世界の五大洲である豊葦原の瑞穂国の中でも、メソポタミヤの楽園と並んで清い自転倒島は、七五三の波清く風穏やかな神守の島や、蓮華台上の霊山に、この世を清める三つ御霊が現れた。
国治立大神は厳の御霊を分け給い国武彦と現れて、五六七の神世が来るまで無限の力を隠しつつ、松の世の礎を固く築き固める。
玉照彦命、玉照姫命になぞらえて、金剛不壊の如意宝珠、黄金の玉、紫の玉などの宝玉を集めて、豊国主命の分霊である言霊別命の末裔である言依別命を教主として、錦の宮に伊都能売の神策を仕組み給うた。
言依別命、玉能姫、初稚姫の三つの御霊は、ひそかに神の宣勅を受けて、玉のありかを隠して、遠い未来の三つの御玉の出現を待ち給う。神素盞嗚大神の深遠微妙な御経綸である。
梅子姫を竜宮の宝島に遣わして、黄竜姫を盾として、玉治別、久助、お民、友彦、テールス姫らの身魂を磨き、諏訪の湖から五つの玉を玉依姫から授かった。
言依別命は、竜宮島から宝玉を持ち帰った十人の宣伝使を迎えるために、杢助や遠近に派遣していた神司を集めて、事の詳細を包み隠さず示した。そして数多の人々を引き連れて、由良の港へと十人を迎えに出立した。
八咫烏は梅子姫、初稚姫、玉能姫、玉治別、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫、久助、お民を乗せて由良の港の秋山彦の館に降ってきた。一行は歓呼の声に迎えられ、五個の宝玉は、用意されていた柳箱に納められた。
言依別命と秋山彦夫婦は、別館において慰労の宴に列し、歓声は四辺に聞こえてきた。
素盞嗚尊は辺りに人が無いことを見ると、国武彦命と何事かを示し合わせ、五十子姫を招くと、言依別、秋山彦、紅葉姫と共に玉の入った柳箱を次の間に運ばせ、同じ形の箱を元の神前に飾り入れ替えてしまった。
この御経綸は、国武彦命、梅子姫、五十子姫、言依別命、秋山彦・紅葉姫夫婦のほかには絶対に知る者はなかった。