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文献名1霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
文献名2第1篇 誠心誠意よみ(新仮名遣い)せいしんせいい
文献名3第2章 灰猫婆〔917〕よみ(新仮名遣い)はいねこばば
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-07-04 18:26:03
あらすじ
カールは高姫の後を追って館の中へ入って行ったが、裏道を松若彦が逃げ、そのあとを高姫が追っかけているのが見えた。カールは高姫の執念深さにあきれつつ、松若彦が追いつかれることはないだろうと、玄関口へ戻ってきた。

そこへ常彦と春彦が慌ただしくやってきて、高姫の行方をカールに尋ねた。カールは得意の軽口で状況を説明する。常彦と春彦は、高姫がこのたびの結婚に反対で走り回っているのを止めようと、探しているのだという。

カールはそれを聞いて、常彦に代わりに留守番を頼むと、自分と春彦でそれぞれ、高姫の後を追って行くことにし、駆け出した。

二人が駆けてしばらく行くと、横幅三間ばかりの深い川が流れており、丸木橋がはずされていた。見れば高姫が川底にのびて横たわっている。カールと春彦は高姫を助け出した。二人は高姫を、高姫の臨時館に運び込み、鎮魂を施した。

高姫は気が付いたが、助けてもらいながら、カールと春彦に憎まれ口を叩き続けた。春彦は怒り心頭に達し、傍らにあった木株の火鉢を取って、高姫に殴りかかろうとする。カールは必死に止めるが、高姫は憎まれ口をやめない。

ついに火鉢がひっくり返って三人は灰まみれになってしまった。三人は真っ黒けになりながら、金切り声で掴みあっている。

そこへ言依別命が門口の戸を開けてやってきた。
主な人物 舞台ウヅの館 口述日1922(大正11)年08月24日(旧07月2日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年11月10日 愛善世界社版20頁 八幡書店版第6輯 263頁 修補版 校定版21頁 普及版8頁 初版 ページ備考
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本文  カールは高姫の無遠慮にも奥の間にかけこみしを怒り乍ら、自分も奥の間に到つて見れば、豈計らむや、松若彦、高姫の姿が見えない。ふと開け放つた窓より外を覗き見れば、一丁許り距離を保つて、二人はマラソン競走の真最中であつた。
カール『何とマア、我の強い婆アだなア! 後追つかけて引つ掴まへ、散々に懲らしめてやりたいは山々だが、俺が今ここを飛出せば、サツパリ不在となつて了ふ。あれ丈距離を保つて居る以上は、ヨモヤ追つ着きはせまい。其間に松若彦様はどつかへ隠れられるだらう。俺も臨時留守番を頼まれて来た以上は一刻の間も、此家を空にしておく訳には行くまい。アヽ残念だ……』
と呟き乍ら、玄関口に帰つて来た。そこへ慌ただしく常彦、春彦の両人、駆け来り、
常彦『ヤア是はカールさまですか。一寸御尋ね致しますが、ウチの高姫さまは御越しにはなりませぬか』
カール『ハイ、お越しか怒りか知りませぬが、随分に妙な事が起りましたよ。今裏の広道で、松の木と鷹とのマラソン競走が行はれて居ますワイ』
春彦『鷹は羽があつて空中を翔るでせうが、松が走るとはチツト合点が往かぬぢやありませぬか』
カール『今日は余りお目出たい日だから、山川草木皆踊り狂うて、喜んでゐます。私だつて常彦……オツトドツコイ、常の日とは違ひ、春彦……又違うた……春の花咲くやうな陽気な気になつて、勇んで居ります。常は尻の重い私でも、今日は何となしに気もカール、足もカールになりました。アハヽヽヽ』
常彦『それはさうと、私方の大将、高姫さまは如何なりましたか』
カール『どうも斯うもなりませぬワイ』
春彦『お出でになつたか、ならぬか、ハツキリ言つて下さいな』
カール『ハイ、お這入りになりまして、すぐ裏口から御出になりました。大島が入口、出口が元で、竜宮館が高天原と定まりたぞよ。アツハヽヽヽ』
常彦『まるでキツネ彦が狐にだまされたやうな心持になつて来た』
カール『松若彦の世になるぞよ、末広き末子姫、国依別命と今夜は、愈々夫婦におなり遊ばすぞよ、霊と霊の因縁が寄合うて、此の身魂は此身魂、あの身魂はあの身魂、これとこれと夫婦、あれとあれと夫婦と、身魂の因縁性来を検めて、結婚な結婚な結婚式が今晩は始まり、高砂や此浦舟に帆をあげて、と云ふ所だアハヽヽヽ。イヤもう目出たいの、目出たうないのつて、開闢以来の御目出たさだ……コレ常彦、春彦、御両人、お前さま達は何と心得ますか』
常彦『本当に結構な事ですなア。併し乍ら結構だとは申されませぬワイ……ナア春彦、一寸面倒いからなア』
カール『あなた方御両人は、今度の結婚が御気に容らないのですか』
常彦『イエイエどうしてどうして、大賛成です。併し乍ら夜前も、夜中時分に高姫さまに叩き起され……お前の感想はどうだ……と尋ねられたので、国依別さまもエライ人だと思うて居つたがヤツパリ偉い御方だと、うつかり蝶つた所、それはそれはエライ権幕で大変な不機嫌でした。それから高姫さまは夜の明ける迄一目も寝ず、奥の間でブツブツと独言を云つて言依別がどうの、松若彦がどうのと、ハツキリは分らぬが、大変にこぼしてゐました。私も夜明け前になつてからグツと寝て了ひ、目をあけて見れば、高姫さまのお姿が見えない、コリヤ大方、松若彦様の御宅へ出て来て、又もや生れつきの持病を起し、鉈理屈をこねて困らせてゐるに違ひない、こんな目出たい事にケチつけてはたまらないから、何とか吾々両人が、高姫さまに出会つて、御意見を申したいとの一心から、手水もつかはず、朝飯も食はず、周章狼狽、取る物も取りあへず此処まで駆けつけた次第で御座いますワイ』
春彦『本当に困つたお婆アですワイナ。私も永らく自転倒島から此処までついて来ましたが、それはそれは随分でしたよ』
カール『アハヽヽヽ、ずいぶんジヤジヤ馬ですなア。併し乍らあの儘にして置いたら、此の目出たいお日柄を目出たくない様な事に潰して了ふか分りませぬから、コリヤ斯うしては居られますまい……常彦さま、お前はここの留守をして居て下さい。私は松若彦様の後を追つて行く、春彦は高姫さまの後を追つて行くと云ふ事にしてカール、春彦両人が第二のマラソンをつづけませうかい』
常彦『何分宜しう頼みますよ……カールさま、春彦さま、サア早く往つて下さい。キツト捨子姫様か、言依別様の御宅に間違ひないから……』
 両人は「合点だ」と尻ひつからげ、裏口より大股に大地をドンドンドンと威喝させ乍ら、一生懸命に駆出した。
 二人は二三丁許り駆出した。そこには横幅三間許りの深い川が流れてゐる。さうして丸木橋が架つて居た。川は深い割には水は少く、ほとんど向脛の半分許り没する位な浅き流れであつた…………フト見れば一本橋は脆くも落され、高姫は川底に大の字となつて、フン伸びてゐる。これは松若彦が高姫の追ひ来るのを防がむ為に、臨時に一本橋を落しておいたのである。高姫は頭を前にして、力一杯走つて来た其惰力で、俄に立とまる事を得ず、止むを得ず、橋なき川と知り乍ら、落込んで了つたのであつた。二人は、
『ヤア、コリヤ大変だ』
と辛うじて川に下りたち、高姫の人事不省となつてゐる体を引かたげ高姫の臨時館へ送り届け、いろいろと介抱をし、祝詞を奏上し、鎮魂を施した。漸くにして高姫は息を吹き返し、あたりをキヨロキヨロ眺めてゐる。
カール『モシモシ高姫さま、お気がつきましたか、大変なお危ないこつて御座いました。マアマア私や春彦、両人が、後から従いてゐたものだから、あなたの貴重な命が御助かり遊ばし、こんな目出たい事は御座いませぬワイ』
高姫『ハイ、それは有難う御座います……と御礼を申したらお前さまのスツカリ壺にはまるだらうが、ヘンさうは往きませぬぞや。何だか後から人が突くやうに走つたと思うて居つたら、カール、お前は私の後を追つかけて来て、あの丸木橋の下へ突込んだのだな。此高姫だとて橋のない川を渡らうとするやうな馬鹿ぢやありませぬワ。何だか余り後から突きよつたものだから、とうとう其勢ひに落込んで了つたのだ。あんな深い川へはまつたのが分つたと云ふのは怪しいぢやないか、お前は松若彦の御贔屓を志て、私を突きはめたのだらう。オツホヽヽヽ、悪を企んでも忽ち露はれませうがな』
春彦『高姫さま余りぢやありませぬか、現に私が証拠人です。折角命を助けて貰ひ乍ら、何と云ふ無茶な事を仰有るのですか』
高姫『オツホヽヽヽ、同じ穴の狐同志が同盟して、甘い事を仰有いますワい。何程あの川の様な深い企みをしても、知慧の流が浅いのだから、直に底が見えましてな、ホツホヽヽヽ』
カール『何とマア小面憎い婆アだなア。俺も最早愛想が尽きて来た』
高姫『さうだらう さうだらう、小面憎い婆アで愛想がつきたものだから、突き落したのだな。カールは口から、吾と吾手に白状しましたねエ』
春彦『アーア、モウ情ない……これ、カールさま、どうぞ私に免じて、御腹が立つだらうが怺へて下さいや』
高姫『コレ春公、怺へてくれと云ふのは、ソリヤ見当違ひぢやありませぬか。大それた日の出神の生宮………とも云ふべき、此高姫をこんな目に合せておいて、なぜ低頭平身、おわびをせないのか、チツト方角違ひぢやありませぬか』
春彦『知りませぬワイ。お前の様な疑ひの深い悪垂れ婆アは、今日限り絶交だ、カールさまに対して申訳がないから……人の命を助けてやつて、あやまらねばならぬ法がどこにあるものか、おまけに吾々が突き落したなどと、無理難題を云ふにも程がある』
高姫『謝罪らな、あやまらぬでよい。殺人未遂罪で告発するから其積りでゐなさいや』
カール『高姫さま、あなたは余り俄にあんな所から転倒なさつたものだから、精神が逆上してるのでせう。マア気を落ち着けて能く物の道理を考へて御覧なさい。私は是から御暇いたします』
高姫『ヘン、口と云ふものは重宝なものですなア、甘い事云つて逃げようとしても、逃がしませぬぞや。人殺し奴が!』
春彦『エヽもう俺も堪忍袋の緒が切れた。たとへ天則違反になつても、カールさまに対して申訳がない、覚悟せい!』
と云ひ乍ら、其処にあつた木株の火鉢を取るより早く、高姫目がけてブチつけようとする。此時カールはあわてて、
カール『ヤア春さま、まつた まつた』
と抱きとめる。春彦は、
春彦『オイ、カールさま、構うてくれな。おりやモウ死物狂ひだ』
と火鉢を両手に、頭上高くふり上げた儘、目を怒らしてゐる。高姫は、
高姫『ヘン、春の野郎、何をするのだ。そんな事でビクつく様な高姫ぢやありませぬぞえ。悪い事をした言訳のテレ隠しに、そんな狂言を、二人が腹を合せてやつた所で、計略の奥の奥まで、チヤンと見えすいた高姫、そんな威喝は駄目ですよ。オホヽヽヽ』
 春彦益々怒り、
『モウ了見ならぬ』
と高姫の頭に投げつけようとする。カールは力一杯春彦の捧げた両手を握つてとめやうとする。火鉢はいつの間にかひつくり返り、三人の頭の上は灰だらけになり、真黒けの黒猫になつて、目も見えぬ儘に金切声を張り上げ掴み合うてゐる。此所へ言葉も静に、
『御免なさい』
と云ひ乍ら、門口の戸を開けて入り来る一人の立派な男ありき。是は言依別命なりける。
(大正一一・八・二四 旧七・二 松村真澄録)
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