レーブとタールは急な谷川になかなか降りられず、十町ばかり下手の浅瀬に下りて、そこからようやく五六丁ばかり上って三人(ハム、イール、ヨセフ)を探した。
二人は女の身ながら恐ろしい巡礼だと警戒を新たにしながら、三人を捜索した。見れば、三人とも川岸の真砂の上に体をうずめて横たわっていた。そしてヨセフとイールを介抱し始めた。
大将格のハムは普段からよほど部下に嫌われていると見えて、レーブとタールは悪口をたらたら言いながら、一向に助けようとしない。ハムは自分でウンウンウンと唸りだした。
ハムは起き上がり、レーブとタールが自分の悪口を言って助けようとしないのを一部始終聞いていたのだと二人を叱りつけた。レーブとタールは驚いて、介抱していたイールとヨセフをその場に置いて逃げてしまった。
ハムは残されたイールとヨセフを蘇生させようと介抱したが、両人は目を覚まさない。そこへ宣伝歌が聞こえてきた。ハムは三五教の宣伝使が歌う、バラモン教調伏の宣伝歌を聞いて肝をつぶし、イールとヨセフを置いてこれまた逃げてしまった。
ハムが血を流しながら逃げる姿を谷道から眺めた照公は、照国別に谷川で何やら事件が起きたらしいことを告げた。照国別は谷底を眺めて様子を探るすべを考えている。