自宅へ帰って寝ていると、誰かが自分を揺り動かした。にわかに自分の身体は機械のように自動的に立ち上がり、自然に歩き出した。産土の社のそばの殿山という小さい丘の山に導かれた。
臍の下から円い塊がゴロゴロと音をさせて喉の近辺まで上がってきた。大霜天狗、と口を切って怒鳴りたてた。大霜は、金を掘らせてやるから道具を用意して奥山に行け、と命じた。
自分はやむを得ず険しい道を道具を持って奥山へと進んできた。大霜天狗に命じられた場所でつるはしを握ると、手が勝手に動き出して地面を掘り始めた。
大霜天狗が休憩しているときに、こんな場所から金が出てくるはずがないと思っていると、大霜は自分の疑いを非難した。そして神様の道に入った自分は金など要らないといっても、無理やりつるはしを振らされて地面を掘らされた。
結局、金は出ないまま岩盤に突き当たり、つるはしの先も坊主になってしまった。自分が大霜を責めると、大霜はお前の心を試したのだ、といって消えてしまった。
仕方がないので道具を持って山道を戻ってくると、途中で元市と宇一が待ち構えていた。結局、家に戻って本当に金が掘り出せなかったことが判明し、元市親子の信用を失って修行場を断られてしまった。
多田琴は中村へ帰って、四五人と共にさかんに鎮魂や帰神の修行をやっていた。自分は自宅で自修をすることになった。