イルナの国王セーラン王は、叔父で左守のクーリンスの娘ヤスダラ姫を許嫁としていたが、大黒主に取り入って勢力を増した右守カールチンは、無理矢理自分の娘を王妃にしてしまった。
ヤスダラ姫は外国の毘舎の娘に追いやられてしまっていた。王はそのことを思い悩んで落涙にむせんでいる。カールチンの娘サマリー姫は、王がヤスダラ姫のことを思い悩んで自分を嫌っていることから王と喧嘩し、狂気のごとく駆け出して実家に帰ってしまった。
クーリンスは王のところにやってきて、王が剛直なあまり短気を起こすとかえって右守の思うつぼになると諫言した。王はあくまでよこしまな勢力に屈するのは嫌だと決意を面に表す。
王と左守は不思議なことに、昨晩同じ夢を見ていた。北光彦の神という白髪異様の神人が現れて、鬼熊別の妻子が三五教宣伝使となってイルナの国を通るから、城に迎え入れればバラモン教の勢力に対抗できる、と示したという。
クーリンスは早速、黄金姫母娘を探すべく王の居間を去った。しばらくすると、右守カールチンの腹心ユーフテスが案内も通さずに王の間に入ってきて、王がサマリー姫と喧嘩したことをなじった。
ユーフテスは、すでにカールチンが大黒主に事の顛末を早馬で知らせたと言い、王に謹慎を迫った。王はユーフテスの横柄な振る舞いに怒り、カールチン一族を追放すると怒鳴りたてた。ユーフテスは王の権幕に怖気づき、すごすごと帰っていく。
次に、ヤスダラ姫の妹・セーリス姫が王のもとにやってきた。姫は、カールチンが王位を奪おうと、サマリー姫の件を大黒主に讒言したと伝えた。王は、カールチンの腹心ユーフテスが、セーリス姫に執心していると聞いて、姫に策を授けた。