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文献名1霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
文献名2第2篇 光風霽月よみ(新仮名遣い)こうふうせいげつ
文献名3第9章 稍安定〔1046〕よみ(新仮名遣い)ややあんてい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-11-03 14:57:14
あらすじ
足立、中村、四方春蔵らが喜楽への反対運動を激しくしてきたので、福島寅之助氏の神がかりはますます激しさを増した。谷口もそれに加わり、遂には教祖様を退隠させて喜楽を放逐しようと謀議をこらしていた。

福島氏の荒れ方は次第に激しくなり、遂には中村や四方春蔵にも手に負えなくなってきた。巡査もやってきて小言を言うようになってきたので、祐助爺さんが喜楽に助けを求めてきた。

教祖様はこれを聞いて、上田先生一人で邪神の群れに飛び込むことはならぬ、澄子を連れて行くように、と命じた。自分は祐助爺さんと澄子と三人連れで上谷の修行場に駆け付けた。

福島ら神がかりの連中は家中を暴れまわり、中村、四方春蔵、谷口らは手品がききすぎて手が付けられなくなり、家の隅で小さくなって震えている始末である。

神がかりの福島は喜楽の顔を見ると、信者らに霊縛するようにと命じた。一同は手を組んでウンウン唸っているが、喜楽の身体には何の影響もない。そこに澄子が現れてウンと一息にらむと、二十余人が一時にバタバタと将棋倒しになり、身体強直して動けなくなってしまった。

足立、中村、四方春蔵らは蒼白となり、許しを請うのみであった。澄子が改心すればゆるす、というと一同の身体はたちまちもとに戻った。

村上房之助、野崎篤三郎はどこともなく姿を隠して帰ってこない。二人の両親が、大切な息子を狂人にしたと怒鳴り込んできた。喜楽が両親を諭していると、村上・野崎両人は、新しい信者を連れて帰ってきた。

福島氏はひとまず八木へ帰ることになり、後は喜楽と澄子が審神者となってひとまず金明会は治まるようになった。反対者たちもようやく教祖様や喜楽の指図に従うようになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年10月16日(旧08月26日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年4月3日 愛善世界社版98頁 八幡書店版第7輯 194頁 修補版 校定版98頁 普及版49頁 初版 ページ備考
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本文
 福島氏は依然として数多の役員や修行者と共に、
福島『丑の年に生れた寅之助の艮の金神は此方だ』
と威張り散らして猛り狂うて居る。そこへ喜楽に大反対の足立、中村、四方春三等が、益々反対の気勢を煽るので、自称艮の金神の狂態は愈激烈を加へるばかり、遂には教祖を退隠せしめ喜楽を放逐し、福島を以て綾部の艮の金神の教祖となし、足立を以て教主となすべく熟議を凝らし、着々実行の歩を進めてゐた。谷口熊吉も無論共謀者であつた。勝に乗じて心驕るは凡夫の常、福島は日に日に狂的行動を加へて来るが、足立、谷口、四方、中村等は深い計略の各自にある事とて少しも之を制止せず、却て煽動するばかりで始末におへなくなつて来た。要するに穴太から喜楽がやつて来て神懸を始めたから、こんな狂乱が出来たのだと云つて喜楽を失敗せしめ、且霊学の弊害を一般に認めさせ、喜楽の立退きを余儀なくせしめんとの策略であるから堪つたものでない。たまたま修業者の一人なる村上房之助が少しく覚醒して福島の乱暴を改めしめやうと自分が審神者に着手したが、一つ二つ問答の末、福島虎之助は答弁に苦しみ、直ちに立ち上つて、
福島『こりや村上の奴、生意気な事を申すな。此方は理屈は嫌ひだ。それよりも実地の神力を見せてやらう』
と云ふより早く、村上の首筋をつかんで蛙を投げる様に、二三間先へ投げつけて了ふた。村上も真蒼の顔になつて低頭平身只管に謝つてばかり居る。福島は荒れに荒れ、狂ひに狂つて、今度は中村や四方の手にもあはなくなつて了つた。淵垣の駐在所から巡査が出張して来て、愚図々々と小言を云ふので、例の何方へもつく愚直爺の祐助が綾部へ飛んで来て神懸の鎮定を歎願する。見るに見かねて喜楽は鎮圧の為め出張せむとするや、教祖はこれを聞いて、
教祖『先生一人では邪神の群へ行く事はなりませぬ。澄子を連れて行つて下さい』
との言葉に従ひ、自分は澄子と祐助と三人づれにて上谷の修行場へと駆つけた。行つて見れば、福島を始め一同は家中を暴れ狂ひ、
福島『艮の金神の神力は此通りだ』
と云つて始末がつかぬ。足立も谷口も四方も手品の薬が利きすぎて、案外猛烈な狂乱的憑霊に畏縮して了ひ、家の隅に小さくなつて震ふて居る。福島は村中に響く様な大きな声で、
福島『三千世界一度に開く梅の花、艮の金神の世になりたぞよ。須弥仙山に腰をかけ鬼門の金神此世の守護を致すぞよ。大の字逆様の世になりたぞよ。此福島寅之助は世の変り目に神の御用に立てるために三千年の昔から世に落してかくしてありた結構な身魂でありたぞよ。けれども神が世に落して化かしてありたから今の人民は侮りて居るぞよ。結構な身魂ほど世に落してありたぞよ。牛の糞が天下をとると申すのは今度の譬えであるぞよ。神が表に現はれて善悪の立替を致すぞよ』
と筆先の真似をして、朝から晩まで連続的に叫び乍ら荒れ狂ふてゐる。足立を始め其他の役員神懸りは、平生から筆先の聞きかじりを覚えて居るから、今の福島の憑霊の言葉を聞いて、真似をして居るものとは思はず、誠の艮金神に相違ないと固く信じて居るから堪らぬ。福島は喜楽の顔を見るなり、
福島『サア又上田が来たぞよ。皆の眷族共、上田を調伏致して改心させねばならぬぞよ。今に神が懲戒を致してアフンとさして見せるぞよ。おちぶれ者を侮る事はならぬぞよ。結構な方を世に落して結構の御用をさしてありたぞよ。其御方と申すのは出口直ではなかりたぞよ。福島寅之助でありたぞよ。サア一同の者よ、上田を早く叩き出して了へよ。神界の仕組の邪魔になるぞよ』
と命令をする。一同は一生懸命に喜楽の前に立ち塞がり、両手を組んでウンウンと力一杯息をつめ鎮魂で縛らうとしてゐる、其可笑しさ。何程ウンウンと気張つても喜楽の体はビクともせない。一同は一生懸命になつて益々ウンウンを続けて居る。そこへ澄子が現はれてウンと一息呼吸を込めて睨むと、二十余人が一時にバタバタと将棋倒しになり、身体強直して動けぬ様になつて了つた。足立、中村、四方春三の三人は顔色を蒼白に変じ、許しを乞ふ事頻りであつた。澄子は只一言、
澄子『改心すれば許す』
と言つた言霊の妙用忽ち現はれ、一同は元の体に帰つた。これに驚いて村上房之助、野崎篤三郎は何処ともなく姿を隠し、三日も四日も帰つて来ない。そこで二人の行衛が知れぬと云つて大騒動が持ち上つた。上谷の修行者一同は残らず綾部の広間へ帰つて来た。村上と野崎の両親が非常に立腹してつめかけ、
『一体私方の掛替のない大切の息子を全気狂にして了ふた挙句、行衛も知れぬ様になつたのは足立サンや中村サンが行き届かぬとは云へ、もとは上田サンが出てきて神懸だ等と申して、狐や狸を大切の息子に憑けたからぢや。さあ今此処へ息子を出して返して呉れ。万々一池河へでも身を投げて死んで居つたら如何して下さる。さあ早く返答を聞かせ。もう了見ならぬ』
と大の男が目を剥いて睨みつける。喜楽は黙然として暫し考へ、
喜楽『御心配は入りませぬ。只今お目にかけて安心さして上げます』
と言葉の終るや否や、村上房之助は生田村の旧神官福林安之助氏を伴なひ、意気揚々として帰つて来た。福林が大本の忠実な役員となつたのはこれが動機である。次に野崎は志賀郷村字西方の竹原房太郎を伴ひ帰つて来た。竹原はもとから綾部金光教会の古い世話方であつたが、金明会へ入会した動機もこれが始めであつた。さうして福島は一先づ八木へ立ち帰る事となり、後は喜楽、澄子の二人が審神者となり何れの神懸もよく鎮まりそれぞれの神徳を受け、金明会は一先づ治まり、反対者も我を折つて教祖や喜楽の指図に服する事となつた。
(大正一一・一〇・一六 旧八・二六 北村隆光録)
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