宣伝歌を歌いながらアマゾンの大森林に進み入った鷹依姫一行の前に、大きな兎の一族が現れた。兎の長老は、月の大神のお示しにより、宣伝使たちがやってくることを知り、自分たちを助けてくれるように懇願しに迎え出たのだという。
この時雨の森は、太古に月の大神から兎一族に与えられた楽園であったが、アダムとエバの霊魂から発生した八岐大蛇とその眷属が跋扈し、モールバンドやエルバンドのような怪物となって兎一族を餌食とし暴威を振るっているという。
竜国別は兎の長老の請いを容れて、兎一族の都に向かうこととなった。兎たちは怪物や猛獣を避けて、広い湖をめぐらした、四方を丘に囲まれた安全地帯に住んでいた。兎一族は、湖のほとりに棲む数多の鰐族と同盟を結び、互いに怪物や猛獣に対する守りを固めていた。
モールバンドとエルバンドは、兎たちがここに居を定めてから、兎を食べることができなくなってしまった。そのため、代わりに獅子、虎、狼、熊などの猛獣を食らっていた。
あるとき、モールバンドはエルバンドを使者として、猛獣の集まる森林の都の獅子王に遣わした。モールバンドとエルバンドは、獅子王に、猛獣の軍隊を引き連れて兎の都を襲い、兎を食料として提供することを要求した。
この要求を飲まなければ、モールバンドとエルバンドは猛獣を手当たり次第に取り食らうという脅迫も含んでいた。獅子王は、熊、狼、虎、大蛇、鷲などの猛獣の頭を集めて協議をなした。
モールバンド・エルバンドに従うか抗戦するかで議論は紛糾したが、獅子王は結局、強敵に立ち向かうよりも、弱い兎を攻めて自分たちの命をつなぐ方を選択した。猛獣たちの軍はただちに兎の都に向かって進撃した。
兎の王はそうとは知らず、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの宣伝使たちを饗応していた。