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文献名1霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
文献名2第4篇 改心の幕よみ(新仮名遣い)かいしんのまく
文献名3第13章 寂光土〔705〕よみ(新仮名遣い)じゃっこうど
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-05-30 02:15:10
あらすじ
蜈蚣姫の部下と仕えて悪を行っていた金助も、娑婆即寂光浄土の真諦を悟ると、たちまち黄金の肌となって弥勒の霊体を現し、鷹鳥山の山頂から四方を照らした。

黄金仏を確かめに来た鷹鳥姫は、元の山腹の庵に投げ返された。一方玉能姫は、生田の森に投げ返された。

若彦が金・銀の両人に教えを説いていると、突然二人は人事不省に陥ってしまった。若彦はあわてて二人を蘇生させようとするが、突然鷹鳥姫が中空から落ちてきたため、狼狽してしまう。

その間にも、バラモン教のスマートボールらが竹槍をかざしながら庵を取り囲んだ。信徒たちはこの有様に驚いて散り散りになってしまった。

若彦はこの惨状の中に、一視同仁の心を思い起こし、神様に懺悔を捧げて自分の慢心の罪のお詫びを始めた。若彦は心中開き、梅香の匂うごとき境地となった。スマートボールたちは今が機会と攻め寄せてくるが、若彦はその場に端座して、感謝の祈りを捧げるばかりであった。

バラモン教徒が槍で突きかかろうとしたその刹那、中空から火弾が落下して爆発し、四面白煙に包まれ、白狐の声が当たりに響いた。鷹鳥姫、金・銀の三人ははっと目を覚ました。

中空に女神の声が響き、鷹鳥姫の執着がいまだ去らないために、我を通して自ら地獄を生み出して自らが苦しむ、その憐れさを去り、一刻も早く本心に立ち返れ、と諭した。

鷹鳥姫は夢が覚めたごとく心に肯き、神界のため天下万民のためとして行ってきたことは、自分の心のおごりであったことに気づいた。鷹鳥姫は一心不乱に感謝の涙に咽びながら、天地の神霊に祈願を籠めた。

白煙が晴れると、そこは鷹鳥山の庵の庭園であった。上枝姫、中枝姫、下枝姫の三人が現れて、鷹鳥姫、若彦、金助、銀公を幣で払うと、庵の中に導いた。スマートボールらは身体強直したままこの様子を眺めている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月27日(旧05月01日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月30日 愛善世界社版167頁 八幡書店版第4輯 442頁 修補版 校定版173頁 普及版78頁 初版 ページ備考
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本文  嵐のたけぶ魔谷ケ岳  バラモン教に立籠る
 蜈蚣の姫を教主とし  朝な夕なに真心を
 捧げて尽す金助も  心の駒を立直し
 神の御稜威も鷹鳥の  山の谷間に湧き出づる
 流れも清き清泉  魂を洗ひて忽ちに
 心の園に一輪の  花の薫りを認めてゆ
 直に開く大御空  高天原に日月の
 光隈なく照り渡り  娑婆即寂光浄土の真諦を
 悟るや忽ち黄金の  衣に包まれ煌々と
 輝き渡る神御霊  紫磨黄金の膚清く
 身の丈三丈三尺の  三十三魂と成り変り
 鷹鳥山の山頂に  宇宙万有睥睨し
 茲に弥勒の霊体を  現じて四方を照しける
 折しもあれや玉能姫  鷹鳥姫は山上の
 光を求めて岩ケ根の  庵を後にエチエチと
 近づき見れば金像は  五丈六尺七寸の
 巨体と変じ給ひつつ  左右の御手に鷹鳥の
 神の司や玉能姫  物をも言はず鷲掴み
 中天高く投げやれば  翼なき身の鷹鳥の
 姫の司は忽ちに  元の庵に恙なく
 投げ返されて胸をつき  心鎮めて三五の
 道の蘊奥を細々と  奥の奥まで探り入る
 玉能の姫は中天に  玉の如くに廻転し
 再度山の山麓に  落ちて生田の森の中
 木々の若芽も春風に  薫る稚姫君の神
 鎮まりいます聖場へ  端なく下り着きにけり
 遠き神代の昔より  皇大神の定めてし
 五六七神政の経綸地  時節を待つて伊都能売の
 貴の御霊の姫神と  仕へて茲に時置師
 此世を忍ぶ杢助が  妻のお杉の腹を藉り
 生れ出でませし初稚の  姫の命と諸共に
 清く仕ふる三つ御霊  三五の月の皎々と
 四海を照らす神徳を  暫し隠して岩躑躅
 花咲く春の先駆を  仕組ませ給ふ尊さよ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましまして
 鷹鳥山の頂に  示現し給ひし弥勒神
 深き経綸の蓋開けて  輝き給ふ時待ちし
 堅磐常磐の松の世の  栄え目出度き神の苑
 花は紅葉は緑  天と地とは紫に
 彩る神代の祥瑞に  天津神等国津神
 百の神々百人は  雄島雌島の隔てなく
 老木若木の差別なく  栄ゆる御代に大八洲
 樹てる小松のすくすくと  天津御光月の水
 受けて日に夜に伸ぶる如  進む神代の物語
 黄金閣の頂上に  輝き渡る日地月
 貴の瓢の永久に  開くる御代の魁を
 語るも嬉し神館  月の桂を手折りつつ
 言葉の花を翳しゆく  醜の魔風の吹き荒び
 朽ちよ果てよと迫り来る  曲の嵐も何のその
 松の操のどこまでも  神の御業に仕へずば
 固き心は山桜  大和心のどこまでも
 ひきて返さぬ桑の弓  言葉のツルを手繰りつつ
 五六七の代まで伝へ行く  ミロ九の神代を松村が
 心真澄のいと清く  山の尾の上に馥郁と
 咲き匂ひたる教の花  太折りて語郎善美世は
 開き始めて北村氏  隆き御稜威も光りわたり
 海の内外の山川も  草木もなべて皇神の
 豊の恵二浴しつつ  神代を祝ふ神人の
 稜威の身魂を照らさむと  雪に撓める糸柳の
 いと軟らかに長々と  二十二巻の小田巻の
 錦の糸を繰返し  心も加藤説き明す
 鷹鳥山の高姫が  娑婆即寂光浄土をば
 心の底より正覚し  国治立の神業に
 仕へ奉りて素盞嗚の  神の尊の神力を
 悟り初めたる物語  言の葉車欣々と
 風のまにまに辷り行く  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ。
 鷹鳥姫は玉能姫を伴ひ、山上の光を目標に登り行つた後に、若彦は金助、銀公の両人に対し、三五教の教理を説き諭す折しも、如何はしけむ、金助、銀公の二人はキヤツと一声叫ぶと共に其の場に倒れ、人事不省に陥つて了つた。若彦は驚いて谷水を汲み来り、両人の面部に伊吹の狭霧を吹き掛け、甦らさむと焦る折しも、風を切つて頭上より降り来る鷹鳥姫の姿に二度ビツクリ、近寄り見れば、鷹鳥姫は庭前の青苔の上に仰向けとなり大の字になつて、
『ウン』
と云つたきり、ピリピリと手足を蠢動させて居る。若彦は周章狼狽為す所を知らず、右へ左へ水桶を提げた儘駆けまはる途端に、鷹鳥姫の足に躓き、スツテンドウと其の上に手桶と共に打倒れた。手桶の水は一滴も残らず大地に吸収されて了つた。若彦は如何したものか、挙措度を失ひし結果、立上る事が出来なくなつて了つた。庭前の苔の上にやうやう身を起し、坐禅の姿勢を取り、双手を組んで溜息吐息、思案に暮れて居る。
『嗟、金、銀の両人と云ひ、力と頼む鷹鳥姫様は此の通り、介抱しようにも腰は立たず、加ふるに妻の玉能姫の消息はどうなつたであらう。神徳高き鷹鳥姫様でさへ斯の如き悲惨な目に遇ひ給うた位だから、吾妻も亦どつかの谷間に投げ棄てられ、木端微塵になつたかも知れない。あゝ、神も仏もないものか』
と稍信仰の箍が緩まうとした。時しもあれや、バラモン教のスマートボール、カナンボールを先頭に、鉄、熊、蜂其他数十人の荒男、竹槍を翳しながら此方を指して進み来り、此態を見て何と思つたか近寄りも得せず、垣を作つて佇み居る。神殿に参拝し居りし七八人の老若男女の信徒は、此惨状と寄せ来る敵の猛勢に肝を潰し、裏口よりコソコソと遁れ出で、這々の態にて山を駆登り、何処ともなく消散して了つた。
 山桜は折柄吹き来る山嵐に打叩かれて、繽紛として散り乱れ、無常迅速の味気なき世の有様を遺憾なく暴露して居る。若彦は漸く吾に返り独語。
『あゝ兵は強ければ亡び、木硬ければ折れ、革固ければ裂く。歯は舌よりも堅くして是れに先立ちて破るとかや。吾々はミロクの大神の大御心を誤解し、勝に乗じて猛進を続け、進むを知つて退き、直日に見直し聞直し、宣直す事を怠つて居た。日夜見直せ宣直せの聖言も、機械的無意識に口より出づる様になつては、モウ駄目だ。あゝ過つたり誤つたり。

積む雪に撓めど折れぬ柳こそ やはらかき枝の力なりけり

とは言依別命様の御宣示であつた。慈愛深き大神様は吾々に恵の鞭を加へさせ給うたのか、殆ど荒廃せむとする身魂を、再び練り直し給ひしか、あゝ有難し辱なし、神様、お赦し下さいませ。神や仏は無きものかと、今の今まで恨みの言葉を申し上げました。柔能く剛を制すの真理を、何故今迄悟らなかつたか。口には常に称へながら有言不実行の罪を重ねて来た吾々、実に天地に対し恥かしくなつて来ました。鷹鳥姫様が斯様な目にお遇ひなさつたのも、玉能姫の消息の分らないのも、吾脛腰の立たなくなつたのも此若彦が誤解の罪、実に神様は公平無私である。敵味方の区別を立つるは吾々人間の煩悩の鬼の為す業、慈愛深き神の御目より見給ふ時は、一視同仁、敵味方などの障壁はない。あゝ神様、あゝ、此世を造り給ひし大神様、心も広き厚き限りなき神直日大直日の神様、何卒々々、至らぬ愚者の吾々が罪、神直日大直日に見直し聞直し下さいませ。今迄の曲事は唯今限り宣り直します』
と声を曇らせ、バラモン教の一味の前に在る事も打忘れ、浩歎の声を洩らして居る。スマートボールは声も荒々しく、
『ヤイ三五教の青瓢箪、若彦の宣伝使、態ア見やがれ。金助、銀公の二人を貴様の宅に捕虜にして居やがるのだらう。其天罰でバラモン教の御本尊大国別命様に睨み付けられ、鷹鳥姫は其態、貴様は又脛腰も立たず何をベソベソと吠面かわくのだ。俺達はバラモンの教の為に魔道を拡むる汝等一味を征伐せむが為に実行団を組織し此場に立向うたのだ。これから此スマートボールが汝等一味の奴輩を、芋刺し、串刺し、田楽刺し、山椒味噌を塗りつけて炙つて食つて了ふのだ。オイ泣き味噌、貴様も肝腎要の所で、大変な味噌を付けたものだなア。コリヤ鬼味噌、何を殊勝らしく祈つて居やがるのだ。天道様もテント御聞き遊ばす道理がないぞ。サアこれから顛覆だ』
と槍の穂先を揃へて前後左右よりバラバラと攻め掛る。悔悟の涙に暮れたる若彦は、最早心中豁然として梅花の咲き匂ふが如く、既に今迄の若彦ではなかつた。傲慢無礼のスマートボールが罵詈雑言も侮辱も、今は妙音菩薩の音楽か、弥勒如来の来迎かと響くばかりになつて居る。
『アヽ有難い。われも北光の神様になるのかなア。どうぞ早く目を突いて欲しい。慗に肉眼を所有して居るために、宇宙の光を認むることが出来ないのだ。アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
と一生懸命に心中に暗祈黙祷を続けて居る。スマートボールは、
『オイ、カナン、どうだ。これ丈勢込んでやつて来たのに、一つの応答もせず、又反抗的態度も行らない奴に向つて、攻撃するも馬鹿らしいぢやないか。如何したらよからう』
『今こそ三五教を顛覆させるには千載一遇の好機だ、何躊躇逡巡する事があるか。一思ひにやつて了へよ、スマートボール』
『併し乍ら、お前は屋内に駆入り、金、銀の在処を探して呉れよ。俺は是から此奴等に引導をわたさねばならぬ。……鷹鳥姫の婆、並びに若彦のヘボ宣伝使、よつく聞け。此世は大自在天大国別命の治しめす世の中だ。然るに何ぞ、天則違反の罪を負ひて、永遠無窮の根底の国に、神退ひに退はれた国治立命や、現在漂浪の旅を続けて居る素盞嗚尊の悪神を頭に戴き、猫を被つて、天下を混乱させむとは憎き奴共。天はバラモン教の蜈蚣姫が部下スマートボールの手を借りて汝を誅戮すべく此処に向はせ給うたのだ。サア此世の置土産、遺言あらば武士の情だ、聞いてやらう。娑婆に心を残さず、一時も早く幽界に旅立到せ。覚悟はよいか』
と部下に目配せしながら、竹槍をすごいてアワヤ一突にせむとする折しも、中空より急速力を以て降り来れる一塊の火弾、忽ち庭の敷石に衝突して爆発し、大音響と共に四面白煙に包まれ、咫尺を弁ぜざるに立到つた。中よりコンコンと白狐の鳴き声、谷の彼方此方に警鐘を乱打せし如く、頻りに聞えて来た。レコード破りの大音響に、失心して居た鷹鳥姫はハツと気が付き、頭を上げて眺むれば、四辺白煙に包まれ、身は空中にあるか地底にあるか、判別に苦しみつつ、独り頭を傾けて記憶の糸を手繰つて居る。金助、銀公両人もハツと気が付き、咫尺も弁ぜぬ白煙の中を腹這ひながら表に出で、若彦、鷹鳥姫の傍に知らず識らずに寄つて来た。忽ち空中より優美にして流暢な女神の声にて、
『三五教の宣伝使鷹鳥姫、若彦の両人、よつく聞かれよ。取別けて鷹鳥姫は執着の念未だ去らず、教主言依別命の示諭を軽視し、執拗にも汝が意地を立てむとし、神業繁多の身を以て聖地を離れ、此鷹鳥山に居を構へ、大神を斎り、汝が失ひし二個の宝玉を如何にもして再び取返さむと、千々に心を砕く汝の熱心、嘉すべきには似たれども、未だ自負心の暗雲汝が心天を去らず、常に悶々として至善至美なる現天国を悪魔の世界と観じ、飽くまでも初心を貫徹せむと、迷ひに迷ふ其果敢なさよ。地上に天国を建設せむとせば、先づ汝の心に天国を建てよ。迷ひの雲に包まれて、今や汝は地獄、餓鬼、修羅、畜生の天地を生み出し、汝自ら苦む其憐れさ。片時も早く本心に立復り、自我心を滅却し、我情の雲を払拭し、明皓々たる真如の日月を心天心海に輝かし奉れ』
と厳かに神示を宣らせ給ひ、御姿は見えねども、空中を帰り給ふ其気配、目に見る如くに感じられた。鷹鳥姫は夢の覚めたる如く心に打諾き、
『アヽ謬れり謬れり、今迄吾々は神界の為、天下万民の為に最善の努力を尽し、不惜身命の大活動を継続し、五六七神政の御用に奉仕せしものと思ひしは、わが心の驕なりしか。アヽわれ如何に心力を尽すと雖も、無限絶対、無始無終の大神の大御心に比ぶれば、九牛の一毛だにも及び難し。慢心取違の………われは標本人なりしか、吁浅ましや浅ましや。慈愛深き誠の神様、何卒々々鷹鳥姫が不明を憐れみ給ひ、神業の一端に奉仕せしめられむことを懇願致します。唯今より心を悔い改め、誠の神の召使として微力の限りを尽させ下さいませ。神慮宏遠にして、吾等凡夫の如何でか窺知し奉るを得む。今まで犯せし天津罪国津罪は申すも更なり、知らず識らずに作りし許々多久の罪穢を恵の風に吹払ひ、助け給へ。アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
と両手を合せ、感謝の涙に咽びながら一心不乱に天地の神霊に謝罪と祈願を籠めて居る。四辺を包みし白煙は忽ち晴れて、四辺を見れば此は如何に、鷹鳥姫が庵の前の苔蒸す花園であつた。何処よりともなく三柱の美人、上枝姫、中枝姫、下枝姫は、玉の如き顔貌に、梅花の笑ふが如き装ひにて現はれ来り、鷹鳥姫、若彦、金助、銀公の手を取りて引起し、懐より幣を取出して四人が塵を打払ひ、労はり助けて庵の内に進み入る。スマートボール、カナンボール以下一同は如何はしけむ、身体強直し、立はだかつた儘此光景を不審げに目送して居る。谷の木霊に響く宣伝歌の声、雷の如く聞えて来た。
(大正一一・五・二七 旧五・一 松村真澄録)
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