来たら如何だ。大神楽のやうな無恰好な口を開けよつて、そないな顔を見ると大抵の男は、夜分には襲はれて安眠が出来はしないぞ。何故女らしく淑やかに化けて来ぬか』
お光『お前に用はない。俺は竜国別に堅い堅い約束がしてある。約束履行のために出て来たのだから、邪魔して下さるな』
杢助『アハヽヽヽヽ、何と物好きもあればあるものだな。コレ竜国別さま、何程一人旅で女に飢ゑて居ると言つても、あんまりぢやないか。般若の面みたやうな鬼娘と、なんぞ堅い約束でもしたのか』
お光『堅い約束した証拠には竜国別の額口を御覧なさい、俺の所有物と云ふ証拠に石の刻印が捺してある筈だ。竜国別の生命は最早此方の物だ。邪魔をして下さるな』
杢助『二人の恋仲を、俺もさう野暮な生れ付きぢやないから、別に邪魔する積りぢやないが、さてもさても呆れたものだなア。生命までも斯んな鬼娘に賭けて、約束するとは余りぢやないか。おまけに石の刻印まで捺して貰ふとは、何処までも徹底した恋愛だなア』
お光『早く除いて下さい。俺は胸の火が燃えて来て居るから、お光狂乱のやうになつて了ひますよ』
杢助『アハヽヽヽ、山家に長らく蟄居して居つたので、芝居を見る機会がなかつたが、一つ此処で其のお光狂乱の演劇を、無料拝観さして貰ひたいものだなア』
竜国別『オイお光、昨日の約束はモー取消だ。誰が貴様のやうな鬼娘と堅い約束を結んでたまらうか。其場遁れの遁げ口上だつた。貴様も好い馬鹿だなア』
と杢助の力強を後楯に徐々メートルを上げ出した。
お光『ヘン、偉さうに、杢助が居ると思つて、お前は虎の威を借る奴狐だ。欺すことは上手だなア。この鬼娘でさへも呆れて物が云はれませぬワイ。併し乍ら其方は取消しても、此方は取消さぬのだ。何処までも生命を貰ふから覚悟をしなさい』
 杢助は足許のギザギザした石を一つ拾ひ、グツと握つて、
杢助『オイ、お光、約束は履行してやらう。生命も奪らしてやらう。其代りに証文は返して貰はねばならぬ。サア、此石で貴様の額に力一杯刻印を捺してやらう。これで再び竜国別の身の上に関しては、毛頭苦情は申しませぬと言ふ証拠だぞ。サア早く凸凹を突き出せ』
竜国別『お光、ざまア見やがれ。其の凸を杢助さまの御前に提出するのだ』
お光『エー残念な、竜国別、お前も杢助と年が年中歩いて居るのぢやあるまい。又一人出る時もあらう。その時に約束を屹度履行するから、さう思つてゐらつしやい』
 お初、小さい声で、
お初『オホヽヽヽ、鬼娘のお光どの、私の顔を見覚えて居ますか』
 お光は不図六歳のお初の顔を見るなり、キヤツと叫んで白煙となり消えて了つた。今迄包んで居た黒雲は、高春山の吹颪に払拭されて四方に飛散し、山麓の谷川の水までハツキリと見えるやうになつて来た。
杢助『アハヽヽヽ、鬼娘と云つても脆いものだなア。到頭煙散霧消して了ひ居つた。アヽ彼奴もこれで成仏しただらう。さア、モウ竜国別さま御安心なさい』
竜国別『エライ御厄介をかけましたが、御かげで助かりました』
玉治別『竜国別さま、随分奇抜なローマンスを見せて呉れたものだな。蓼喰ふ虫も好き好きとはよく言つたものだ』
竜国別『お前まで余り人をひやかすものぢやない。俺の心もチツとは推量して呉れ』
一同『アハヽヽヽ』
と声を放つて敵地にあるを忘れて面白さうに笑ふ。
玉治別『時に、国依別はまだ来ないのかなア。又鬼娘と途中に狎戯いて居るのぢやなからうかな』
竜国別『斯う隙が要るからは何か一つの故障が起つたのだらう。彼奴も随分罪業を積んで居るから、一人旅行は剣呑だ』
と語る時しも、国依別は意気揚々として数人の男を伴ひ登つて来た。
玉治別『アヽ国依別さまか、随分待呆けに逢うたよ。如何して居つたのだい』
国依別『大変な大事件が途中で勃発して、それが為に時間が要つたのだよ。到頭地獄の八丁目迄旅行して、昔の女房に包囲攻撃され困つて了つた。若い時から嬶ア泣かしの後家倒し、刃物要らずの女殺しをやつて来た報いで、幽冥界に彷徨ひ落ち込んだところ、合計十打ばかりのレコが一時に現はれて、百万陀羅恨みの数々繰返し、俺も已むを得ず昔の事を思ひ出し、涎を沢山に繰返して居つたのだから、ツイ遅れて済まなかつた。随分退屈であつたらうなア』
玉治別『別に退屈でも何でも無かつた。竜国別の奴、天下一品の鬼娘と堅い約束を結び、其の契約を履行せよと云つて、お光の鬼娘がやつて来て、今既に愁歎場の幕を下ろしたところだ。モー一足早く来ると面白い活劇が見られるところだつたよ。さうしてお前は一人で来る筈だつたのに、随分沢山に人間を伴れて居るではないか』
国依別『これは死んだ女房の亡霊が憑依した容器だ』
玉治別『仮令亡霊でも、高春山の征伐が済む迄女を伴れることは出来ないと云ふ規則ではなかつたか』
国依別『それは御互様だ。お前もお初さまを伴うて来ただらう。たとへ小供でも女は矢張女だ。竜国別も又鬼娘と途中に於て、何だか堅い契約を結んで一悶着をおつ始めたと云ふではないか。俺ばかり責めるのはチツと惨酷だよ。此処へ伴れて来て居るのは、実際はアルプス教の部下で、松姫さまの兄の常公迄が出て来て居るのだ。俺の戦利品は先づザツト斯んなものだよ』
お初『ヤアヤア竜国別、国依別、玉治別、杢助、其他の者ども、これより妾が作戦計画を汝らに伝ふる。暫く沈黙を守り、わが言葉を謹聴せよ』
と子供に似合はず、荘重な力の籠つた声で呼ばはるにぞ、四人は「ハイ」と答へた儘大地に平伏して宣示を待つ。
(大正一一・五・二一 旧四・二五 外山豊二録)
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