国依別は丸木橋に近づくと、安彦と宗彦に気合を入れ、自ら鶯のような女性の声色で宣伝歌を歌いだした。
その歌は、紅井姫もエリナも国依別に振られたように見せかけ、それぞれ秋山別、モリスに惚れて追ってきたかのように歌っていた。秋山別とモリスは、紅井姫とエリナが自分たちに惚れていたのだと思い込んでしまった。
三人は丸木橋を渡りきると、念入りにも森の木の皮に、紅井姫とエリナから秋山別とモリスに宛てたかのような恋文を書き込んだ。
秋山別とモリスは、国依別たちの偽の歌を聞いて、待ち構えていた橋の下の谷から上がってきた。そして紅井姫とエリナを追いかけ、国依別たちの偽の恋文を見つけ、有頂天になって追いかけ始めた。
国依別たちは、秋山別とモリスが追いかけてくるだろうと踏んで道を急ぎ、大木の上に上って休息した。
秋山別とモリスは、男の足で急いで来たのに女たちに追いつかないことを不審に思い、追い越してしまったのだろうと考えた。そして国依別らが休んでいる木の下にやってきて、そこで休息してしまった。