高姫は疲れて細谷川の川べりで休息し、一夜を明かすことになった。常彦と春彦は後から遅れて追いかけてきた。
里の童が牛を川に入れた後、その背に乗って横笛を吹きながら帰っていく。常彦はその牛にぶつかってしまった。そのひょうしに牛は驚き、童は背から落ちてしまった。童子は子供らしからぬ権幕で常彦を怒鳴りつけた。
常彦は謝るが、童子は怒って春彦にも謝罪を要求する。そのうちに童子は、自分が誰だか言い当てたら赦してやると謎を言い出した。常彦は高砂島にたびたび出現する童子神・牛童丸様ではないか、と答えた。
童子は、牛童丸は何神の化身か知っているか、と謎を続ける。牛童丸は百姓の神・大歳の神だと明かし、春彦を呼んで横笛でひっぱたいた。そして二人に牛を与えると、高姫が休んでいる場所を教え、牛に乗ってアリナの滝まで行くようにと伝えると、姿を消した。
二人は牛を連れて、牛童丸が教えてくれた高姫が寝ているところにやってきた。高姫は目を覚まし、常彦と春彦を見るとまた憎まれ口をたたき出した。常彦は、牛童丸に玉の詳細を聞かされたと言って牛に乗って先に行こうとする。
高姫は慌てて引きとめ、三人は腹の探りあいをひとしきりした後、牛を返して街道に出た。七日をかけてようやく、蛸取村の海岸に出たときには、すでに日は沈んでいた。三人は月に向かって天津祝詞を奏上し、夜中もアリナの滝に向かって歩いていく。