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文献名1霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻
文献名2第4篇 関風沼月よみ(新仮名遣い)かんぷうしょうげつ
文献名3第19章 月会〔1103〕よみ(新仮名遣い)つきあい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-12-05 12:54:14
あらすじ
沼の南では、黄金姫と清照姫が逃げていく八人のバラモン教との後姿を眺めながら、述懐の歌を歌っていた。

バラモン教徒たちが逃げて行ったあとから、馬に乗って沼を渡ってきたのは照国別の一行であった。黄金姫母娘は照国別に声をかけた。互いに挨拶を交わすと、ここまで来るに至った経緯をお互いに物語った。

レーブは母娘との再会を果たすと、谷底で気絶していたところを照国別一行に助けられた経緯を語った。

黄金姫は、レーブをお供に連れて行きたいと照国別に申し出た。照国別は、日の出別から黄金姫母娘には旅の途上で二人の良い供ができると聞いていたことから、カルとレーブを母娘に預けることにした。

照国別一行は、日の出別の命によりデカタン高原に出て霊鷲山に立ち寄り、近辺のバラモン教徒たちを言向け和すという。ハルナの都を目指す黄金姫母娘とは、ここで別れることになった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年11月04日(旧09月16日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年5月25日 愛善世界社版252頁 八幡書店版第7輯 510頁 修補版 校定版260頁 普及版116頁 初版 ページ備考
OBC rm4019
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本文  葵の沼の南岸に黄金姫、清照姫は沼の面を眺めながら、八人の悪者共の逃げ行く後姿の隠るるまで打眺めて居た。

黄金『沼の面にきらめき渡る月影を
  打ち砕きつつ逃ぐる醜神』

清照『いと清くすみ渡りたる月影も
  水におちては枉にふまれつ』

『水清き葵の沼の月影は
  再びもとの姿とやならむ』

『砕けたる月の姿も今暫し
  波をさまれば又照り渡る』

『空清く水底清き此沼を
  醜のしこ人掻き乱しけり』

『バラモンの月の都の大黒主の
  身の滅び行くしるしなるらむ』

『望の夜の月の光は月の国
  バラモン教のつきと異なり』

『此月の輝く見れば清照の
  姫の命の昔偲ばゆ。

 バラモンの醜の司が踏み砕く
  此月影は運のつきかな。

 運のつきとは云ふものの三五の
  教の道のつき影でなし。

 バラモンの月の都に螢火の
  光を投げし大黒主のつき。

 大御空雲に隠れて大黒の
  月の姿は見えずなりぬる。

 月も日も天津御空に輝やけど
  大黒主の雲にかくれつ』

『又しても沼の月をば砕きつつ
  此方に来る人影ぞ見ゆ』

『又しても醜の枉日の来るならむ
  天津御空の雲深ければ』

『望の夜の月影かくす黒雲の
  沼渡り来る枉人忌々しき

 刻々に近づき来る人影は
  先の八人の醜人ならむ

 向ふ岸渡りし処に照国の
  別の命の居ませしならむ』

『玉山の峠に現はれ攻め来る
  醜の片われ八つの醜人』

 斯く悠々と三十一文字を歌つてる処へ、又もや以前のキル、エル外六人は何者にか追はれたやうにバサバサと逃げ来る其様子の可笑しさ。今迄空に塞がつて居た黒雲はさらりと晴れて、又もや皎々たる月光は沼の面を照らし始めた。キル、エル一行は依然として母娘二人の此処に佇めるを見て打驚き岸にも得上がらず、道を左に取り、東の方面さして一目散に水中をバサバサバサと駆けて行く。続いて勢よく水をきつて馬に跨り来る物影がある。月の光に照らし見れば、どうやら照国別の一行らしい。四人は馬、二人は徒歩、次第々々に岸に向つて近づき来る。黄金姫は声をかけ歌ひかけた。

『天も地も葵の沼を渡り来る
  照国別の姿雄々しき』

清照『望の夜の月影こそは明けく
  照国別の司来ましぬ』

 照国別は此声に驚き、黄金姫母娘は此処に居ませしかと、馬上より声を張り上げて歌ひ返した。

『黄金の光にまがふ月影の
  清照姫はここに居ますか。

 望の夜の月は照国別の神
  神のまにまに渡り来にけり』

 斯く歌ふ間に馬は早くも岸辺に着いた。照国別一行はヒラリと馬を飛び下り黄金姫に向ひ会釈しながら、
照国『貴女は黄金姫様、清照姫様、不思議な所でお目にかかりました。随分途中は種々の困難事が起つたでせうな』
黄金『照国別さま、大変にお早う厶いました。貴方は馬上の扮装、吾々母娘は女の足弱で山坂を跋渉したものですから、一足お先へ出ながら到頭追つつかれました。後の烏が先になるとは此事で御座いますわ。ホヽヽヽヽ』
照国『どうも魔神の猛ぶ荒野原、御先頭にお立ち遊ばした貴女は大変な御苦労で厶いましたな。実は貴女方のお蔭であまりの障害もなく、ここ迄やつて来ました。清照姫様もお元気で結構で厶います』
清照『ハイ有難う。随分脾肉の嘆に堪へないやうな事が屡々厶いましたが神様のお諭しにより、無抵抗主義をとり、ここ迄来ました。実に惜しい事が幾度も厶いましたよ』
照国『なるほど、私もバラモン教であつたならば随分暴れて来たのですが、本当に残念な事でした。然しこれが却つて神様の御経綸、五十や百の小童子武者に武力を示した処ではづみませぬからな』
清照『照国別さま、今晩はここで母娘二人が満月を浴びながら一宿を試みて居りますと、バラモン教の連中が此沼を渡つて慌しく逃げ来り一寸手向ひを致しましたので、生命さへ取らねば神様の御神慮にも背くまいと思ひ、睡け醒しに八人を此沼へとつて投げた処、思うたよりは弱い奴で、バサバサバサと真北を指して沼の中をもと来し道へ引返しました。其時の狼狽さ加減随分見物でしたよ。暫くすると又もや其連中が鯨におはれた鰯の様に先を争うて逃げ寄せ来り、二人の姿を見るより直に沼の中を東へとり、只今逃げ散つた処で厶います。まるつきり彼奴等は水鳥の様な奴ですよ。オホヽヽヽヽ』
照国『あれ位困つた奴はありませぬわ。玉山峠を通る折、一匹の狼現はれ春公の袖を啣へて放さないので、狼によく云ひ聞かし其後へついて行つて見れば、谷底に此レーブ、カルを始め八人のバラモン教の小童子武者共が人事不省になつて倒れて居るので、色々と介抱をし命を助け、此沼の北岸迄やつて来るとズツポリと日が暮れましたので、一同そこで蓑を敷き寝に就きました。さうすると夜中時分に八人の奴、吾々の寝息を考へ縛り上げようと致すので素知らぬ顔して其綱をとり、レーブに一々酸漿をつないだやうに彼等の知らぬ間に首に綱をソツとかけさせおき、一寸しやくつて見た処、忽ちウンウンと苦悶を始めドタンバタンに暴れまはるので、余り可愛相だと思ひ綱を解いてやると、蛙突這になつて謝りながら此沼へ八人連れ飛び込み、南をさして一目散に逃げて行つたと思へば、又しても怖しく元の処へ帰つて来る。彼等は再び自分の姿を見て又南をさして駆け出しよつたのです。彼奴等は水鳥の進化した奴と見えますわい。アハヽヽヽヽ』
黄金『ホヽヽヽヽ』
清照『レーブ、お前も矢張谷底で気絶して居たのかい。私は又何処へ逃げて行つたのかと思つてゐたのだ。まあ神様のお蔭で助けられて結構だつたのう』
レーブ『はい有難う厶います。到頭気絶致しまして三途の川を渡り、天国の道中を致して居りますと、向ふの青々とした山の上からレーブ レーブと呼ぶ方がある。私は此処に居る、貴方にとつて放られたバラモンの部下カルと共に、其声のする方へ一目散に走らうとした途端、気がついて見れば玉山峠の下に肩骨をぬき倒れゐましたのを照国別様一行に助けられたので厶ります。カルも其時同じく助けられ、今逃げて行つた八人の奴も命を助けて貰ひながら、其大恩を忘れて右の如き怪しからぬ振舞に及んだので厶ります。実に人間の心ほど悪いものは厶りませぬ』
黄金『照国別様、よくまあ、レーブを助けてやつて下さいました。此男は鬼熊別様に仕へてゐる忠実な男で厶いますから、神様の思召に違ふか知りませぬが、下僕として旅行に連れて歩かうかと思ひますが、どんなものでせう』
照国『それは誠に好都合です。貴女も女二人きりでは大変不便でせう。その事に就て私も一寸日の出別様に誰かお供をお命じになつたらどうですかとお尋ねした処、日の出別様は首を左右にふつて仰有るには、決して心配は要らぬ、御両人は途中に於て屹度二人のよい供が出来ると仰有いました。只今になつて考へて見れば、日の出別神様の天眼通には実に驚嘆致します』
黄金『貴方は之からどちらのお道をおとりになりますか』
照国『私は此沼の縁を伝つてデカタン高原へ出て、イドムの国からヤスの都へ渡り霊鷲山に立寄り、バラモンの処々の神司を言向和せとの日の出別様の御命令なれば、直様にハルナの都に参る訳には往きませぬ』
黄金『あゝさうでしたか。私はこれから右へとり、フサの国を横断し、タルの港へ出て海上をハルナの都へ進む積りで厶います。何卒気をつけておいで下さいませ』
照国『左様ならばここでお別れ致しませう。何卒レーブ、カルの両人を御厄介ながらお願ひ致します』

黄金『いざさらば照国別の神司
  名残惜しくもここにて別れむ』

清照『照国の別の司を初めとし
  照、春、梅の司と別れむ』

照国『黄金の姫の命や清照の
  姫の司よ安く行きませ。

 惟神神の恵の深ければ
  フサの海原も安く渡らむ』

照公『月の色は黄金色に輝きて
  清照姫の野辺を行きませ』

梅公『大野原月の光を浴びながら
  母娘二人は安く行きませ』

春公『左様なら黄金姫や清照の
  姫の司よレーブ、カルさま。

 一日も早くハルナの都まで
  無事に行きませ神のまにまに』

 此処に照国別一行四人と黄金姫一行四人は東西に袂を別ち、各命ぜられたる道を伝うて征途に登り行く。
(大正一一・一一・四 旧九・一六 北村隆光録)
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