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文献名1霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
文献名2第4篇 神出鬼没よみ(新仮名遣い)しんしゅつきぼつ
文献名3第20章 誘惑〔1124〕よみ(新仮名遣い)ゆうわく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-12-17 00:07:35
あらすじ
ユーフテスはただちにセーリス姫に、大黒主からの援軍が五百騎やってくることを注進した。黄金姫、清照姫、セーリス姫の三人の密談により、ヤスダラ姫に化けた清照姫が右守と会談し、その五百騎を食い止める算段をすることになった。

ユーフテスは策を授けられ、右守の館に帰っていく。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年11月12日(旧09月24日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年6月15日 愛善世界社版281頁 八幡書店版第7輯 634頁 修補版 校定版294頁 普及版134頁 初版 ページ備考
OBC rm4120
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本文  セーリス姫はイルナ城の吾居間に一弦琴を弾じて居た。
『天と地とを造らしし  国治立大神は
 百の神等人々の  誠の親にましまして
 仁慈無限の神徳を  遍く下し給ふなり
 イルナの城は日に月に  八岐大蛇や醜狐
 曲鬼共の蔓りて  首陀の姓より生れたる
 右守司のカールチン  鰻登りに登りつめ
 驕り傲ぶり今ははや  セーラン王の御位を
 狽ひ居るこそうたてけれ  イルナの城は風前の
 今灯火となりし時  救ひの神の現れまして
 傾く城を立直し  セーラン王の身の上を
 安く守らせたまひつつ  魔神の頭上に鉄鎚を
 下させ給ふ時は来ぬ  あゝ面白し面白し
 ヤスダラ姫の妹と  生れあひたる吾こそは
 イルナの城の太柱  非道の事とは知りながら
 魔神に従ふユーフテス  言葉の先に操りつ
 醜神共の企らみを  洩れなく落ちなく探らせつ
 神の御為君の為  世人のために村肝の
 心痛むる苦しさよ  さはさりながら天地の
 神は吾等の真心を  清き御目に臠はし
 必ず許したまふべし  佯られたるユーフテス
 彼が心の憐れさを  妾は知らぬにあらねども
 大事の前の一小事  セーラン王の勅
 背かむ由もないぢやくり  涙を呑みて荒男
 操り来る苦しさよ  あゝ惟神々々
 神が表に現はれて  善神邪神を別けたまふ
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 只何事も人の世は  直日に見直し聞き直し
 身の過ちは宣り直す  尊き神の御教
 セーリス姫の心根を  憐れみ給ひて逸早く
 セーラン王の身の上を  守らせたまへ惟神
 此世を造りし大神の  御前に畏み願ぎまつる
 御前に慎しみ願ぎまつる』
と歌を終り、合掌して声も静に「国治立尊、守り給へ幸倍たまへ」と祈る折しも、足音忍ばせながら入り来るはユーフテスである。セーリス姫はユーフテスの慌しく入り来りしを見て、言葉急しく、
『ヤア其方はなつかしきユーフテス殿、何か変つた事が厶いますかなア』
『ハイ、俄に申上げたき事があつて右守の神の前をつくろひ参りました。いよいよ大黒主の神が五百騎の軍隊を派遣し、右守と力を合せ、セーラン王様を退隠させむとの計略が整ひました。何とか用意を致さねばなりますまい』
『其軍隊は何時頃此処へ押し寄せて参りますか、分つて居りませうなア』
『あまり長くはありますまい。カルマタ国へ派遣された大足別の所へ参る使者が往きがけに大黒主様の信書を携へ、右守の館へ放り込んで参りました。右守もやや安心して、もはや軍隊の必要がないから、お断り申さうかと迄云つて居ました処へ、五百騎の応援軍を送るとの書面を頂き、俄に鼻息が荒くなつて参りました。それ故取るものも取りあへず貴女迄報告にやつて来ました』
 セーリス姫は平然として些も騒がず微笑を浮べながら、
『それは段々と面白くなつて来ましたなア。どちらになつても、私と貴方の結婚さへ都合よく出来れば好いぢやありませぬか。オホヽヽヽ』
『そりやさうですが、矢張セーラン王様が押し込まれなさつては貴女だつてあまり都合はよくありますまい。従つて私だつて羽振りが利きませぬからなア』
『兎も角黄金姫様に一つ申上げて来ますから、貴方此処に待つて居て下さい』
とツと立つて黄金姫の居間に進み入り、ユーフテスが報告の顛末を残らず物語つた。茲に黄金姫は清照姫、セーリス姫と三人鼎坐して、ひそひそ対抗策を打ち合す事となつた。
『思ひの外大黒主の軍勢、早く押し寄せ来るさうだが、何とかこれを阻止する考へはあるまいかなア。清照姫』
と云ひつつ清照姫の顔を覗き込む。清照姫は微笑しながら、
『お母さま、そりや何でもない事ですわ。私が其五百騎を喰ひ止めて見ませうか』
『それは誠に結構だが、其方一人でどうして喰ひ止める考へですか』
『兎も角右守を此処へ呼んで下さい。さうして私と右守と只二人、一室に入つて密談を遂げ、うまく右守より喰ひ止めさして見せませう』
 黄金姫は肯きながら、
『ホヽヽヽヽ清さま、お前の美貌と弁舌とを応用すれば何の事もありますまい。どうぞ確りやつて下さいや』
『三寸の舌鋒をもつて、五百の軍隊を一人も残らず逐ひ散らすのも亦愉快でせう、オホヽヽヽ』
 セーリス姫は喜ばしげに、
『それならこれからユーフテスに命じ、右守を当城へ呼び寄せませうか』
清照『どうぞ早く、其手続きをして下さい』
『こんな時にはお転婆娘も亦必要だ。清さまも随分こんな事には経験がつんで居るからなア。オホヽヽヽ』
『お母さま、冷かして下さいますな。何ぼ秋だと云つても余りですわ』
『セーリス姫様、何卒早く頼みますよ』
 セーリス姫は「アイ」と答へて此場を下り、吾居間に待たせて置いたユーフテスの耳に口を寄せ何事をか囁いた。ユーフテスは一切万事呑み込み顔で、セーリス姫の居間を立ち出で表に出で、大地をどんどん威喝させながら、木々の梢を渡る木枯の風、遠慮会釈もなく笛を吹いて通る城の馬場を尻引からげ、矢を射る如く右守の館をさして韋駄天走りに進み行く。
(大正一一・一一・一二 旧九・二四 加藤明子録)
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