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文献名1霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻
文献名2第1篇 恋雲魔風よみ(新仮名遣い)れんうんまふう
文献名3第4章 珍客〔1088〕よみ(新仮名遣い)ちんきゃく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-11-27 10:10:28
あらすじ
午前の五つ時、鬼熊別の館の前に石生能姫が現れて門番に門を開けるよう急き立てた。門番の注進によりやってきた熊彦は、一目見てそれが石生能姫であることを認めた。そして慌てて鬼熊別の奥殿に通した。

鬼熊別は、熊彦に伴われて石生能姫がやってきたことに驚きを隠せなかった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年11月01日(旧09月13日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年5月25日 愛善世界社版44頁 八幡書店版第7輯 434頁 修補版 校定版45頁 普及版21頁 初版 ページ備考
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本文  鬼熊別の館に午前の五ツ時、妙齢の美人が深編笠を被り、面を包み門前に現はれた。これは読者の耳には新たなる石生能姫たることは間違ひのない事実である。石生能姫は涼しき細き声にて、
『もしもし門番さま、一寸此門をあけて下さい。早く早く』
とせき立てる。門番の朝寝坊は漸く起き上り、まだ手水もつかはず、寝ぶた目を擦つてゐた所であつた。
『エー何だ。やもめの御主人の家へ、なまめかしい女の声で「もしもし門番さま、此門をあけて下さい。早く早く」なんて馬鹿にしてけつからア』
と云ひながら門の節孔から一寸外を覗き、
『やあ何だ。深編笠を被つてゐるから、どんな御面相か拝見する事は出来ないが、あの姿のいい事、花顔柳腰とは此事、「窈窕嬋娟たる美人門を叩いて恋しの君を訪ふ」と云ふ幕だな。家の主人も余程堅造だと思つたが、こんな代物が訪ねて来るとは油断のならぬものだ。三五教が世が変るとか何とか云つてるが、本当に、こんな事があると世が変るかも知れない。どれどれ開けてやらうか』
と起き上らうとする。一人の門番は寝そばつたまま、
『オイ捨公、無暗に此門をあけちやならないぞ。夜前、遅う家老職の熊彦様が俺を呼んで、此門は寝ずに警戒して居れ。まして此二三日は特に注意しろと云ひ渡した。トツクリ調べてからでないと無暗に開けてはならないぞ。捨公、すてておけ』
捨公『それでも権さま、あんな立派なシヤンが鈴の様な声で頼んで居るのだもの、これが開けずにをれようかい。男なら又剣呑と云ふ案じも要るが、あんな繊弱い女一人位、門を通してやつた処で剣呑な事があるものか。あまり取越苦労をせないでも俺はもう堪らぬ様になつた。開けてやるわ』
権公『待てと云つたら待たぬかい。上官の命令に服従せぬか』
『上燗の命に服従して昨夜も余程酔払つたぢやないか。お前は、あれほどの上燗を「こりや、一寸熱燗だ」なんて、人に燗させやがつて、あつかましい叱言ほざきやがつて、二日酔で肝腎の使命を忘れやがつて頭も上らぬ癖に、何俺の職権を干渉するのだ。俺は俺の特権を以て開門するのだ』
とふりきつて行かうとするのを、権公はグツと引き戻し、
『待て待て、俺が一つ調べてやらう』
『こりや着物が破れるぢやないか。お前等の様な荒くれ男に袖を引つ張られても、根つから葉つから勘定が合ひませぬわい。同じ引かれるならあのシヤンに引つ張つて破つて貰ふわい……ヘヽヽヽやア、ぼろいぼろいぼろけつぢや。これだから門番は止められぬと云ふのだよ。あのスタイルでは随分美人だらう。あの風体の高尚、言辞の尽すべき限りに非ずと云ふ代物だ。エヘヽヽヽ』
 権公は委細構はず門戸の節孔から外を眺め、
『ヤア此奴ア大変だ。ウツカリ開ける事は出来ない。どうも合点の行かぬ風体だ。そしてどこかに見覚えのある風体だ。兎も角、御家老様に伺つて来る迄此処に待つて居てくれ。それまで決して何程外から請求しても開けちやならないぞ』
と言ひすてて奥をさして権公は駆け出した。門の外より、
『もしもし門番さまエ、ジレツタイ、早く開けて下さい。鬼熊別様に折入つて急ぎの用があるのだ。サア早う早う、人に見られちや大変だから』
捨公『何、人に見られちや大変だと、愈以て怪しいわい。然し無理はない。家の御主人も奥様の行衛は知れず、たつた一人のお嬢様も永らく何処へお出で遊ばしたか行衛は知れず、こんな立派なお身の上になつても唯一人空閨を守つてゐらつしやるのだから、感心なお方だ……と思うてゐたが、矢張何処かへあんなものが囲うてあつたものと見えるわい。油断のならぬ御主人だ。磁石が鉄をひきつける様に何と云つても男と女とは遠いやうで近いものだな。エヘヽヽヽ、もしお女中さま、あなたの腕前は大したものですな。私も木石漢ではありませぬよ。チツとは恋を語る資格のある男、そんな粋の利かぬ、私ぢや厶いませぬわい。当家の家老の熊彦といふ不粋の男や権助の門番奴が無茶苦茶に糊付物の様に固ばりやがつて「此門は許しがなけりや勝手にあけちやならないぞ」なんて吐しやがるのですよ。御主人だつてお前さまのやうなシヤントコセのシヤンがおいでになつても、心の中ではお喜びでも表向は故意と七むつかしい顔して「当家の主人は一人暮しだから女に用はない、一時も早く追ひ払へよ」なんて口と心と正反対の事を仰有る事はキマつた生粋だ。そこを御主人様とお前のために粋を利かしてやるのが、家の隅にも捨てておけぬ此捨さまだ。捨てる神さまもあれば拾ふ神もあると云ふ世の中に、拾ふばかりで一寸も捨てぬと云ふ捨さまだ。すつての事で此捨さまが居らなかつたならば権公の奴が、ゴーンと肱鉄砲をかまし、膠も杓子もなく榎で鼻を擦つた様な惨い挨拶でおつ放り出しでもされようものなら、それこそステテコテンのテンツクテンだ。さうなれば折角お前さまも「山野を越えて遥々と訪ねて来て捨てられようとは知らなんだ。エーもう捨鉢だ、捨てて甲斐ある吾命だ」と自暴自棄を起し、スツテに自害と見えけるが「アイヤ暫く待たれよ。死は一旦にして易し、死にたくば何時でも死ねる、死んで花実が咲くものか」と鼻の下の長い男が飛んで出る幕だが、此捨さまは捨身になつて、職を賭してもお前さまを通過さしてあげませう。あまり捨てた男ではありませぬぞや』
と捨台詞を振りまきながらガラガラと門を開いた。石生能姫は会釈もせず、ツツと門を跨げるや否や、捨公は小袖をグツと引掴み、
『まゝゝゝ待つて下さい。お前さま、何処の女郎衆か知らぬが、門番にこれだけ厄介をかけて心配をさせながら目礼もせず、御苦労だとも云はず這入らうとはあまり無躾ぢや厶いませぬか。卑しい門番だと思つて軽蔑なさるのか知らぬが、神様のお目から見れば人間として貴賤の別は御座りませぬぞや』
『ヤアこれは門番さま、済まなかつた。まア許して頂戴、さア早く鬼熊別のお側へ案内しや』
『案内を申上げたいは山々なれど、私には此門を守るだけの役で、大奥まで御案内する権限は厶りませぬ』
『何とまア、人種平等の唱へられる世の中へ頑迷固陋な御家風だこと……』
『これこれ女中さま、何仰有います。御無礼千万にも門口を這入るや否や御家風までゴテゴテ云ふ事が厶いますか。サア サア トツトと自由に奥へ行かつしやい。熊彦の家老が屹度居りませうから、それと交渉をした上、御主人様にトツクリと積る海山の話を遊ばし、久し振りに泣き満足をなさいませや』
『これ門番の捨とやら、お前は何と云ふ嫌らしい事をいふのだい。チと心得なされや』
『チヨツコと仰有いますわい。ヘン』
と鼻の先で笑つてゐる。そこへ羽織袴厳めしくバサバサと袴の音をさせながら権助を伴ひやつて来たのは熊彦であつた。熊彦は一目見るより腰をかがめ叮嚀に会釈し、
『あゝ貴女はイ……』
と云ひかけて、
『何処の御女中か知りませぬが、何卒奥へ御通り下さいませ。さア私が御案内を致しませう。オイ権助、捨造、門番を確かり致せよ。さア御案内致しませう。失礼ながらお先へ参ります。私の後について御出で下さい。主人もさぞお喜びで厶りませう』
といそいそとして石生能姫を伴ひ、館の奥深く姿をかくした。
捨公『オイ権、権さま、一体ありや何だい。家のレコぢやあるまいかな』
と親指と子指とを出して見せる。
権公『ウン』
捨公『(熊彦の声色)これはこれはハイ、貴女はイ……いやお女中さま、さぞさぞ御主人様がお喜びで厶りませう。サア私が御案内致しますから失礼ながらお先へ……なんて吐しやがつて、お竈の不動を焼木杭でたたかれた様な顔をしてゐる熊彦さまの顔の紐がサツパリ解けて了ひ、奥へ這入りやがつた時の態は見られたものぢやないな。男ばつかりの此館へ偶に女が出て来ると騒がしいものだ。万緑叢中紅一点だから、此お館もチツとは春めき渡るだろう。今迄はあまり陰気なものだから、此お屋敷の梅まで何となく陰気に咲き、鶯までがド拍子のぬけた鳴き声をしやがると思つてゐたが、これからは天国浄土が出現するだらうよ。アーア俺も俄に女房が欲しくなつて来たわい』
『ウフヽヽヽ馬鹿だなア』
『馬鹿は貴様の事だよ。あんなナイスを見てニツコリともせぬ奴が何処にあるかい。無情無血漢奴、恋の味を知らぬ人情を解せぬ奴だ。あゝ困つた奴と同じ門番をさせられたものだな。朝から晩まで酒ばつかり喰つて、お前は門を開くことと酒を喰ふことより芸がないなア』
とまだ昨夜の酒の残りが祟つて無性矢鱈に吐いてゐる。権助は物も言はず拳骨を固めて捨の頭を三つ四つカツンカツンと殴りつけ、悠々として門の傍の番所に帰り行く。
 館の大奥には宣伝歌が聞えて来た。
『バラモン教の御教を  開き給ひし常世国
 大国別の神様は  普く世人を救はむと
 心を尽し身を竭し  遠き海原乗り越えて
 筑紫の島やイホの国  埃及都に現れまして
 教を開き給ひしが  三五教の言霊に
 打ちはじかれて顕恩の  郷に数多の郎党を
 率ゐて世をば忍びまし  教の基礎を開く折
 フトした事より幽界の  神とはならせ給ひけり
 教司を初めとし  信徒等も悲しみて
 上を下へと騒ぎしが  鬼雲彦の神司
 漸う之を鎮めまし  自ら代つて後をつぎ
 大棟梁と自称して  大国彦の神霊に
 仕へ居たりし折もあれ  神素盞嗚大神の
 生ませる八人乙女等  太玉神の司等が
 又もや現はれ来りまし  生言霊を発射して
 きため給へば大棟梁  鬼雲彦を初めとし
 一同此処を立ち逃れ  天ケ下をば遠近と
 彷徨ひ巡りし悲しさよ  鬼雲彦と吾々は
 心を協せ力をば  一つになしてバラモンの
 再起を図りし甲斐ありて  空照り渡る月の国
 花咲くハルナの都にて  再び開くバラモン教
 七千余国の大半は  残らず教に帰順して
 稍安心と思ふ折  油断を見すまし曲津神
 大黒主の体に入り  神の司にあるまじき
 悪逆無道の振舞を  日に夜に勧め給ひつつ
 道を汚すぞうたてけれ  側に仕ふる悪神の
 輩の者に遮られ  二人の仲に溝渠をば
 穿たれたるぞ嘆てけれ  あゝ惟神々々
 バラモン教の厳霊  幸はひまして逸早く
 大黒主の身魂をば  払ひ清めて真心に
 かへらせ給へ惟神  神の御前に祈ぎまつる』
と一絃琴を弾きながら声も静かに歌ひゐるのは、此家の主人鬼熊別であつた。かかる処へ熊彦の案内につれて恥かしげに静々と入り来る女は石生能姫である事は云ふまでもない。
 熊彦は襖を押開け両手を支へ、
『旦那様、遥々と石生能姫様が只一人御訪問になりました。何事か起つたのでは御座いますまいか。何卒詳しくお話をお聞き下さいませ』
と云ひながら吾居間に下る。鬼熊別は一目見るより驚いて、
『よう、貴方は石生能姫様、どうして又お一人、拙宅をお訪ね下さいましたか。何は兎もあれ、そこは端近、先づ先づこれへお直りを願ひます』
『ハイ、突然お邪魔を致しまして申訳が御座りませぬ。左様なれば御免蒙りまして通らして頂きませう』
(大正一一・一一・一 旧九・一三 北村隆光録)
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