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文献名1霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻
文献名2第5篇 清泉霊沼よみ(新仮名遣い)せいせんれいしょう
文献名3第16章 琉球の神〔798〕よみ(新仮名遣い)りゅうきゅうのかみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-11-05 19:33:27
あらすじ
高姫が去った後、言依別命一行が木の洞穴に戻ってきた。言依別命は無事に琉球の玉を手に入れたことを伝えた。清彦らは、教主に挨拶をなした後、この場所に至った経緯を報告した。清彦と照彦は、父である常楠と思わぬところで出会うことになり、挨拶を交わした。

清彦と照彦は、高姫が言依別命を追ってここまでやってきたことを話した。言依別命は、自分が琉と球の玉を持って高砂島へ渡れば、形骸に囚われた高姫が玉を狙って罪を作ることになる、と心配した。

言依別命は、玉の精霊を自分と国依別に移して、玉は若彦に命じて玉能姫の館に持ち帰るように命じた。言依別命は、この神業が成就したら若彦は玉能姫の夫として共に棲んでもよいことを示唆した。言依別命は常楠翁に対して、琉球島の王となるように命じ、清彦・照彦と共に島を守るように命じた。

言依別命は島人二人を伴って高砂島へ出立した。清彦と照彦は、清子姫と照子姫の姿がいつの間にか消えていることに気付き、落胆した。しかし、自分たちには紀の国に残してきた妻子があったことを思い出し、天則違反をせずに済んだことを感謝した。

しかしながら後に、二人の妻子は夫を捨ててどこかに姿を消してしまったことが判明した。また常楠翁は後に、ハーリス山奥深くに進み入って生き神となり、今に至るまで琉球島を守護することとなった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年07月27日(旧06月04日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年6月20日 愛善世界社版255頁 八幡書店版第5輯 334頁 修補版 校定版263頁 普及版112頁 初版 ページ備考
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本文  高姫一行が立去つた後の洞穴は、水入らずの男女四名、互に秘密を半打明けて一種異様の気分に打たれてゐる。
 斯る処へ言依別命は、国依別、若彦、常楠、チヤール、ベース其他の土人を引伴れ、此洞穴指して一先づ帰り来り、入口より中を覗けば灯火がついて居る。さうして奥の方に何か人影が見えてゐる。国依別は一同に向ひ、
国依別『ヤア皆さま、御苦労で御座いました。誰か気の利いた土人と見えるが、灯火をつけて待つてゐる様です』
と云ひ乍ら一足先に入つた。清彦は此姿を見て、
清彦『ヤア』
とばかりに驚き、側に駆寄つて、
清彦『これはこれは国依別様で厶いますか。ヤア言依別の教主様、大勢の方々、よくマア御いで下さいました。御承知の通りの荒屋、苺が沢山に御座いますれば、悠乎と御召り遊ばして御話を願ひます』
国依別『ヤアお前は清彦ぢやないか。何時の間にやら我輩の邸宅を横領して、主人気取りになつて了つたのだな……教主様、其他御一同様、清彦が御留守宅へやつて来て居ります』
清彦『どうぞ奥へ御通り下さいませ』
国依別『主客顛倒とは此事だ。ヤア奥には照彦其他二人の頗る美人が居るではないか。中々抜目の無い男だね』
言依別『アヽ若彦さま、常楠さま、サア奥へ御進み下さい』
 常楠と若彦は琉、球の玉を奉じ、洞穴内の最も高き処に安置し、拍手を打ち一生懸命に何事か小声に唱へてゐる。
 清彦、照彦、清子姫、照子姫は両手をつき、
『是は是は教主様、不思議な所で御目にかかりました。先づ先づ御無事で御目出度う厶います』
言依別『ヤア有難う。御神徳を以て竜の腮の琉、球の宝玉はうまく手に入りました。就ては貴女方どうして又斯様な処へ来たのですか』
清子姫『ハイ、妾は比沼の真奈井の宝座に於て、照子姫様と禊を修して居りました。処が瑞の宝座は俄に鳴動を始め、四辺に芳香薫じ、微妙の音楽聞え来ると思ふ間もなく、忽然として現はれ玉ひし豊国姫の御神姿、言葉静かに宣らせ玉ふやう………この宝座は、妾寸時神界の都合によつて或地点に立向ひ、神霊不在となれば、汝等二人は一刻も早く此場を立去り、由良の港の秋山彦が館に、竜宮の麻邇の宝珠集まり玉へば之を奉迎せよ……神素盞嗚大神、国武彦命も御でましになつてゐる……との事に、旅装を整へ由良港へ参りしも後の祭となり、其儘聖地に上り、玉照彦、玉照姫様の神勅や、貴方様の御教示を拝して高熊山に登り、三週間の行を為し、いろいろの神界の御経綸を承はつて、漸くここに参つたもので厶います。ところが途中に於て船を暗礁に乗り上げ、生命危い所を御両人様に助けられ、結構なる御神徳をうけましたもので厶います』
言依別『それは皆さま、結構で御座いました。吾々とても琉、球の宝玉を斯の如く無事に拝領し来れば、これよりは益々神徳著く、御神業も完全に成就する事と悦んで居ります』
国依別『モシモシ常楠さま、貴方の血縁の両人が此処に御越しになつてゐるといふのも、不思議の経綸ぢやありませぬか。照彦に清彦、照子姫に清子姫、これ又一つの不思議、…常楠に常彦、…これも亦不思議。畏れ多い事だが言依別様に国依別、若彦さまにチヤール、ベース、名までよく情意投合してゐる様ですなア。アハヽヽヽ』
常楠『お前は清彦、照彦の両人、ようマアこんな処まで探ねて来てくれた。親なればこそ、子なればこそだ』
 清彦、照彦両人は一度に、
両人『吾々は斯様なところでお父さまに御目に掛らうなどとは、夢にも思つてゐませんでした。教主様の後をつけ狙つて高姫一行が参つたと聞き、心も心ならず、御後を慕つて御用の末端にもと思ひ、出て参りました。併し乍ら最早教主様は此島を既に既に御用了り、御出立の跡ならんと落胆致して居りましたが、併しここで御目に掛りましたのは何より有難い事で御座います』
言依別『あゝさうであつたか。それは大いに心配を掛けたなア。併し高姫さまは執拗にも斯様なところまで、吾々の後を追つて来たのかなア』
清彦『高姫さまは仮令高砂島の果までも貴方の御後を尋ね廻り、七つの宝玉の所在を探して教主様を改心させなならぬと言つて、今の今とてこの洞穴に御越しに相成り、常彦、春彦と共に、大変に我々両人に毒吐いた揚句、一刻も猶予ならぬ。言依別の後を追つてやらうと云つて、慌しくここを立去られた所で御座います。モウ今頃は何処かの浜辺から、船に乗つて漕ぎ出してゐる位でせう』
言依別『何処までも玉にかけたら執念深い高姫だなア。アヽ仕方が無い』
と双手を組んで思案に暮れる。
言依別『さうすれば高姫さまは、又我々の渡る高砂島へも行くに違ひ無い。琉、球の宝玉を持つて参れば、又しても罪を作らす様なものだ。是から国依別と両人が玉の精霊を我が身魂に移し、形骸丈は……若彦さま、御苦労だが二つとも貴方が守護して、再度山の麓なる玉能姫の館へ持帰り、夫婦揃うて此玉を保管をし乍ら、神界の御用をして下さい。貴方も此御神業が成就した上は、玉能姫の夫として同棲されても差支は有りますまい』
 若彦はハツと驚き、有難涙に暮れ乍ら、
若彦『情の籠つた教主の御言葉、有難く存じます。左様なれば此玉を保護致し、生田の森の神館へ持帰り、貴方の聖地へ御帰り遊ばす迄大切に守護致します』
言依別『早速の御承知、一日も早く御帰り下さい。……又常楠翁は此琉球島の土人の神となり、王となつて永遠に此処に鎮まり神業に尽して貰ひたい。……清彦、照彦は常楠と共に本島を守護致し、余力あれば台湾島へも渡つて三五教を広め、国魂神となつて土民を永遠に守つて下さい。言依別はこれより国依別と共に、高砂島へ渡り、夫より常世国を廻つて波斯の国、産土山脈の斎苑の館に立向ふ考へだ。随分神様の御恵を頂いて壮健無事に御神業に参加されよ』
と宣示する。一同はハツとばかりに有難涙を出し、頭を地につけて涕泣稍久しうしてゐる。
 ここに言依別は琉の珠の精霊を腹に吸ひ玉ひ、国依別は球の珠の精霊を吸ひ、終つて二個の玉手箱を若彦に渡した。若彦は押頂いて、直にチヤール、ベースの二人に船を操らせ宝玉を保護し、荒浪をわけて、再び自転倒島の生田の森に引き返す事となつた。
 これより若彦、玉能姫は生田の森に於て夫婦の息を合せ、神界の為に大功を顕はしたのである。
 言依別命は国依別を伴ひ、琉球全体の守護権を、常楠、清彦、照彦に一任し、悠々として土人二名を引伴れ、船を操らせ乍ら、万里の波濤を蹶つて高砂島に向つて出発された。又清子姫、照子姫は言依別の後を追ひ暗夜に紛れて船に乗り、高砂島へ進む事となつた。
 清彦、照彦はこの二人の美女が何時の間にか、此島より消え去りしに一時は落胆したが、よく顧みれば、自分には紀の国に妻子ある事を思ひ出し、天則違反の行動となるに思ひ当り、この恋を断念する事となつた。然るに清彦、照彦二人の妻子は、夫を捨てて何処へか姿を隠したる事後に至つて判然し、常楠の命に依つて貴人の娘を妻となし、清彦は琉球の北の島を、照彦は南の島を管掌し、永遠にその子孫を伝へたのである。
 又常楠はハーリス山の山深く進み入つて生神となり、俗界より姿を隠して了つた。今に到る迄不老不死の仙術を体得し、琉球島の守護神となつてゐる。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一一・七・二七 旧六・四 外山豊二録)
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