玉能姫は、神業のために夫と一時別れて活動をしなければならないお役目を思い、宣伝への決意を一弦琴に託して歌っていた。
杢助がそこへやってきて、玉能姫に慰めの言葉をかける。初稚姫は神の道に安く艱難を乗り越える祈りを籠めた宣伝歌を歌った。
杢助の庵の外では、にわかに騒がしい声が聞こえてきた。耳を傾けると、若彦がバラモン教徒たちに捕らえられて、打ち据えられている。
玉能姫はいたたまれない気持ちになったが、自分と夫のそれぞれに与えられた役目に対するご神命を破るわけにもいかず、苦しい胸のうちをこらえて平静を装っている。
玉能姫杢助に促されて天津祝詞を静かに奏上した。すると不思議にも庵の窓の外の人影は消えてしまい、後にはただ白狐が森の彼方に進んで行くのが見えたのみであった。
玉能姫は自分の心の迷いを糺してくれたことに対して、神への感謝の祈りを捧げた。