カルは際限ない枯れ野原を魔風に吹かれながら進んで行く。亡者の一団を見れば、レーブに谷底に放り投げられた男たちであった。
岩に腰かけて休んでいた男を見ると、レーブであった。カルは、どうやら共に幽界に来てしまったようだとレーブに話しかけ、生前バラモン神を信心していたのに、なぜこんなところに来てしまったのだろうといぶかった。
レーブは、自分のような英雄豪傑が若いのに死んだはずがない、お前たちが引っ張り込んだのだろうと軽口をたたく。
突然枯草の中から角を生やした恐ろしげな鬼が現れて、亡者たちを大喝した。しかし鬼はレーブとカルの二人だけには優しく接し、三途の川の岸まで案内すると申し出た。
他の亡者たちは赤と黒の鬼に責められて連れて行かれた。レーブとカルは、川辺の黄金造りの一軒家に案内された。レーブとカルはこの状況をいぶかしんでいる。
一人の少女が現れて二人を奥へ案内した。敷居をまたげて奥に入ると、外から見たのとは相違して、壁が落ちてむき出し、異臭がする小屋であった。奥座敷には、立派な衣装を着た美人が待っていて、御馳走を並べている。
二人は小屋の汚さ・むさくるしさと、美人と御馳走の取り合わせをいぶかった。女はここは三途の川で自分は鬼婆だと告げた。そしてさらに奥の間へ二人を案内するという。
二人がついていくと、ぼうぼうとした草原を進んで行く。女は、現界は表面ばかり立派にしているから、こんな家を建ててあるのだと毒づいた。
二人は女に連れられて、透明な水晶の家や汚い小屋を見せられた。女はにわかに白髪の婆になり、二人の首筋をとらえて幽界へ引きずり込もうとする。婆は、三途の川は三段に分かれており、上の激しい瀬を渡る者は現界に行き、真ん中の深い瀬を渡る者は神界へ、下の緩い瀬を渡る者は幽界へ行くのだ、と語った。
二人は婆を振り切って逃げだし、三途の川の中津瀬に飛び込んで向こう岸に泳ぎ着いた。