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文献名1霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻
文献名2第3篇 神鬼一転よみ(新仮名遣い)しんきいってん
文献名3第16章 波の響〔838〕よみ(新仮名遣い)なみのひびき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグハンドの滝(天祥山の大瀑布) データ凡例 データ最終更新日2022-01-04 18:14:38
あらすじ
引き続いてヨブは入信の喜びの歌を歌った。次に春彦が、これまでの行程で起こったことを読み込んだ歌を歌った。そして高姫が、自身の改心とヨブの入信を喜び祝う歌を歌った。

船は三日三夜海上を走り、ゼムの港に着いた。一行四人は上陸し、ゼムの町から二三里離れた天祥山の大瀑布に御禊をなすべく、宣伝歌を歌いながら進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月12日(旧06月20日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年9月3日 愛善世界社版230頁 八幡書店版第5輯 550頁 修補版 校定版237頁 普及版107頁 初版 ページ備考
OBC rm2916
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本文  常彦が祝を兼ねたる佯らざる告白歌に励まされ、ヨブは立上がり、入信の祝歌を歌つた。
ヨブ『高天原と定まりし  貴の聖地のエルサレム
 国治立大神は  三千世界を救はむと
 神の御言を畏みて  教を開き玉ひつつ
 天地の律法制定し  世は平安に治まりて
 神人和楽の瑞祥を  楽み玉ふも束の間の
 隙行く駒の曲神に  天の御柱国柱
 転覆されて葦原の  瑞穂の国の守護権
 常世の国に生れたる  曲の頭に渡しつつ
 天教山の火坑より  根底の国におりまして
 忍びて此世を守ります  其功績ぞ尊けれ
 斯かる尊き皇神の  いかで此儘根の国や
 底の御国にましまさむ  時節を待つて天教の
 再び山に現はれて  野立の彦と名を変じ
 埴安彦と現れまして  迷へる四方の人草を
 安きに救ひ助けむと  仁慈無限の心より
 三五教を建設し  神の司を四方の国
 間配り玉ひて川の瀬や  山の尾の上に至る迄
 尊き御教を布き玉ふ  あゝ惟神々々
 神の心を白波の  天足彦や胞場姫が
 罪より現れし醜神の  醜の叫びに化されて
 世人の心日に月に  曇り行くこそ忌々しけれ
 厳の御霊の大神は  国武彦と現れまして
 四尾の山の神峰に  此世を忍び玉ひつつ
 五六七の御世の経綸を  行ひ玉ひ素盞嗚の
 神尊の瑞御霊  コーカス山や産土の
 斎苑の館に現れまして  八洲の国にわだかまる
 八岐の大蛇や醜狐  曲鬼共を言向けて
 天地にさやる村雲を  神の伊吹に払はむと
 心を配らせ玉ひつつ  言依別を現はして
 自転倒島の中心地  綾の高天と聞えたる
 錦の宮に神司  清き神務を命じつつ
 世人を救ひ玉ひけり。  旭日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 高砂島は亡ぶ共  誠の神の御教に
 いかでか反きまつらむや  大和田中に浮びたる
 カーリン島の神の御子  ヨブは今より高姫が
 清き心を諾なひて  仮令野の末山の奥
 虎狼や獅子大蛇  如何なる曲津の棲処をも
 おめず臆せず道の為  心を尽し身を尽し
 皇大神や世の中の  青人草の其為に
 仕へまつらむ惟神  神の恵の幸はひて
 ヨブが身魂を研き上げ  尊き貴の御柱と
 依さし玉へよ天津神  国津神達八百万
 国魂神の御前に  謹み敬ひ願ぎまつる
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と歌ひ終つて座に着いた。春彦は又もや歌ひ出したり。
『綾の聖地を後にして  変性男子の御系統
 高姫さまに従ひて  瀬戸内海を打渡り
 南洋諸島を駆けめぐり  如意の宝珠を探ねつつ
 高砂島の手前まで  小舟を操り来る折
 隠れた岩に突当り  当惑したるをりもあれ
 高島丸に助けられ  漸くテルの港まで
 到着するや高姫は  数多の船客かきわけて
 先頭一に上陸し  吾等二人をふりまいて
 暗間の山の松林  姿を隠し玉ひしが
 綾の聖地に現れませる  杢助さまに高姫の
 監督役を命ぜられ  居乍ら のめのめ見失ひ
 如何して言訳立つものか  急げ急げと一散に
 尻ひつからげ大地をば  ドンドン威喝させ乍ら
 暗間の山の麓迄  来りて様子を窺へば
 高姫さまの独言  常彦、春彦両人の
 半鐘泥棒や蜥蜴面  間抜男を伴うて
 高砂島の人々に  軽蔑されてはたまらない
 何とか立派な国人を  甘く操り弟子となし
 千変万化の一芝居  打つて見ようと水臭い
 吾等二人を放棄して  甘い事のみ考へる
 其蔭言を灌木の  茂みに隠れて聞き終り
 余りに腹の立つままに  ガサガサガサと飛出せば
 高姫さまの曰くには  油断のならぬ世の中ぢや
 仮令獣といひ乍ら  今の秘密を聞きよつた
 神の霊を授かりし  四つ足なれば一言も
 聞かれちや都合がチト悪い  天に口あり壁に耳
 謹むべきは口なりと  後悔遊ばす可笑しさよ
 常彦、春彦両人は  足音隠して二三丁
 山の麓に忍び足  それから足音高めつつ
 テルの国王のお側役  私はカナンと申す者
 暗間の山に如意宝珠  隠してあると聞いた故
 私は捜しに行きました  されど遅れた其為に
 後の祭りと春彦が  声高々と話する
 そこで私はヒルの国  国王様のお側役
 アンナと申す男ぞと  八百長話を始むれば
 猫が松魚節見た如うに  高姫さまが飛びついて
 もうしもうし旅の人  暫くお待ちなされませ
 変性男子の系統で  日の出神の生宮と
 世に謳はれた高姫ぢや  お前も中々偉い人
 私の話を聞きなされ  昔の昔の根本の
 尊き因縁聞かさうと  お婆アの癖に小娘の
 やうな優しい作り声  吹出すように思へども
 ここで笑うては一大事  大事の前の小事ぢやと
 脇のあたりでキユーキユーと  笑ひの神をしめつけて
 足音低く高くして  遥向うから後戻り
 して来たように作りなし  どこの何方か知らね共
 私に向つて何御用  早く聞かして下されと
 吾から可笑しい作り声  流石の高姫嗅ぎつけて
 お前はアンナと云ふけれど  半鐘泥棒の常彦だ
 カナンと名乗る蜥蜴面  春彦さまにきまつたり
 余り人を馬鹿にすな  声を尖らし怒り出す
 暴風襲来低気圧  二百十日の風害も
 来らむとする其時に  私がアンナと云うたのは
 お筆先にもある通り  神の仕組はアンナ者
 こんな者になつたかと  世界の人がビツクリし
 アフンとさせるお仕組ぢや  カナンと云うて名乗つたは
 春彦さまの平常は  赤子のやうな人なれど
 神が憑つた其時は  誰でもカナン身魂ぢやと
 言はして人を大道に  導くお役と逆理窟
 一本かましてやつたれば  高姫さまは腹を立て
 私等二人を振すてて  又も逃げよとする故に
 高島丸の船中で  国依別に面会し
 金剛不壊の如意宝珠  其他珍の御宝を
 拝見さして貰うたと  カマをかけたら高姫が
 玉にかけたら夢うつつ  忽ち機嫌を直し出し
 ホンにお前は偉い人  気の利く男と思うてゐた
 さうして如意の宝玉は  国依別が如何したか
 知らしてお呉れと云ふ故に  此春彦は知らねども
 狐のやうに常彦が  眉毛に唾をつけ乍ら
 三千世界の神宝は  高砂島にコツソリと
 言依別や国依の  神の司が出て参り
 何々々に何々し  絶対秘密ぢや云はれない
 国依別のお言葉に  お前を男と見込んでの
 肝腎要の秘密をば  明かした上は高姫に
 決して云ふちやならないぞ  私も常彦宣伝使
 言はぬと云つたらどこ迄も  首がとれても云はないと
 約束したから如何しても  高姫さまには済まないが
 これ許りは御免だと  キ常彦口から出任せに
 からかひまはす可笑しさよ  とうとう喧嘩に花が咲き
 常彦私の両人は  高姫さまを振すてて
 今度は二人が逃げ出した  高姫さまは驚いて
 吾等二人を引捉へ  玉の所在を白状させ
 綾の聖地に持帰り  日の出神の生宮の
 天眼通は此通り  皆さまこれから吾々の
 言葉に反いちやならないと  法螺吹き立てる御算段
 そんな事には乗るものか  三十六計奥の手を
 最極端に発揮して  雲を霞と駆け出せば
 高姫さまは道の上の  高い小石に躓いて
 大地にバタリと打倒れ  額を打破り膝挫き
 生血を流してアイタタと  頭を撫でたり膝坊主
 押へて顔をしかめゐる  此時四五の若者は
 どこともなしに出で来り  高姫さまを介抱して
 抱き起して助くれば  いつも変らぬ減らず口
 結構なおかげをお前等は  頂きなさつた神様に
 御礼なされよ私にも  御礼を仰有れ神の綱
 私がかけて上げました  などと又もや世迷言
 玉の所在を知ると云ふ  一人の男に騙されて
 アと云つては金一両  リと聞いては金一両
 ナーと云つては金取られ  滝と云つては二両取られ
 鏡の池と六つの口  又もや六両はぎ取られ
 呑み込み顔で高姫が  吾々二人が路端に
 憩ふ所をドシドシと  肩肱いからし高姫は
 日の出神の御告げにて  玉の所在を知つた故
 これから独り行く程に  間抜男は来るでない
 神の仕組の邪魔になる  必ず従いて来てくれな
 言葉を残してドンドンと  テル国街道を走せて行く
 吾等二人は高姫が  後を追ひつつ駆出して
 牛のお尻に衝突し  ヤツサモツサと争ひつ
 牛童丸に横笛で  首が飛ぶ程横ツ面
 やられた時の其痛さ  常彦さまが行つた事
 私は傍杖くわされて  あんなつまらぬ事はない
 牛童丸に牛貰うて  常彦さまは牛の背
 私は綱を曳き乍ら  小川を伝うて杉林
 十間許り遡り  高姫さまが他愛なく
 休んで厶る其前に  牛引つれて往て見れば
 モウモウモウと唸り出す  其大声に目を醒まし
 高姫さまはうるさがり  又も二人を振棄てて
 アリナの滝に只一人  玉を占領せむものと
 行かうとしたので吾々は  お前はアリナの滝の上
 鏡の池に行くのだろ  吾等二人は牛に乗り
 お前さまより二三日  先にアリナへ到着し
 玉を手にして帰ります  左様ならばと立出づる
 高姫さまは又しても  猫撫声と早変り
 コレコレ常公春公へ  私の心を知らぬのか
 海山越えてはるばると  こんな所迄やつて来て
 お前に別れて如何ならう  一緒に行かうぢやないかいと
 相談かけて呉れた故  モウモウモーさん帰んでよと
 牛に向つて言霊を  発射致せばアラ不思議
 煙となつて消えにける  夫れより三人手を引いて
 テルの街道ドシドシと  大西洋を眺めつつ
 アリナの滝のほとりなる  鏡の池に来て見れば
 数千年の沈黙を  破りて池はブクブクと
 泡を立てたりウンウンと  厭らし声にて唸り出す
 高姫さまは玉どこか  肝腎要の魂抜かれ
 焼糞気味になりまして  月照彦神さまと
 いろはにほへとちりぬるの  四十八文字の掛合に
 奴肝を抜かれて失心し  人事不覚となられける
 懸橋御殿の神司  現はれまして高姫を
 助け玉へば高姫は  相も変らぬ憎い事
 百万ダラリと並べ立て  側に控えた吾々も
 余り憎うて横ツ面  擲つてやりたいよに思うた
 夫程分らぬ度し太い  高姫さまもどうしてか
 櫟ケ原の真中で  天教山に現れませる
 木の花姫の御化身  日の出姫の訓戒に
 心の底から改心し  虎と思うた高姫が
 サツパリ猫と早変り  それから段々おとなしく
 もの言ひさへも改まり  誠に可愛うなつて来た
 玉の湖水の畔にて  椰子樹の森に夜を明かし
 鷹依姫や竜国別の  神の司やテー、カーの
 姿を刻んだ石地蔵  眺めて高姫手を合し
 コレコレ四人のお方さま  此高姫が悪かつた
 どうぞ勘忍しておくれ  黒姫さまの過ちを
 お前さま等に無理云うて  綾の聖地を放り出し
 苦労をかけたは済みませぬ  罪亡しに今日からは
 お前等四人の姿をば  刻んだ重たい此石を
 背中に負うて自転倒の  島迄大事に連れ帰り
 祠を建てて奉斎し  朝晩お給仕致します
 どうぞ許して下されと  心の底から善心に
 立返られた健気さよ  余り早い変りよで
 私も一寸疑うた  アルの港で船に乗り
 高姫さまが偽らぬ  其告白に感歎し
 ヨブさま迄が驚いて  高姫さまの弟子となり
 入信されたお目出度さ  あゝ惟神々々
 神の恵は目のあたり  こんな嬉しい事はない
 高姫様の御改心  入信なされたヨブさまの
 前途益々健全に  渡らせ玉ひて神徳を
 世界に照らし玉ふ日を  指折数へ待ちまする
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
 最後に高姫は改心と入信の悦びの歌を唄ひけり。
『あゝ惟神々々  尊き神の御恵に
 常夜の暗も晴れわたり  真如の月は村肝の
 心の空に輝きて  金毛九尾の曲神に
 すぐはれ居たる吾身魂  今は漸く夢醒めて
 曲津の神の影もなく  神の賜ひし伊都能売の
 霊の光輝きて  心の悩みも消え失せぬ
 旭は照る共曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  一旦改心した上は
 身魂の此世にある限り  天地に誓うて変らまじ
 此高姫の改心が  一日遅れて居つたなら
 此船中でヨブさまに  命取らるるとこだつた
 変性男子の筆先に  何よりかより改心が
 一番結構と云うてある  改心すれば其日から
 敵もなければ苦労もない  早く改心なされよと
 幾度となく書いてある  あゝ改心か改心か
 木の花姫の御言葉で  始めて悟つた改心の
 誠の味は此通り  私を仇と狙うたる
 カーリン島のヨブさまが  打つて変つて高姫を
 師匠と仰いで入信し  無事に此場の治まりし
 其原因を尋ぬれば  ヤツパリ私の改心ぢや
 改心入信一時に  善い事計りが降つて来た
 こんな嬉しい事はない  さはさり乍ら海中に
 陥り玉ひし四人連  思へば思へばいぢらしい
 せめては霊を慰めて  朝な夕なに奉斎し
 叮嚀にお給仕致しませう  鷹依姫や御一同
 広き心に見直して  私の罪を赦しませ
 あゝ惟神々々  神の御前に慎みて
 今日の慶び永久に  感謝しまつり鷹依姫の
 教の司や三人の  冥福祈り奉る
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
 斯く歌ひ了りて、莞爾として座に着いた。船は三日三夜さ海上を逸走し、漸くゼムの港に安着した。高姫一行四人はここに上陸し、ゼムの町を二三里許り隔てたる天祥山の大瀑布に御禊をなすべく、意気揚々として、宣伝歌を歌ひ乍ら山深く進み入りにける。あゝ惟神霊幸倍坐世。
(大正一一・八・一二 旧六・二〇 松村真澄録)
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