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文献名1霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
文献名2第2篇 北の森林よみ(新仮名遣い)きたのしんりん
文献名3第9章 岩窟女〔900〕よみ(新仮名遣い)がんくつおんな
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-05-09 17:31:50
あらすじ
三人の女の後から意気揚々として付いていく高姫の様子に、春彦は宣伝歌を歌いだした。その歌は、またしても玉への執着にとらわれて、怪しい女に付いていく高姫をからかいたしなめていた。

また春彦は歌の中で、如意宝珠の玉のありかは自転倒島にあると錦の宮の杢助から聞かされていたことを明かした。そして、高姫に玉を献上しようとにわかに表れた三人の怪しい女は、白狐の化身であり、高姫を改心させようという神の御心から遣わされていることを見抜いていた。

高子姫は一行を、森林の中に大岩石が屹立している場所に案内した。立派な岩戸が立てられており、高子姫はここが自分たちの住処であると伝えた。

春彦は高姫に岩窟に入らないように強く注意を促すが、にわかに足が引きつって歩けなくなってしまった。高姫は神罰があたったのだと、かまわず高子姫に付いて岩窟に入って行ってしまった。常彦とヨブも高姫に続いた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年08月22日(旧06月30日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年10月15日 愛善世界社版102頁 八幡書店版第6輯 185頁 修補版 校定版107頁 普及版41頁 初版 ページ備考
OBC rm3209
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本文  三人の娘の後から高姫は期する所あるものの如く、体をゆすり、どことなく春駒の勇んだやうに、シヤンシヤンとして従いて行く。常彦、ヨブの二人はせう事なさに従いて行くといふ様な足元で、莽々と草の生え茂つた中を、一歩々々探る様にしてゐる。春彦は殿をつとめながら、何となく心の底より可笑しくなり、
『時雨の森に現はれた  魔性の女にだまされて
 欲の熊高姫さまが  又も持病を再発し
 金剛不壊の如意宝珠  数限りなく吾宿に
 隠してあるから出ておいで  お気に入るのがあつたなら
 いくらなりとも上げませうと  茨に餅のなるやうな
 甘い話を聞かされて  心の中はうはの空
 我欲の雲にとざされて  一寸先は真の暗
 旭が出てるが分らない  月日の姿も目につかぬ
 高倉暗の高姫が  ドツコイ一杯喰はされて
 又も吠え面かわくだらう  あゝ惟神々々
 なぜにこれ程高姫の  心がグラグラするのだらう
 勢込んであの通り  玉ぢや玉ぢやと勇み立ち
 狐の穴につれ込まれ  コレコレまうし高姫さま
 如意の宝珠はこれですと  さらけ出したる玉手箱
 開いて見ればこはいかに  如意の宝珠と思ひきや
 狸の睾丸八畳敷  オツたまげたよたまげたよ
 コリヤたまらぬと尻からげ  一目散にかけ出して
 底ひも知れぬ谷川へ  ドンブリコンと墜落し
 水の泡程泡をふき  アフンとするに違ひない
 それを見るのが春彦は  気の毒さまでたまらない
 あれほど意見をしたけれど  玉にかけたら魂を
 奪はれ切つた高姫は  口角泡をば飛ばしつつ
 神の仕組は人民の  容喙致す事でない
 神の仕組は神が知る  お前の様な人民が
 神の仕組をゴテゴテと  横槍入れるこたならぬ
 だまつて厶れとはねつけて  ありもせないに宝玉を
 手に握らむと進み行く  猿猴が水に映つたる
 月の影をば掴むやうに  水に溺れてブルブルと
 泡を吹いては八当り  二百十日に吹きまくる
 風ぢやなけれど吾々は  蕎麦の迷惑思ひやる
 そばに見てゐる俺達も  高姫さまの吹く粟を
 黍がよいとは思やせぬ  狐の七化け、ド狸、豆狸
 八化けと更に知らずして  玉を手に入れ其上に
 鷹依姫の在処をば  知らして貰ふと暗雲に
 糠よろこびの気の毒さ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 如意の宝珠の宝玉は  高砂島にあるものか
 言依別の大教主  初稚姫や玉能姫
 二人の身魂にコツソリと  離れの島にかくさせて
 誰も在処は分らない  とは云ふものの自転倒の
 どつかの島に隠しある  其事だけは確ぢやと
 錦の宮の杢助が  私に話してをつたぞや
 お気の毒なは高姫ぢや  モウよい加減に諦めて
 玉の執着捨てなさい  お前が玉に執着し
 心を曇らすものだから  こんな苦労をせにやならぬ
 日の出神の生宮か  系統の身魂か知らねども
 俺は愛想がつきて来た  改心したかと思や又
 又もや慢心あと戻り  改慢心をくり返し
 神さまだとて気の毒ぢや  こんな身魂を元のやうに
 研き直すは大変だ  俺が神さまであつたなら
 遠くの昔に棄ててをる  ホントにホントに気が長い
 尊き神の思召し  誠に感じ入りました
 先へ出て行く三人は  高倉稲荷を始めとし
 月日、旭の明神だ  神が姿を現はして
 高姫さまの改心を  試してござるも知らずして
 従いて行くのか情ない  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましまして  高姫さまの執着を
 一日も早く晴らしませ  私も真に困ります
 あんな御方の供をして  居るものならば何時迄も
 自転倒島へは帰れない  鷹依姫の一行は
 アマゾン河の南岸  兎の王にかしづかれ
 尊き霊地を守りつつ  高姫さまの到るのを
 待つてゐるのに違ひない  早く改心させてたべ
 高姫一人の為ならず  常彦、春彦、ヨブの為
 神かけ念じ奉る  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
と歌ひながら、後より厭々ついて行く。
 高子姫は草路を分けつつ、此森林に見た事もない大岩石十町四面許り、洋館の如くに屹立し、岩の面には白苔が所斑に生えてゐる。そして岩の凹所には小さき樹木の割には年を寄つて、植木のやうな面白き枝振りで、彼方此方に点々として生えてゐる。其下の方に縦一丈横八尺許りの真四角な穴が穿たれ、入口には頑丈な岩の戸が閉てられてあつた。高子姫は高姫に向ひ、
『これが妾の住家で御座います。どうぞ皆さま、御遠慮なしに御這入り下さいませ。お茶なつと差上げますから、ゆるゆる御休息下され。鷹依姫様にも御面会下さらば、真に有難う存じます』
 高姫は余り立派なる岩窟の入口に肝をつぶし舌を巻きながら、
『これはこれは思ひがけなき立派な御住居、此岩窟は何時築造になりましたか。斯様な森林内に立派な館が立つて居らうとは夢にも知りませなんだ』
高子『何分此辺は大蛇や悪獣の跋扈甚だしく、夜分は斯様な処でなければ、到底安眠する事も出来ませぬので、天然の岩山を幸ひ、掘り付けまして、漸く此頃仕上つたばかりで御座います。貴女が始めてお客さまとして、御這入り下さるかと思へば、実に光栄に存じます』
春彦『モシモシ高姫さま、確りせぬと出られぬやうな目に会はされますよ。決して這入つちや可けませぬ。ここは立派な岩窟の様に見えて居つても、シクシク原の泥田圃で御座いますよ。チト確りなさらぬか』
高子『ホヽヽヽヽ』
高姫『コレ春! お前はどうかしてゐるぢやないか。曲津に憑依されて結構な御用をゴテゴテと邪魔する事計り考へてゐるのだなア』
春彦『アイタヽヽヽ、俄に足が引きつつて来ました。どうやら化石しさうになつて来たぞ。モシ高姫さま、鎮魂をして下さいな。こんな所で石仏になつちや堪りませぬからなア』
『それ見なさい。余り御神業の邪魔計りするものだから、神罰が立所に当つて其通り固められて了つたのだ。マア暫くそこに門番を勤めて居なさい。此高姫は常彦、ヨブの二人と共に奥殿に案内され結構な玉を拝見し、其都合に依つて頂戴して来る考へだから、それ迄お前はそこに立番してゐる方がよからうぞ。又してもゴテゴテ差出られると、御主人の御機嫌を損ね、折角見せて貰へる玉まで拝む事が出来ない様になつちや困るから……あゝ神様といふ御方は何とした気の利いたお方だらう。実はお前を連れて、此館へ這入るのは真平だと思うてゐた所、都合よく神様が御繰合せをして下さつた。慢心致すと、にじりとも出来ぬやうになるぞよと、お筆先に出て居りませうがな。チト改心なされ。左様なら、春さま御苦労……』
と云ひ捨て、高子姫に手をひかれ岩窟内に潜り入らうとする。春彦は声を限りに、
『高姫さま、シツカリしなさい、違ひますよ。オイ常彦、ヨブの両人、俺の言ふ事を聞いて高姫さまを引止めて呉れ。大変な目に遭はねばならないぞ。俺はかう見えても、天眼通が利いて居るのだから……』
高姫『エヽ喧しい、体も動かぬ癖に、天眼通もあつたものかい……サア常彦、ヨブ参りませう』
と三人の女に手を曳かれ、奥深く進み入る。後に春彦は呆然として三人の後姿を眺め、
『ハテ困つた明盲ばかりだなア。高姫さまも是ではサツパリ駄目だワイ』
(大正一一・八・二二 旧六・三〇 松村真澄録)
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