男たちの話を寝ながら聞いていた末子姫と捨子姫は、彼らが自分たちを捕らえに来たバラモン教徒であることを知り、追い払おうと幽霊の真似をして脅かしに出た。
シーナは驚いて仲間を揺り起こした。二人の姿に驚いたイサク、チール、シーナの三人はいずこへともなく逃げ去ってしまった。
しかし残ったカールとネロは少しも驚かず、末子姫と捨子姫に向かって呼びかけた。そして、自分たちは実は珍の都の松若彦に仕える三五教徒だと明かした。二人は松若彦の内命を奉じて、バラモン教の中に入り込んで内偵をしているのだと語った。
ネロは残りの任務を果たすべく、その場を立ち去った。カールは二人を珍の都に案内することになった。途中、大瀑布の音が聞こえて来た。カールは乾の滝があるという。末子姫は禊を提案した。
カールは乾の滝には大蛇が棲んでいて、そこへ禊に行くのはバラモン教のこの地の教主・石熊だけだと止めた。しかし末子姫は、あの滝の音を聞いてどうしても行きたくなったと言い、カールも案内することになった。
果たして、滝にはすでに石熊が禊に来ていたが、滝の大蛇に魅入られて動けなくなり、正に呑まんとされるところであった。末子姫は大蛇に向かって、大蛇の身魂を慰撫する宣伝歌を歌いだした。
この宣伝歌を聴いた大蛇は涙を流し、末子姫に幾度となく頭を下げると、滝の中に姿を隠した。石熊は身体の自由を取り戻し、三人に対して命を救ってくれた大恩を感謝した。