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文献名1霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻
文献名2第1篇 天意か人意かよみ(新仮名遣い)てんいかじんいか
文献名3第7章 蒙塵〔995〕よみ(新仮名遣い)もうじん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-06 09:18:28
あらすじ
サガレン王は発狂者として厳重な監視付きで一室に閉じ込められていた。王は一弦琴を取り出して声も静かに歌いだした。

サガレン王の父・大国別はイホの都でバラモン教を開いたが、三五教に追われて顕恩郷に逃げた。大国別がその地でなくなると、バラモン教の棟梁となった鬼雲別は自分を疎んじ、そのため自分はシロの島までやってきて教えを開き、王となった半生を歌に歌った。

そしてウラル教の竜雲がやってきてケールス姫を籠絡し、今の境遇に至ったことを嘆き、大自在天に自分とシロの国民たちの救いを請い願った。

テーリスはサガレン王の部屋の外にやってきて、あたりに人がないのを幸い、アナン一派が王を救うべく計画を実行していることを歌に託して歌った。サガレン王はこの歌を聞いて自分を助けるべく臣下が活動していることを知り、大いに勇気づけられた。

竜雲はケールス姫を伴い、王を監禁した部屋の前に現れ、声高々とウラル教への改心を迫る歌を歌った。竜雲は自分こそがシロを治めるのにふさわしいと勝手な理屈を歌い、譲位を迫る言霊を臆面もなく発射している。

サガレン王はただうつむいているだけだった。そこへ、城の外に爆竹の音が響いた。竜雲とケールス姫は青くなってこの場を出て行った。竜雲は部下に下知して防戦の指揮を取った。アナンの軍は城門を破り、城内に乱入してきた。

エームスとテーリスはこの混乱に乗じてサガレン王を部屋から救いだし、裏門から人目を忍んで逃げ出した。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年09月21日(旧08月1日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1923(大正12)年12月30日 愛善世界社版60頁 八幡書店版第6輯 605頁 修補版 校定版61頁 普及版27頁 初版 ページ備考
OBC rm3607
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本文  サガレン王は一室に取込められ、発狂者と誣いられ、厳重なる監視人付きにて昼夜の別なく見張られてゐた。サガレン王は一絃琴を取出し、声も静かに歌ふ。
『父は大国別の神  イホの都に現れまして
 教を開き玉ひしが  三五教の神司
 夏山彦や祝姫  其他百の神人に
 追ひ払はれて顕恩の  郷に鬼雲彦を伴れ
 教を開き玉ひしが  間もなく父は世を去りて
 鬼雲彦はバラモンの  教司となり終ほせ
 われを見すてて顧みず  やむなく吾はシロの島
 神地の都に現はれて  漸く教を四方の国
 布き拡めつつ国民を  教へ導き王となり
 これの国地は穏かに  治まりゐたる折もあれ
 ウラルの道の竜雲が  何処ともなく現はれて
 ケールス姫を籠絡し  日に日に勢力扶植して
 傍若無人の彼が業  此神城を奪はむと
 善からぬことを企てつ  心の狂ひしわれなりと
 今は無残に籠の鳥  詮術なさに泣く涙
 止むる由も荒浪の  海に漂ふ如くなり
 危険刻々身に迫り  明日をも知れぬ吾生命
 誠の神のましまさば  一日も早く曲神を
 きため玉ひて元の如  われをば再び王となし
 忠誠無比のタールチン  キングス姫やエームスや
 ユーズ、サールにゼム、エール  シルレングをば救ひませ
 名利に狂ふ曲神の  われの恩顧を打忘れ
 心汚き竜雲が  前に腰をば屈めつつ
 髭の塵をば払ふ奴  館の内外に充満し
 正義は亡び邪は栄え  世は常闇と成り果てて
 心の空は村雲に  包まれ了へぬ十重二十重
 晴らさむ由も泣く計り  あゝ惟神々々
 神の御霊の幸はひて  一日も早く片時も
 此苦みを除かせよ  神は吾等と倶にます
 神の心に叶ひなば  いかなることか成らざらむ
 善をば助け曲神を  亡し給ふ神の道
 一日も早く吾胸に  照らさせ玉へ自在天
 大国彦の御前に  謹み敬ひ願ぎまつる
 旭は照とも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 魔神は如何に荒ぶとも  誠の神のある限り
 誠の道をひたすらに  守る真人を如何にして
 守らで居ます事あらむ  あゝ惟神々々
 神よ吾等を憐みて  一日も早く救ひませ
 吾身一つの為ならず  シロの島根に生ひ立てる
 青人草を救う為  守らせ玉へと願ぎまつる
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
と心静かに、琴の音に合せて、述懐を歌ひつつありぬ。
 テーリスは此処に現はれ来り、あたりに人無きを幸ひ、室の外より声も静に歌ひてサガレン王に、アナンの一派が君を救ひ出すべく計画しつつありとの事を、歌に装ひて述べ立てたり。其歌。
『シロの島根の真秀良場や  青垣山の頂きに
 そそり立ちたる常磐木の  色も青々若緑
 枝葉も茂る勢に  醜の魔風の吹きすさび
 其大木を倒さむと  朝な夕なに計らひつ
 心も猛き竜巻の  雲の勢強くして
 一度は峰を包め共  神の御息に吹きうつる
 科戸の風はいつまでも  吹かずにあるべき惟神
 神に御心任せつつ  八重雲四方に吹き分くる
 強き力の時津風  今吹かむとすサガレンの
 君の命よ今暫し  待たせ玉へよ汝が上に
 清き月日はテーリスや  アナン、サールを始めとし
 セール、ウインチ、エームスの  清き身魂は雨となり
 風ともなりて君の辺を  洗ひ清めむ待て暫し
 神の御霊の幸はひて  八岐大蛇や醜狐
 巣ぐふ身魂をサラサラに  払ひ除くる喜びは
 有明月の真夜中頃  水も眠れる丑満の
 時を伺ひ汝が命  救ひまつりて元の如
 此神国にサヤサヤに  御稜威輝き国人の
 大主師親と仰がれて  月日と共に其光り
 競ひ玉ふも目のあたり  心平に安らかに
 月日を待たせ玉へかし  エームス、テーリス両人は
 君の御側を伺ひつ  如何なる曲の猛びをも
 一指だにもさえさせず  心の限り身の限り
 守りまつらむ心安く  思召されよテーリスが
 ひそかにひそかに村肝の  心を明かし奉る
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましまして
 わが大君はすこやかに  日に夜に身魂清らけく
 すごさせ玉へ大国彦の  神の命の御前に
 謹み敬ひ願ぎまつる』
 サガレン王はテーリスの歌を聞いて、アナン以下忠誠の臣が、やがて吾を救ひ出すべき時の来る事を悟り、大に心を強くし其日を待てり。
 竜雲はケールス姫を伴ひ、王を監禁せる居間の前に儼然として現はれ来り、窓よりソツと室内を眺め声高々と歌ふ。
『サガレン王よ聞こし召せ  ウラルの神の司なる
 神徳強き竜雲が  汝に一言宣り伝ふ
 此シロ島はサガレン王の  君の治らする国ならず
 常世神王の末裔と  名乗りて世人を迷はせし
 其天罰は目のあたり  神より受けし生霊は
 今や狂ひて憐れにも  前後不覚の発狂者
 さはさり乍ら汝も亦  天地の神の御水火より
 生れ出でたる者なれば  如何に暴悪無道とて
 殺しすつるに忍びむや  これより汝は村肝の
 心を清め真心に  省み直して一日も
 とく速やけく汝が位  退き吾れに譲れかし
 さすれば吾れは汝をして  安く楽しく永久に
 生命を保たせ参らせむ  盤古神王の霊の裔
 ウラルの彦の系統と  其名も高き竜雲が
 ケールス姫と諸共に  神地の城に現はれて
 数多の国民悉く  いと平けく安らけく
 神代の姿に導きて  世を永久に守るべし
 もしも否ませ玉ひなば  われにも深き仕組あり
 汝が命の御命は  嵐の前の灯火と
 消えて失せむは目のあたり  あゝ惟神々々
 神の御霊に省みて  わが言霊を神直日
 心も広く大直日  よく見直せよ聞直せ
 最早運命つきし汝  いかに心を砕くとも
 此大勢を如何にして  挽回すべき時あらむ
 人は心が第一よ  心一つの持様で
 今日より気楽に暮さうと  苦み悶え玉の緒の
 命を捨てて根の国や  底の国なる苦しみを
 なめ味はふも汝が心  たつた一つの使ひ方
 否か応かの返り言  早く聞かさせ玉へかし
 ケールス姫と諸共に  汝が命の決心を
 促しまつる竜雲が  慈愛の心を諒解し
 今目の前で御位を  われに譲ると一言の
 玉の御声を賜へかし  あゝ惟神々々
 神に誓ひて竜雲が  汝が命に打向ひ
 答へを糺し奉る  あゝ惟神々々
 御霊幸はひましませよ』
と勝手な理屈を並べ立て、サガレン王を密室に監禁し、自由を束縛し、無理往生に譲位せしめむと、悪逆無道の言霊を臆面もなく発射してゐる。王は余りの竜雲の暴言に呆れ返り、黙然として俯いたまま、何の応へもなく竜雲の声する方を見つめゐたり。
 斯かる所へ城の外面に爆竹の声響くと共に『ワアワア』と数百人の人の叫声、只事ならじと竜雲を始めケールス姫は、蒼皇として此場を立出で、
竜雲『正しく、アナン一派の敵の襲来ならむ、早く防戦の用意なせ』
とケリヤ、ハルマの臨時左守、右守の神に向つて下知を下せば、両人は城内の人々を集め俄に武装せしめ、上を下へと周章狼狽しながら、防戦の準備にさしかかりたるに、早くもアナンの一軍は表門を打破り、城内深く鬨を作つて乱入し来る。
 エームス、テーリスの両人は此声に勢を得て勇み立ち、竜雲、ケールス姫其他の一同が防戦の用意に精神を奪はれゐる隙を伺ひ、サガレン王を抱へ、裏門より人目を忍びて、いづくともなく逃げ出しにける。
(大正一一・九・二一 旧八・一 松村真澄録)
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