真道彦命は、国治立大神の御代より台湾島に鎮まり、子孫はみな真道彦の名を名乗り、新高山の北方に居を定めていた。しかしアークス王は島に漂着したバラモン教に帰依したため、真道彦一派は、アークス王の権力が及ばない、新高山の南方に移って教勢を維持していた。
真道彦は新高山の東南にある高原地・日月潭に居を構えた。サアルボース兄弟は、この地を征服しようと何度も兵を送っていた。
あるとき、ホーロケースは三五教の巡礼に化けて聖地に入り込み、日月潭の玉藻山の聖地に押し寄せた。真道彦は、息子の日楯・月鉾とともに防戦に当たった。
ホーロケースの勢いすさまじく、その剣は真道彦の胸を貫いたと見えた。真道彦は突き倒され、その体から白煙が上がり、女神の姿となって雲の彼方に姿を隠してしまった。
真道彦の軍は敗れて散り散りとなり、玉藻山はホーロケースに占領されてしまった。日楯と月鉾は日月潭の竜の島にのがれ、島山の頂上の岩窟に身を隠した。二人は岩窟の奥へ進んで行くと、日月潭を見渡せる断崖に着いた。
そこから見える玉藻山は、すでにホーロケースに占領されてしまっている。兄弟はもやはこれまでと、この断崖から大神に祈願を籠めて飛び降り、生きていたなら再びバラモン教を打ち負かすことができるだろうと言って、決行しようとした。
すると傍らの木のかげから宣伝歌が聞こえてきた。宣伝歌の主は、言依別命と国依別であると名乗り、兄弟に玉藻山を取り戻す神宝を授けようと歌った。
兄弟は夢かとばかり驚いて平身低頭したが、二人が面を上げると、不思議にも二人の宣伝使の姿はなかった。これより兄弟は勇気百倍し、再び玉藻山に向かって言霊戦を開始しようと、七日七夜の禊を修し、言霊の練習に全力を尽くした。
マリヤス姫は、玉藻山の聖地に逃げていたが、ホーロケースの襲来により、捕われてしまった。ホーロケースは玉藻山を占領して我が物顔に振舞っていたが、マリヤス姫を幽閉し、自分の妻となるよう迫っていた。
マリヤス姫がホーロケースの横恋慕に苦しんで述懐の歌を歌っていると、俄かに館内騒がしく、バラモン軍たちが慌しく逃げ出した。ホーロケースは慌ててやってくると、変事が突発したと言って、マリヤス姫を連れ出そうとした。
そこへ琉球の玉の威徳によって五色の霊光を放射しながら、日楯・月鉾が入ってきた。ホーロケースは太刀打ちできず、数多の部下とともに逃げて行った。
玉藻山の聖地は再び三五教に戻り、広大な神殿が造営された。日楯・月鉾の名声は近隣にとどろいた。