高砂島の胞衣となる台湾島は、全島一の高山・新高山の北麓に、花森彦の子孫であるカールス王が鎮まる都が古くから建設されていた。
花森彦の子の兄弟のうち、兄であるアークス王の子がカールスである。弟のエーリスの子がヤーチン姫である。カールスとヤーチン姫は、互いに夫婦たるべしと思いあっていた。
高国別と、悪神の化身・玉手姫の間に生まれたサアルボースとホーロケースの兄弟は、アークス王に仕えながら暴政を敷いていた。
アークス王が玉手姫の怨霊によって死去した後、カールスが王位を継いだ。数多の群臣は、ヤーチン姫を妃にしようとしたが、サアルボースは自分の娘・セールス姫を王妃となして権力を握ろうと画策していた。
ヤーチン姫は妃となるべく新造の館に移ったが、そのとたんに病気に伏せってしまった。あるとき、セールス姫がヤーチン姫の見舞いに訪れると、病床のヤーチン姫は逆上して、ヤーチン姫を邪神と罵って襲い掛かり、乱暴をなした。
その後もヤーチン姫の病気ははかばかしくなかった。ヤーチン姫の看病をする侍女のユリコ姫の前に、金狐が女神の姿で現れて、姫を毒殺すべく毒薬を与える等の怪事があった。
ユリコ姫の機転によって毒薬は見破られたが、ヤーチン姫の侍臣・キールスタンは、アークス王がバラモン教を奨励したことが原因であろうと、三五教の大神と国魂神・竜世姫を奉斎することを提案した。
ユリコ姫は賛成し、両人は三五教の大神と竜世姫に祈願した。するとヤーチン姫の病気は快方に向かい、四五日で全快した。これより、ヤーチン姫は三五教を信奉することになった。
一方、セールス姫は館に帰ると、狂乱したヤーチン姫に乱暴したことを、父・サアルボースの司・タールスに物語った。タールスは、セールス姫の侍女のマリヤス姫にもその有様を問い詰めた。
マリヤス姫は日ごろのセールス姫の暴虐ぶりに愛想をつかしていたので、今回のことも天の戒めと思っていた。また、このことがヤーチン姫に害を及ぼすことになるかもしれないと思い、返答をためらっていた。
セールス姫は怒って、マリヤス姫に自分がされたよりも酷い乱暴をなすと、自分がされた行いはこのとおりだ、とタールスに告げ、父に報告するようにと命じた。