谷道の傍らの森に、古ぼけた祠があった。レーブとタールはその後ろに隠れて、先ほどの災難についてひそひそ話にふけっている。そこへ、息をはずませてハムが祠の前にやってきた。
ハムは、二人の女に投げられた災難を吐露し、レーブとタールが自分を助けるどころか悪態をついて放置していたことに怒りを表した。
ハムは、そのあと聞こえてきた宣伝歌から三五教徒がの応援が来たと思い、その恐ろしさを祠の前に訴えた。そしてもう体が動かくなったと嘆き、バラモン教の神に助けを乞うた。
河鹿川の谷底から立ち上った霧にあたりは包まれ、一足先も見えなくなってしまった。レーブとタールはハムが弱音を吐いて参っているのをからかってやろうと、霧を幸い祠の下から這い出した。
タールとレーブは、黄金姫と清照姫の声色を使って、鬼の母子を演じ、ハムを震え上がらせた。ハムは恐ろしさに思わず、霧の中の声に向かって命乞いを始める。
二人が鬼の母子の真似をしてハムをなぶっていると、山おろしに霧は払われて、三人の姿ははっきりをわかってきた。ハムは、レーブとタールが自分をからかっていたことがわかり、怒りに足腰の痛みも忘れて立ち上がった。
レーブとタールをそれをみて、細谷道を命からがら逃げて行った。