神素盞嗚大神や国武彦の神言により、三五教の大教主・言依別命は神界の深い使命によってわざと玉を交換し、その責任を取って、国依別とともに聖地を出奔した。
明石で舟を買い求め、瀬戸の海に浮かんだ一つ島に立ち寄り、松の根本に埋めた二個の宝玉の前で祈願をこらした。すると空中に三柱の小さな女神が現れて、宝玉には構わずに早くテルの港に行くようにと告げた。
二人は舟を漕いで海を進み、いつしか琉球の那覇の港に到着した。この島は現代では当時に比べると十分の一くらいに沈んでしまったが、このときはずいぶん大きな島であった。
言依別命は、本当の神業を行うためには、この島にある竜の腮の球という、琉の玉と球の玉を手に入れて高砂島に渡る必要があるのだ、と説く。
玉のありかを尋ねる国依別に対し、言依別命は、国武彦大神によってあらましを知らされていると語る。琉の玉は潮満の玉、球の玉は潮干の玉であり、これらを携えて世界を巡れば、いかなる悪魔もたちまち畏服するという神器であると説いた。
言依別命は、ハーリス山の頂が日没後も輝いているのを指した。二人は夜を明かして明朝、頂に登ることにした。
二人は麓の幾丈もある槻の木の根本に大きな洞が開いているのを見つけた。洞の中はほとんど五十坪ほどもあり、奥には美しい草のむしろが敷き詰めてあった。
言依別は、ここが琉球王の隠れ場所だと気がついた。そして国依別に向かって、琉球王が帰ってくれば、彼らは我々にとって決して悪い者ではない、とすべてを見透かしているかのように諭した。
丑満のころ、外に騒がしい物音が聞こえてきた。国依別は、言依別命を起こそうとするが、熟睡している。国依別が外をうかがうと、相当な人数のようであった。国依別は一人入口に立って腕組みをして考え込んでいる。