カールは高姫の後を追って館の中へ入って行ったが、裏道を松若彦が逃げ、そのあとを高姫が追っかけているのが見えた。カールは高姫の執念深さにあきれつつ、松若彦が追いつかれることはないだろうと、玄関口へ戻ってきた。
そこへ常彦と春彦が慌ただしくやってきて、高姫の行方をカールに尋ねた。カールは得意の軽口で状況を説明する。常彦と春彦は、高姫がこのたびの結婚に反対で走り回っているのを止めようと、探しているのだという。
カールはそれを聞いて、常彦に代わりに留守番を頼むと、自分と春彦でそれぞれ、高姫の後を追って行くことにし、駆け出した。
二人が駆けてしばらく行くと、横幅三間ばかりの深い川が流れており、丸木橋がはずされていた。見れば高姫が川底にのびて横たわっている。カールと春彦は高姫を助け出した。二人は高姫を、高姫の臨時館に運び込み、鎮魂を施した。
高姫は気が付いたが、助けてもらいながら、カールと春彦に憎まれ口を叩き続けた。春彦は怒り心頭に達し、傍らにあった木株の火鉢を取って、高姫に殴りかかろうとする。カールは必死に止めるが、高姫は憎まれ口をやめない。
ついに火鉢がひっくり返って三人は灰まみれになってしまった。三人は真っ黒けになりながら、金切り声で掴みあっている。
そこへ言依別命が門口の戸を開けてやってきた。