常彦、春彦、竜、玉の四人は高姫に追いつけず、アリナ山の山頂で夜を過ごした。丑三時に東の空に俄かに黒雲が起こり、大きな怪物が降ってくるのが見えた。
四人が指差し眺めていると、麗しい女神が中空に現れると、金毛九尾の悪狐が北方の常世の国の方面に逃げて行くのが見えた。その後に、空中を錦の袋が櫟ケ原に落ちていくのが見えた。
一行は夜が明けると高姫を追いかけ始め、日の暮れごろにようやく櫟ケ原の柏楊樹の下に端座している高姫のところに着いた。高姫は心魂開け、真如の日月が心の空に輝いて天眼通力を得て四人が後を追って来ているのを知り、端座して祝詞を上げながら待っていた。
高姫の様子がすっかり打って変わって高慢なところが消えているので、常彦と春彦は驚いて声をかけた。高姫は女神の戒めにあって改心した経緯を一行に話した。そして竜と玉に、黄金の玉を国玉依別に返却するようにと依頼した。
高姫の改心に常彦と春彦は涙を流し、実は自分たちは杢助の内命によって高姫を改心させようとお供になって着いて来たことを明かした。
竜と玉は黄金の玉を懸橋御殿に持って帰った。高姫一行は日の出姫が示した行路を取って大原野を越えて海岸線を北上し、アマゾン河をさかのぼる旅に出ることになった。