神代の昔、五六七の神と現れた瑞の御霊の月神が、大海原に漂う高砂島の秘密郷・ブラジル国のアマゾン河の大森林の中心に聖地を造った。これを兎の王に与えて千代の棲み処と定めた。
常世会議の武備撤回の制定後、翼をはがれた猛獣たちは常世の国からこの森林に襲い来て、兎のやからをしいたげ殺して餌となした。
この暴虐に種族も絶えなんとするとき、三五教の神司の鷹依姫や竜国別一行により、猛獣たちは言向け和された。また高姫一行、安彦一行が加わって、モールバンドやエルバンドの霊を清めて神の御使いとなした。
十二人の一行はアマゾン河の魔神たちに霊魂の行く末を明らかに諭し、救いの道を説いた。そして意気揚々と宣伝歌を歌いながら、山川渓谷を跋渉し、ようやく帽子ケ岳に止まっていた教主・言依別命と、国依別命の前に帰って来た。
互いにその無事を祝し、成功をほめ感謝の涙を流しつつ打ち解け、喜び勇んで帽子ケ岳の山頂に国魂神の神霊を祀り、感謝の祝詞を奏上した。あたりの木の実を集めて、ここに山上の大宴会が開かれた。
しかしながら、北の大森林に同じく高姫を探しに遣わされていた正純彦、カール、石熊、春公の一隊からのみ、消息がなかった。言依別命は国魂神を厚く念じ、一同神楽を奏して言霊歌を歌い、無事の祈願を込めた。
正純彦たち一行四人は大森林に迷い、高姫に会えなかったが、春彦とヨブが出会った石地蔵にたどり着き、石地蔵から高姫たちは神業を果たして凱旋したことを伝えられた。正純彦一行は三日遅れて帽子ケ岳山頂に到着した。
一行は十八人となり、屏風ケ岳山脈を下って長い原野を渡り、ブラジル峠を越えてウヅの都の末子姫の館に凱旋した。