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文献名1霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
文献名2第2篇 珍野瞰下よみ(新仮名遣い)うづのかんか
文献名3第7章 提燈の光〔849〕よみ(新仮名遣い)ちょうちんのひかり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-01-17 18:09:37
あらすじ
一行は楠の森の木陰に今日一日の不思議を物語りながら夜を更かした。カールは心いそいそと勇み立って、饒舌を発揮している。仲間のシーナが二人の女に言い寄って、肘鉄砲をくらった腹いせに女たちを谷川に突き落とし、それから女たちの亡霊に悩まされるようになり、相談された経緯を嘘とも本当ともつかぬ滑稽まじりに話した。

末子姫、捨子姫、石熊の三人は寝についた。カールは一人、寝られずに鼻歌を歌いながら涼んでいると、向こうから十曜の紋の入った提燈を下げて、二三人が近寄ってくる。

カールは、珍の都から末子姫と捨子姫を迎えに来た三五教の仲間だと悟り、女の造り声をしてからかいだした。おかしな会話をしているうちにカールは笑い出し、正体が割れてしまった。

末子姫は一人目を覚まし、カールが三人の男たちと話しているところへやってきた。男たちは、松若彦の命で末子姫一行を迎えに来たことを告げた。一行は今日はここで夜を明かすことになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月14日(旧06月22日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年9月15日 愛善世界社版84頁 八幡書店版第5輯 602頁 修補版 校定版91頁 普及版32頁 初版 ページ備考
OBC rm3007
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本文  楠の森のこかげに蓑を布き、木の間をもるる九日の月の光を浴び乍ら、早速眠りもならず、今日一日に起りし不思議の運命を物語りつつ、夜を更かした。はしやぎ切つたカールは末子姫、捨子姫の渡来に何となく心欣々として勇み立ち、又バラモン教の石熊教主が苦もなく、三五教に帰順した嬉しさに心気興奮して眠られぬ儘に、日頃の饒舌車を運転し始めた。
『空に飛ぶ天狗の鼻の高照山の谷底に、教の館を構へつつ、バラモン教を遠近に、開いて人を導きし、心も固き石熊が、館に仕へし神司、中にも分けて男振り、人に優れたカールさま、あまたの女にチヤホヤと、持囃されて朝夕に、姿をうつす水鏡、心の波も静まりて、教の庭に穿ちたる、鏡の池に立向ひ、イヽヽヽ、吾れと吾手にすかし見て、呆れ果てたる色男、田舎娘がガヤガヤとカールさまよと取り巻いて、騒ぐは強ち無理でない、げにも五月蠅き人の世や。何の因果で此様に、玉子に目鼻を付けたような、お色の白い好い男、惚られる男は見目よしと、立派に生れた身の因果、宅の女房が気を揉んで、悋気するのも無理でない。うるさの娑婆に永らへて、惚れた女の顔を見る、私の心のうるささよ。思へば思へば先の世に、如何なる善事を尽せしか、今更云ふも野暮乍ら、なぜにモ少しヒヨツトコに、生れて来なんだであらう、朝な夕なに神の前、どうぞ煩雑いナイス奴が私の事を思ひ切り、後足で砂でもかけて唾吐いて、肱鉄砲の数々を喰はして呉れる醜男に、造り直して下さんせ、シーナの様なヒヨツトコが、去年の秋の末つ頃、見目容よき二人の女、高照山の麓まで、漸う漸う進み来るのを、目敏く眺めて涎くり、目を細くしてにじり寄り、コレコレモウシ旅の人、どこの何方か知らね共、私はシーナと申す者、仮令姿は此様に、蜥蜴の様な顔なれど、心の中のドン底に、誠の花は咲き乱れ、実に芳ばしき男ぞや、馬には乗つて見よ、人には添うて見よ、世の諺もあるなれば、バラモン教の神司、中にも分けて神徳の、備はりゐます此わしに、秋波を送り一時も、早く私の側に寄り、麝香の様な男の匂、一度は嗅いで見やしやんせ、男ひでりもない世の中に、お前の様な鯱面男、いかに男にかつえたとて、どうしてこれが忍ばれよう、なんぞと野暮な撥ね言葉、言はしやんすかは知らね共、人は見かけに寄らぬ者、仮令南瓜と言はれても、色好い茄子に比ぶれば、天地隔つる味がある。いがで包んだ柴栗も、恐いようには見ゆれ共、開いて見れば芳ばしき、三つの御霊が御座るぞえ。渋皮一つ剥いだなら、女の好きな薩摩芋、芝居蒟蒻南瓜より、百倍千倍いやまさる、云ふに言はれぬ味がある。私の願を一通り、聞いてお呉れとすり寄つて、口説けば二人は立止まり、どこの何方か知らね共、砂原夕立か土手南瓜、薬鑵頭に瓢箪面、万金丹を計るよな、デコボコだらけの其顔に、何程醜い女ぢやとて、どうして、どうして秋波が送られう。是ばつかりはシーナさま、お許しなされて下さりませと、態能く打出す肱鉄砲、此方は中々屈せばこそ、情火の光炎々と、天に冲する凄まじさ、一旦男の言ひ出した、言葉をお前に反古にされ、如何して男が立つ者か、破れかぶれの此私、ウンと言はさにやおきませぬと、又も執拗う摺寄つて、恋の涙の一雫、落せば二人はあざ笑ひ、コレコレシーナの爺さまへ、お前の顔と御相談、遊ばしませよ余りぢや、私の好なはカールさま、あんなお方と末永う、添はれる事はさて措いて、仮令一夜の仮枕、それも叶はぬ事なれば、せめてお側にさぶらうて、水仕事門掃きや、褌の洗濯喜んで、致しませうと朝夕に、頼む神様仏様、妙見様もチヨロ臭い、ガラクタ国の法螺貝山に、止まり給ふ天狗様に、お願を朝夕かけ巻も、畏き神の御利益で、どうぞ会はして会はしてと、思ふ女の真心を、仇になされたカールさま、恨めしいわいなと、目を拭ひイヽヽ、悔み歎けばシーナさま、ハツと計りに腹を立て、男の意地は此通り百里二百里三百里、筑紫の国の果までもお前の後を付け狙ひ、思ひ通さでおくものか、厭なら厭でシーナにも、覚悟があると云ひ乍ら、無残や二人を谷川に、力限りに突落し、人の花と眺めむよりは一層殺して了うたら、恋の亡執は晴れるだろと、無法を尽した其酬い、二人の女の怨霊は、夜な夜な青い火玉となり、或は髪を振乱し、あゝ恨めしや恨めしや、お前は気強いシーナさま、私は深い谷底に、突落されて死にました。恨みを晴らさでおくものかと、夜な夜な出づる幽霊姿、さすがのシーナも弱り果て、カールの館に尋ね来て、コレコレモウシ、カールさま、お前に済まぬ事乍ら、テルとハルとの亡霊を、どうぞ鎮めて下さんせ、お前の様な好い男、テルとハルとの亡霊に、たつた一言鎮まれと、云うて呉れたら俺達が、千言万語を費して、言訳するより効がある。バラモン教のお経をば、千僧万僧寄り合うて、唱へるよりも喜んで、一度に成仏するであろ、一人の男のあつたら生命、助けてやらうと思ふなら、慈悲ぢや情ぢや聞いてたべ、などと五月蠅い矢の使、お門の広い此男、どうして死んだ女にまで、応対してやる暇があらう。あちら此方の女奴に、袖を引かれて何時とても、女房の小言を聞く計り、こんな詰らぬ事あろか、どうぞ此苦が逃れたさ、珍の都に現れませる、松若彦の神司に、一伍一什を打あけて、神の司に助けられ、やうやう此処まで安楽に、女難に逃れて来た男、思へば思へば夢ぢやつた……アハヽヽヽ』
石熊『アハヽヽヽ、喧しい奴だなア。丸で蜂の巣を側においた様なものだ。モウいい加減に沈黙せぬか』
カール『ハーイ、ハイ、沈黙致すで御座いませう。時は早子の正刻何れも様も、早くお休みなされませい。某は少し用事も御座らば、後程寝所に参りませう』
石熊『馬鹿ツ』
と大喝する。
末子姫『カールさま能く滑車が運転しましたねい』
カール『是が所謂カール口と申します。アハツハヽヽ』
 末子姫を始め三人は漸く寝に就いた。カールはどうしても眠られぬが儘に森を立出で、路傍に涼み乍ら、小声に鼻唄を唄つて涼んで居る。向うの方より十曜の紋の印の入つた丸提灯をブラつかせ乍ら、二三人の話声刻々と近寄つて来る。カールは透かし見て、
カール『ハハー、来よつたなア。ウヅの都から松若彦のお使として末子姫、捨子姫様を御迎への為、出張したのらしい。一つ此木蔭に潜んで、からかつて見てやらう。余り暑くつて寝る訳にも行かず、三人の連中さまは寝て了ふなり、俺一人斯うしてブラついてをつても仕方ない。狐でも狸でも来やがつたら、一つ相手になつて見ようと思つて居つた所だ。どうやら向うも三人と見える、ヤア面白い面白い』
と独言を云ひ乍ら、三人の通りかかるを待つて居た。三人はカールがこんな所に潜んで居るとは夢にも知らず、行過ぎむとする。カールは俄に女の作り声、
カール『モシモシ旅のお方さま、あなたの提灯には十曜のお印が入つて居ります。もしや三五教のお方では御座いませぬか? 妾ははるばると海原を渡り参つた者で御座います。余りの急坂で思ひの外、暇取りまして、此処で一夜を明かさむと主従二人が心安き雨宿り、珍の都へはまだ余程里程が御座いますかなア?』
提灯持つた男『ハイ、お察しの通り、私は珍の都の松若彦様の身内の者で御座います。そう仰有る貴女様は失礼乍ら、素盞嗚大神様の御娘子、末子姫様では御座いませぬか?』
カール『御察しの通妾は末子姫で御座んす。さう云ふあなたは何方へお越し遊ばすので御座いますか?』
甲『ハイ、良い所でお目にかかりました。実は御神勅に依つて貴女様主従、ウヅの都へお越し下さる事を教主様がお伺ひ遊ばされ、吾々三人に……サア是からお迎ひに参れキツとテル山峠の近辺でお出会ひ申すであらう……と仰せられましたので、実は足の達者な者ばかりお迎へに参りました。……サア是からお伴を致しませう』
カール『それはそれは御親切に有難う御座います。併し乍ら妾は生れ付き一方の足が長過ぎますので、あなた方の御伴は到底叶ひませぬ。何程カールでも草臥果てて、お足が重くなりまして、森蔭に休息……否安眠致して居りまする。どうぞ明日にして下さいませ』
乙『それは又妙な事を仰せられます。安眠して御座るお方が立つてものを仰有るとは、少しく合点が参りませぬ』
カール『所変れば品変る、お家変れば風変る、嬶が変れば顔変ると申しまして、妾の国では立つた儘安眠を致し、寝乍らものを申すのが国の習慣で御座います』
乙『何と妙で御座いますなア。さうするとあなたは女でゐらつしやいますけ共、厳の御霊の御守護で御座いますか? 瑞の御霊の守護神とか申して、霊界物語を作る男は、横にねたまま、鼾をかき乍ら話をするとか云ふ事を聞きましたが、ヤツパリそんな、国に依つて風俗があるので御座いますかなア』
カール『それはいろいろと国に依つてカール……オツトドツコイ、アールさうで御座いますワイ。何分三人の連中が白河夜船で森の中にお休みになつたものですから、仕方なしに一寸此処まで、末子姫様の守護神が出張店を開いてゐられる所で御座います。アハヽヽヽ』
甲『ヤア其声はカールさまぢやないか』
カール『カールだから、声もカール、末子姫様に一寸カール(代る)と云ふ言霊だ、オツホヽヽヽ』
甲『何だチツト可怪しいと思つて居つた。一方の足が長すぎると云つた時から、チと臭いと考へて居つたが、まさか貴様がそんな洒落をするとは思はなかつた』
カール『足引のチンバのカールが、したり顔、中々甘く人をたばかる……アハヽヽヽ。これが新派の百人一首だ……否悪人一首だ。アハヽヽヽ』
甲『さうして、姫様はどこに休んで御座るのだ。案内して呉れないか』
カール『馬鹿云ふな。とうに暮れて了つて、最早子の刻だ。くれない……なんて、何を言ふのだ』
乙『相変らず馬鹿口を叩く男だなア。早く御所在を知らして呉れぬか』
カール『御知らせ申したいは山々なれど、何分御存知の通り、暗夜の事とて御行方を見失ひ、どこにどうして御座るかと、暗にさまよふ、いぢらしさ、せめて提灯一つあつたなら、そこらブラブラ ブラついて、見付け出したいとは思へ共、何を云うても、畜生ならぬ人の身は、悲しや夜は目が見えぬ、推量あれや旅の人』
甲『何を吐かすのだ。真面目に云はないか』
カール『折角お草臥になつて、お休みの最中だ。お前達がガサガサとお側へ寄らうものなら、お目をさましては済まないから、俺が斯うして一息でも御安眠遊ばす様に、喰ひ止めてゐるのだ。マア茲でゆつくりしたらどうだ。お前は春に、幾に鷹の三人ぢやないか』
甲『オウさうだ。併し乍ら折角此処まで来たのだから、一寸御挨拶をしたいものだなア』
カール『分らぬ奴だなア。明日になつたら、いやと云ふ程御挨拶をさしてやる。今頃にお目をさまして安眠妨害をすると、警察犯処罰令でやられるぞ。夫れ共御挨拶がしたけら、お前達提灯を持つてるのだから、勝手に捜索隊を組織して捜したがよからう』
 四人が路傍に立つて喧ましく掛合うて居る話声が、夜敏い末子姫の耳に響いた。末子姫はやをら身を起し、向うを見れば十曜の紋の記された丸提灯が一張、二三人の影が、森の中の木間をすかして見えてゐる。末子姫は折角能く寝入つてゐる捨子姫、石熊の両人に眼をさまさしては気の毒と思ひ煩ひ乍ら、明りを目当に探り足にて、街道に漸く姿を現はした。
末子姫『あなたはカールさまぢや御座いませぬか。其お提灯のお光は何れのお方で御座いますかなア』
 此声に四人は驚き、
『ハイ只今松若彦様の命令に依つて、あなた様御一行をお迎へに参つた使の者で御座います』
末子姫『それはそれは御親切に、遠方の所、能くマア来て下さいました。どうぞ此方へお越し下さいませ』
カール『誠に御一同様、見るもいぶせき茅屋なれど、カールの住宅、サア御遠慮なうトツトと奥へ御通り遊ばせや』
末子姫『ホヽヽヽ』
三人『アハヽヽヽ』
と笑ひ乍ら、末子姫の後に従ひ、二人の眠れる森蔭に探り行く。
(大正一一・八・一四 旧六・二二 松村真澄録)
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