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文献名1霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
文献名2第1篇 天空地平よみ(新仮名遣い)てんくうちへい
文献名3第1章 入那の野辺〔1105〕よみ(新仮名遣い)いるなののべ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-08-22 18:31:50
あらすじ
入那の国のヨルの都に向かう途中の田舎道で、黄金姫と清照姫の二人は忽然と森蔭に姿を隠してしまった。カルとレーブは宵闇の中、二人を探してさまよっていた。

二人は、黄金姫と清照姫は神格者だからと思い直して跪坐し天地の神明に祈願をこらした。どこからともなく中空から声があり、黄金姫と清照姫は二三日神界の御用に使うから、一足心配せずに先に入那の都を行くようにと伝えた。

両人は安心して四方山話に花を咲かせ、夜を明かした。二人は七八人の男たちに取り囲まれていることに気づき、わざと大声でバラモン教徒であることを示す話をした。

男たちは、入那の国のセーラン王の左守・クーリンスの家来たちであった。二人は、自分たちは黄金姫と清照姫の行方を知っていると語り、入那の都へ一緒に行くことになった。

そこへテク、アルマ、テムの三人が現れて、一行の前に来ると道にへたばってしまった。一行は三人を介抱した。テクは正気付くと法螺を吹いてでたらめな報告をする。一行は総勢で左守の館を目指して進んだ。
主な人物 舞台イルナの森(入那の森) 口述日1922(大正11)年11月10日(旧09月22日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年6月15日 愛善世界社版11頁 八幡書店版第7輯 533頁 修補版 校定版11頁 普及版4頁 初版 ページ備考
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本文  木枯すさぶ秋の空  野辺の木草も黄金姫の
 神の命の神司  四方に清照姫命
 レーブやカルを従へて  天津日の神西山に
 入那の国の小都会  ヨルの都へ進み行く
 暗の張はおろされて  森の小烏がやがやと
 鳴く音も寂しき田圃路  脚下みたり四人が
 こころいそいそ進み行く  忽ち森の木蔭より
 現はれ出でし黒い影  母娘二人を引抱へ
 暗に紛れて何処となく  足音忍ばせ矢の如く
 忽ち姿を隠しけり  レーブとカルの両人は
 母娘の姿の消えしより  打驚きて忍び足
 声もひそかに彼方此方と  宵暗の空すかしつつ
 力泣く泣く探しゆく。
レーブ『オイ、カル、困つたなア、こんな処でお二人様を見失ひ、どうしてハルナの都の鬼熊別様に申訳が立つものか。われわれ両人は草を分けてもお後を慕ひ、その御在処を尋ねて、御主人様にお渡し申上げねばならぬぢやないか』
カル『そりや貴様の言ふ通りだ。吾々も斯うして依然として手を束ね惟神に任すと云ふ訳には行かないなア。神界旅行の際にも生魂姫命様から惟神中毒をしてはならないといふことを大変に戒められたのだからなア』
『オイ、カルよ、熟々考へて見ると黄金姫様、清照姫様は吾々から見れば幾十段とも知れない神格者でもあり、神様の直接の御神力を戴いて居られるのだから、余り心配は要るまいと思ふよ。併し乍ら此の儘放任して置く訳には行かないから、吾々としてのベストを竭して見ようぢやないか。あの黒い影は、どうやら狼か獅子の群のやうだつたが、それならば吾々は、決して心配は要らない。御両人様には狼が守護して居るのだから大丈夫だよ』(狼、獅子は皆比喩なり。蔭武者又は強者の意)
『何は兎もあれ、神様に祝詞を奏上して、御両人様の御無事を祈ることに致さうぢやないか』
『アヽそれが善からう』
と茲に両人は森蔭の暗に跪坐して天地の神明に祈願を凝らし、夜の明くるを待つこととせり。何処ともなく空中に声あり、
『レーブ、カルの両人、必ず心配致すに及ばぬ。黄金姫、清照姫は神の都合に依つて二三日の間神界から御用に使うて居るから、汝は明朝未明にここを出立いたして入那の都へ一足先へ参れ。母娘両人は後より追付くべければ、両人に心配なく今夜は此処で夜を明かしたが宜からうぞよ』
と雷の如き声聞え来る。両人はこの声こそは全く天声なり、神の御示しなりと、喜び勇み森の大木の根に腰打ちかけて、四方山の話に夜を更かし、取留もなき雑談の花を咲かしつつありけるが、レーブはそろそろカルに向ひ揶揄ひ始めたり。
『オイ、カル、貴様は大切な女房に肱鉄の乱射を浴せかけられた挙句の果は、近所のセムの背虫男に横奪りされたといふ評判を薄々聞かぬでもないが、其後どうしたのだい。あの儘に泣き寝入りらしいが、それではカルの男振も駄目ぢやないか。何故貞操蹂躙の訴訟を提起せないのか』
『ソンナ事が何ぼ何でも男として出来るものかい。貞操蹂躙の訴訟は女からするものぢやないか』
『女に限つて貞操蹂躙の訴へを起すことを得た時代は、今後三十余万年後の廿世紀の体主霊従の時代の事だ。今日は最早廿世紀より三十余万年の過去の神代だ。男子だつて貞操蹂躙の訴訟が提起出来ない道理があるかい。貴様は未来の法律のみに迷従して、現代の法律を忘れて居るのか、アーン』
『それでも婆羅門教では女子の貞操といふことはあるが、男子の貞操といふ事は聞かないからのう』
『婆羅門教では教主の大黒主さまから一夫多妻主義ぢやから、婦人は丸切り機械扱ひにされて居るやうなものだよ。婦人の立場として貞操蹂躙の訴へでもする権利がなくては堪らないからだよ。然し一夫一婦の道を奉ずる三五教では妻の方から貴様の女房のやうに夫を捨て他の男と情を通じたり、夫を盲目にしよつた時は、男だつて矢張貞操を蹂躙された事になるのだ。男の方からその不貞腐れの女房に対して、貞操蹂躙の訴訟を提起するのは当然だ。女ばかりに貞操蹂躙の訴訟権があるのは未来の廿世紀といふ世の中にて行はれる制度だ。併し婆羅門教は文明的進歩的宗教だと見えて、三十五万年も凡ての規則や行り方が進歩して居るわい。アハヽヽヽヽ』
『さうすると、鬼雲姫様は永らく夫の大黒主様と苦労艱難して、彼処までバラモンの基礎を築き上げ、ヤレもう楽ぢやといふ間際になつて、大黒主さまから追出され、其後へ立派な若い石生能姫さまを女房に入れられて、自分は年を老つてから、アンナ残酷な目に合されて居ながら、何故貞操蹂躙の訴訟を提起なさらないのだらうかなア』
『そこが強食弱肉の世の中だよ。大黒主さまより上のお役もなし、之を制御する法律もないのだから、是計りは致し方がない。司法、行政、立法の三大権力を握つて居るのが大黒主だから、これを制御し懲戒する権利ある者は大自在天様より外にはないのだ。思へば下の者はつまらぬものだよ。鬼雲姫様は随分お道の為には沐雨櫛風、東奔西走して、漸くあれだけの土台を築き上げ、今一息といふ所で放逐とは余り残酷ぢやないか。それだから婆羅門教は無道の教団だといふのだ。是が○○教であつたら大変ぢやないか。部下の宣伝使や信徒が承知せないからなア』
『それでも三五教の神柱神素盞嗚尊様は一夫多妻ぢやないか。八人同じやうな年配の女の子があつたぢやないか』
『神素盞嗚尊様は月の大神様ぢや。元より女房はない。八人乙女の出来たのは肉体の御子ではない。霊魂の美はしき乙女を八人も方々から拾ひ集めて、その乙女の霊魂に対し自ら厳の御息を吹きかけて我子と為したまうたのだ。吾々のやうに暗がりで夫婦が拵へたのとは違ふのだ』
『それならあの八人乙女を生んだ肉体の親はあるだらうな』
『ソリアあるとも、併し乍ら八人乙女とも皆捨児を拾つて自分の子に遊ばしたのだから、両親は尊様には御分りになつて居ても、八人乙女の方では矢張真の父上と思つて居られるやうだ。肝腎要の御精霊を分与されて居るのだから、仮令肉体の児でなくとも肉体以上の近い親しい御児になるのだ。おれ達も矢張神素盞嗚尊様の孫位なものだ。今迄は大黒主の孫だつたが俺も今度いよいよ尊様の孫になつたのだ。貴様も昨日あたりから尊様の曾孫位になつて居るかも知れないよ』
『さうか、有難いなア、アヽ惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
 レーブ、カルの両人は森林に囀り始めた諸鳥の声に目を覚まし、あたりの明くなつたのに打驚いて、
『オヽ、カル、もう夜明けだ。よく草臥れてグツと一寝入りやつてしまつた。サア是から両人が力を合はして奥様等の所在の捜索しようぢやないか』
『さう慌るには及ばぬぢやないか。たつた今主人になつた所だ。言はば二日月さまのやうなものだよ………。現はれて間もなく隠るる二日月………そんな水臭い主人を捜した所で仕方がないぢやないか。来るものは拒まず、去る者は追はず式で此世を渡つて行かねば、何程石に根つぎをするやうな案じ方をしたつて、会ふ時が来な会はれるものぢやないワ。マアマア気を落付けて惟神に………オツト ドツコイ、此奴は言はれぬワイ………お目にかかる時を待つことにしようかい』
『貴様最早変心しかけよつたな。怪しからぬ奴だ。さういふ冷やかな根性で居ると、又今度は八万地獄へ真逆様に落ちるぞ』
『冷やかなといふが、晩秋初冬の境目だ。冷やかなのは当然だ。人は天地に習ふのが惟神ぢやないか。男心と秋の空、曇るかと思へば直に照る、照るかと思へば曇る、天地を以て教となし、日月を以て経とするのだから、貴様のやうな偽善者とは此カルさまはチツと違ふのだ』
『貴様は森で転寝をして居る間に、又もや大黒主の眷族共に憑依されたのだな。何程秋の空だと云つても、余りキツイ変り様ぢやないか』
『代と云ふ字はかはると書くから、刻々に変るのが世の中だ。道端の岩のやうに常磐に堅磐に動かなくては、世界の進歩も天地の経綸も出来るものぢやない。世の中は三日見ぬ間に桜哉………と云ふだらう。それが天地の真理だ』
『さうするとカル、貴様は大黒主の孫に逆転したのだな』
『別に逆転したのでも何でもないよ。鞘を抜き出た刀がキチンと元の鞘へ納まつただけのものだ。矢張俺はかうなつて来ると大黒主の方が偉いやうな気がするワイ』
『ハハア、さうすると貴様は黄金姫様、清照姫様が側にゐられる間だけは、野良犬のやうに尾を振つて居よつて、表面帰順を装ひ、お二人が何者かに攫はれて見えなくなつたので、又もやそんなズルイ考へを起しよつたのだなア』
『面従腹背、長いものにまかれるのが当世だよ。ウツフヽヽヽ』
『ハハー、此奴ア、ヤツパリ大黒主の眷族が憑依しよつたと見えるワイ。どうやら俺も大黒主気分になつて来よつたぞ。吾ながら吾の心がテンと善か悪か分らなくなつて来たワイ。それなら俺もこれから大黒主様に服従し、黄金姫母娘の所在を注進して、入那の国のセーラン王様の御前に手柄を立てようかなア』
と両人は目と目を見合はしながらワザと大声に呶鳴つてゐる。道端の草の中からムクムクと近よつて来た七八人の男、其中の頭と覚しき目のクルツと光つた、どこともなしに威厳のある男は、セーラン王の左守の司と仕へてゐるクーリンスの家来で、テームスといふ男である。
『今ここに於て様子を聞けば、其方等両人はバラモン教の大黒主様の御家来と見えるが、黄金姫、清照姫の所在を知つてゐるさうだが、吾々に言つてくれまいかなア。左守の司クーリンス様の命令に依つて、吾々は数多の家来を引連れ、黄金姫母娘がここを通過するとの或者の注進に依つて、土中の関所に待つてゐたのだ』
レーブ『ハイ、実の処は其黄金姫母娘に甘く取入り、入那の森まで何とか彼とか云つて連れて参り、セーラン王様に御手渡しして、王様の御手柄にしたいと存じ、イヤ王様の力を借り、共々に手柄をさして頂かうと思ひまして参りました処、狼の群が沢山やつて来て、二人を喰へてどつかへ参りました。併しながらこれには深い秘密があります。只今此処で申上げる訳には行きませぬ。クーリンス様の御前に於てハツキリと申上げますから、どうぞ案内して下さい』
『秘密とあらば強つて聞かうとは申さぬ。それなら入那の都まで案内するから従いて来て下さい』
『オイ、レーブ、甘くやつたなア』
と言ひかけて、俄に自分の口を押へ、
『イヤ、レーブ、甘いことになつて来たなア。吾々両人の手柄の現はれ時、アヽ勇ましし勇ましし、宝の山は眼前に横はつて来た様なものだ。モシ、テームスさま、吾々両人を大切にせなくちや、黄金姫母娘の所在は口を噤んで申しませぬぞや。吾々の口を開くか開かぬかに依つて、お前さま達や左守の司様の成功不成功が分るるのだから、御機嫌を損ねない様に特別待遇を願ひますよ』
『よくマア恩にきせる男だなア。エヽ仕方がない、余り威張られてもチツとは迷惑だけれど、クーリンス様の命令には代へられない』
レーブ『今は兎も角、何とでも云つて此奴等両人をたらかし、館へつれて帰るが最後、四方八方から槍襖の垣を造り、両人を否応なしに白状さしてやろといふお前さまの下心だらうがな。アハヽヽヽ』
『何と悪気のまはる男だなア。マアどうでも良い。来る所まで来てみなくては分らぬぢやないか』
カル『何せよ、騙し合ひの狸ばかりの世の中だから、このレーブだつてカルだつて、何を吐してるか分りませぬぞや。ウツフヽヽヽ本当のこと言へば、レーブ、カルの両人は、お前さま等の為にドテライ目に会はされるのが怖さに、三五教で居ながら俄にワザと聞えよがしに、お前さまが岩窟にゐるのを前知して喋つたのだから当にはなりませぬぞや。イツヒヽヽヽ』
 テームスは声を尖らし、
『コリヤ コリヤ両人、今からそんなことを申しても駄目だぞ。偽りを申すな、三五教だと云へば此テームスが驚くかと思うて、左様なことを申すのだろ。そんなことに一杯喰はされるやうな此方ぢやないワイ。自分の心の秘密を吾々に喋る奴があらう道理がない。貴様はヤツパリ、バラモン教の生粋だ。左様なことを申して此テームスやクーリンスに揚壺を喰はせ、直接セーラン王様の前に出て、自分等二人の手柄にしようと思ふのだろ。其手は喰はぬぞ』
と目を剥き出し呶鳴りつける。
『ハヽヽヽヽ、何が何だか、レーブもサツパリ混線してしまつた。それならマア黄金姫母娘の行方を知つてゐることにしておかうかい』
『ナマクラなことを申すな、正直に申上げるのだぞ。クーリンス様の前で今の様な訳の分らぬことを申すと、お赦しはないぞ』
『お赦しがなければなくていいワ。肝腎要の三五教の秘密や黄金姫の所在を申し上げぬまでのことだ。アハヽヽヽ、それよりも俺達が直接に大黒主様へ注進致したら、すぐに一国の王位にはして貰へるのだからなア、イツヒヽヽヽ、ボロイボロイ、甘い物は小人数で食へだから、こんな所で博愛慈善主義を振りまいて居つても、あまり引き合ないワ、のう、カル公』
『オイ、レーブ、いい加減に意茶つかしておかぬか、テームス様は吾々とは違つて左守の司様の秘書役だから、御機嫌をとつておきさへすれば、どんな出世をさして下さるかも知れないぞ。ねえテームスさま、さうでげせう』
『カルの申す通り、魚心あれば水心あり、水心あれば魚心ありだ。決して悪くは取計らはないから、安心して来てくれ』
『それなら一つ、どつと安心して、来て呉れてやらうかな。イヤ、テームスさま、何分宜しく御頼み致しやす』
『それなら、左守の司様も大変にお急きだから、サア急いで都へ帰らう』
 かく話してゐる所へ、テク、アルマ、テムの三人捻鉢巻をしめ、足腰の痛みも直つたと見え、大変な勢で、
『エーサツサ エーサツサ エーサツサ エーサツサ』
と掛声しながら通り過ぎようとする。テームスは之を見て、
『オイオイ、三人の奴共、暫く待てえ』
 此声に驚いて三人は立ち止まり、
テク『あゝテームス様で厶いましたか。余り急いだので、ここのお関所も気がつかず通り越さうと致しました。あゝ余り走つたので息苦しい、目がまはるのか天地が廻転するのか知らないが、貴方のお声を聞くにつけ、ガタリと気が弛んで参りました。どうぞ一つ背中を打つて下さいな。ハア ハア ハア』
と三人はグタリとなつて深傷を負うた軍人のやうに道の上にベタリと平太つてしまつた。
テームス『大声で呶鳴りつけ、叱りつけてやらねば気が弛んでは駄目だ。ヤア家来の者共、三人の気をつけてやれ』
 七八人の捕手はバラバラと三人の側に寄り、背中を打つやら、頭から水をぶつかけるやら、大変な大騒動をやつてゐる。漸くにして次々に正気づき、テクは息も苦しげに物語る。
『テームス様の仰せにより、吾々三人は猛獣荒ぶ荒野原を入那の森まで進み行く折しも、祠の中に怪しの物音、ハテ不思議と立寄り、様子を窺ひ見れば、当の目的物たる恐ろしき武勇の聞えある黄金姫、清照姫、それに従ふレーブ、カルの両人、吾等一行に打向ひ言霊戦を開始し、吾々三人は息ふさがり、足はなえ、腰を抜かして大地にドツと倒れ伏す、進退維れ谷まり居る折しも、雲押分けて現はれ来る大空の月の影、大自在天大国彦命、天馬に跨がり、悠々として入那の森近く下り給へば、流石の黄金姫、清照姫は其神徳に辟易し、雲を霞と南方指して逃げゆく可笑しさ。レーブ、カルの両人は、吾々三人が神徳に怖ぢ恐れ、ウンと一声其場に倒れ、敢なき最後を遂げにけり。かかる小童武者には目もかけず、黄金姫、清照姫の後を追ひかけ、ここまで来り候。母娘二人は既に既に此一筋道を通りしならむ、テームス様、キツと掴まへ遊ばしたで厶いませうなア。それさへ承はらば吾々三人は仮令此場で相果つるとも、決して恨とは存じませぬ』
と息もせきせき述べ立つる。
レーブ『オイ、テク、随分駄法螺を吹きよるなア。レーブさまもカルさまも貴様より一足お先に此処へ来て居るのだ。テームス様と万事交渉を遂げ、目出度く締盟の済んだ所だ、確かり致さぬか。其方は驚きの余り狂気致したなア』
『ヤア、貴様はレーブ、カルの両人か。何時の間に生返りよつたのだ』
カル『オイ、テク、何を言つてるのだ。ソリヤ俺の方から言ふべきことだよ。貴様こそ何時の間に生返つたのだ』
『あゝカルか、さうすると貴様はヤツパリ此方の味方だつたのかなア』
レーブ『見方に依つては味方でもあり、敵でもあるワイ。敵の中に味方あり、味方の中に敵のある世の中だ。自分の心の中でさへも敵味方の衝突が絶えず起つてゐるのだからなア。アハヽヽヽ』
 テームスは立ち上り、
『何は兎もあれ、左守の司様の館まで急ぐことに致さう』
 茲に一行十三人膝栗毛に鞭ちながら入那の都を指して進み行く。
(大正一一・一一・一〇 旧九・二二 松村真澄録)
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