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文献名1霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
文献名2第3篇 黄金化神よみ(新仮名遣い)おうごんけしん
文献名3第11章 黄金像〔703〕よみ(新仮名遣い)おうごんぞう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-06-08 19:38:23
あらすじ
金助は傷を負って苦しんでいる一同を眺めながら、バラモン教のためと思ってやったことがこのような結果になってしまったことを思った。そして、自分の肉体を損壊することの非を悟り、バラモン教が邪教であることを知った。

金助はここは三五教の地だから、三五教の神様のご教訓をいただいたことを悟り、大神様に懺悔をして許しを請うた。他の一同も気が付いて金助の周りに集まってきたが、金助はにわかに神懸り、威厳のある容貌となった。

他の連中は金助の気がおかしくなったと思って気をつかせようとするが、金助は妙音菩薩の教えを垂れると、美しい雲に包まれて山上に上っていった。他の六人は金助を追って鷹鳥山の頂上に来ると、金助は黄金の像になって座っていた。

六人は黄金に目がくらんで像を持って返ろうとするが、金助は仏法で六人に説いて聞かせる。六人は金の像を持って返ろうと金助に武者振りつくが、たちまちふるい落とされてしまった。

金助の像は立ち上がって両眼から日月の光明を放射した。鷹鳥山は暗夜でも数十里先からその光を認めることができるようになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月26日(旧04月30日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月30日 愛善世界社版145頁 八幡書店版第4輯 433頁 修補版 校定版149頁 普及版67頁 初版 ページ備考
OBC rm2211
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本文  向脛を擦り剥き、顔を顰めながら清泉の岩壺より這ひ上りたる金助は、スマートボール、カナンボール、銀、鉄、熊、蜂の顔面の擦過傷や茨掻きの傷を眺め、
『アー誰も彼も負傷せないものは一人もないのだな。斯んな事があらう道理がない。如何しても吾々の行動に良くない点があるのだらう。バラモン教の大神様の為に所在最善の努力を費してゐる吾々七人が七人乍ら斯んな目に遇ふと云ふのは、全く神様の御神慮に叶はないのかも知れない。但しはバラモン教の神様の御精神かも分らない。何が何だか一向合点が行かぬ。併し乍らバラモン教の本国に於ては、真裸体にして茨の中へ投り込まれ、水を潜り火を渡り、剣の刃渡り、釘を一面に打つた下駄を穿くと云ふ事が、最も神様を悦ばしめる行となつてゐるさうだ。自転倒島では、そこ迄の事は到底行はれないから、今のバラモン教は荒行は全然廃されてゐる。併し乍ら此通り惟神的に、皆が皆まで血を出したと云ふのは、或は御神慮かも知れない。併し乍ら天地の神の生宮たる肉体を毀損し、神霊の籠つた血液を無暗に体外へ絞り出すと云ふ事は、決して正しき神業ではあるまい。之を思へばバラモンの教は全く邪教であらう。嗚呼吾々も今迄は善と信じて、斯かる邪道に耽溺してゐたのではなからうか。バラモン教が果して誠の神なれば、鷹鳥姫を言向和す出征の途中に於て、斯んな不吉なことが突発する道理がない。それに就ては昨夜の夢、合点の行かぬ節が沢山にある。自分の心より美人を生み、極楽世界を拓き、又鬼を生み、地獄、餓鬼道、修羅道を現出すると云ふ真理を悟らされた。此処は鷹鳥山の深谷、三五教の神様のわが身魂に降らせ給うて、斯様な実地の教訓を御授け下さつたのであらう。アヽ有難し、勿体なし、三五教の大神様、今迄の罪を御赦し下さいませ。惟神霊幸倍坐世』
と一生懸命に念じてゐる。六人は傷だらけの顔を互に見合せ、
『ヤー、お前は如何した。オー、貴様もえらい傷だ』
と互に叫びながら、金助の前に期せずして集まり来り、金助が懺悔の独語を聴いて怪しみ、首を傾け凝視めてゐる。金助は忽ち神懸状態となり、四角張つた肩を、なだらかに地蔵肩のやうにして了ひ、容貌も何となく美はしく一種の威厳を帯び断れ断れに口を切つた。六人は、
『ハテ不思議』
と穴の開く程、金助の顔を打眺めて、何を言ふかと聴耳立てた。金助は口をモガモガさせながら、
『天上天下唯我独尊』
と叫んだ。カナンボールは、
『オイ金助、ちと確りせぬかい。たかが知れた魔谷ケ岳の山賊上りのバラモン信者の身を以て、天上天下唯我独尊もあつたものかい。三十余万年未来の印度に生れた釈尊が運上取りに来るぞ。ハア困つた気違ひが出来たものだ。オイ銀公、清泉の水でも掬うて来て顔に打掛けてやれ。まだ目が覚めぬと見えるワイ』
銀公『あんな黒い水を掬つて来ようものなら、手も口も、真黒けになるぢやないか』
カナン『まだ夢の連続を辿つて居るのか。よく目を開けて見よ。水晶のやうな水が、ただようてゐる』
銀公『それでも貴様、一度真黒けの黒ン坊に染まつて了つたぢやないか』
カナン『それが夢だよ、俺達の顔を見よ。どつこも黒いところはないぢやないか。貴様は目を塞いでゐるから、其辺中が闇く見えるのだ。確りせぬかい』
と平手でピシヤツと横面を撲つた途端に、銀公は初めてパツと目を開き、
『アヽ、矢張夢だつたかなア』
金助『此世は夢の浮世だ、諸行無常、是生滅法、生滅滅已、寂滅為楽、如是我聞、熟々惟るに宇宙に独一の真神あり、之を称して国祖国常立尊と曰ふ。汝一切の衆生、わが金言玉辞を聴聞せよ。南無無尽意菩薩の境地に立ち、三界の理法を説示する妙音菩薩が善言美詞ゆめゆめ疑ふ勿れ。風は自然の音楽を奏し、宇宙万有惟神にして舞踏す。天地間一物として真ならざるはなし。惟神霊幸倍坐世、帰命頂礼。天上三体の神人の前に赤心を捧げ、心身を清浄潔白にして幽玄微妙の真理を聴聞せよ。吾は三界に通ずる宇宙の関門普賢聖至の再来、今は最勝妙如来、三十三相顕現して観自在天となり、阿弥陀如来の分身閻魔大王地蔵尊、神息総統弥勒最勝妙如来と顕現す。微妙の教旨古今を絶し、東西を貫く。穴かしこ、穴かしこ、ウンウン』
と云つた限り身体を二三尺空中に巻揚げ、得も言はれぬ美はしき雲に包まれ、山上目蒐けて上り行く。其の審しさにスマート、カナン其他四人は後見届けむと尻ひつからげ、荊蕀茂る谷道に脚を引掻きながら、山の頂指して登り行く。六人は鷹鳥山の頂に登り着いた。
 金助は忽ち黄金像となり、紫磨黄金の膚美はしく、葡萄の冠を戴きながら、咲き乱れたる五色の花の上に安坐してゐた。
銀公『ヤー此奴は金助によく似て居るぞ。金助は其名の如く、全部黄金に化つて了ひよつた。オイ皆の者、これだけ黄金があれば大丈夫だ。六人が棒を作つて帰り、分解して各自に吾家の財産とすれば大したものだぞ』
鉄『まだそれでも目がギヨロギヨロ廻転し、口がパクツイてゐるぢやないか。こんな未成品を持つて帰つたところで、中心まで化石否化金してゐない。暫らく時機を待つて、うまく固まるまで捨てて置かうぢやないか』
カナン『一時も早く持つて帰らなくちや、鷹鳥姫の部下に占領されて仕舞ふ虞れがある。コリヤ魔谷ケ岳の或地点まで担いで往かう。さア、早く用意をせい』
 熊、蜂の両人は携へ持つた鎌にて手頃の木を伐り棒を作つてゐる。スマートボールは此の坐像の周囲をクルクル廻り、指頭を以つて抑へながら、
『ヤーまだ少し温味があり、血が通うてゐるやうだ。こんな化物を迂濶り担ぎ込まうものなら、どんな事が起るかも知れない。オイ皆の奴、此儘にして帰らうぢやないか』
金の像『貴様等は執着心の最も旺盛な奴輩ぢや。この金助が化体を一部たりとも動かせるものなら動かして見よ。宇宙の関門最勝妙如来が坐禅の姿勢、本来無一物、色即是空、空即是色、一念三千、三千一念の宇宙の理法を知らざるか。娑婆の亡者共、吾こそは今迄の匹夫の肉体を有する金助に非ず、紫磨黄金の膚と化したる三界の救世主であるぞよ』
カナン『ヤー愈怪しくなつて来た。訳の分らぬことを言ひ出したぞ。オイ金助、モツト俺達の耳にもわかるやうに言つて呉れ』
『宇宙一切、可解不可解、凡耳不徹底、凡眼不可視』
『ますます訳の分らないことを云ふぢやないか。オイ金州、洒落ない。貴様は何故元の金助に還元せないのだ。何程貴い黄金像になつて見たところで、身体の自由が利かねば仕方がないぢやないか』
『如不動即動是、如不言即言是、如不聴即聴是、顕幽一貫善悪不二、表裏一体、即身即仏即凡夫』
『ますます分らぬことを言ひやがる。オイこんな代物にお相手をしてゐたら、莫迦にしられるぞ。モー帰らうぢやないか』
銀公『これが見捨てて帰られようか、宝の山に入りながら一物も得ずして裸体で帰ると云ふのは此の事だ。何処までも荒魂の勇を鼓し、六人が協心戮力此の黄金像を魔谷ケ岳の偲ケ淵迄伴れて行かう。サア、皆の奴、一二三だ』
と前後左右よりバラバラと武者振りつく。金像は一つ身慄ひをするよと見る間に、六人の姿は暴風に蚊軍の散るが如く、四方八方に目にとまらぬ許りの急速度を以て飛散して了つた。
 金像は体内より鮮光を放射し、微妙の霊音を響かせながら、ムクムクと動き始めた。忽ち三丈三尺の立像と変じ、鷹鳥山の山頂にスツクと立ち、南面して瀬戸の海を瞰下し、両眼より日月の光明を放射し始めた。
 鷹鳥山は暗夜と雖も光明赫灼として、数十里の彼方より雲を通して其の光輝を見ることを得るに至つた。
 これ果して何神の憑依し給ひしものぞ。説き来り説き去るに随つて、其の真相を不知不識の間に窺知することを得るであらう。
(大正一一・五・二六 旧四・三〇 外山豊二録)
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