右守はいい機嫌で歌を歌いながら城への道を歩いていると、セーリス姫と白狐におどかされて逃げてきたユーフテスに突き当てられ、道の真ん中に倒れてしまった。
カールチンは怒って怒鳴りつけた。ユーフテスはこの声に、突き当たったのが右守であることを覚った。ユーフテスは白狐におどかされて意味のわからないことを右守に報告している。
カールチンはユーフテスが肘鉄を食わされたのだろうと意にも留めずに城に行こうとするのを、しがみついて止めた。とうとう止めきれずに手を放したとたんに、カールチンは勢い余って小栗の森に飛び込んだ。
この森にはイルナの城に仕えて居た先祖の墓があった。カールチンは石塔に頭を打って倒れてしまった。
気が付くと、あたりは夕闇となっていた。カールチンは石塔の後ろから狸に話しかけられ、追い払った。
やがて提灯をともしたヤスダラ姫が、小栗の森の墓場の道をやってくるのが見えた。カールチンは、大きな眼をした古狸ことをヤスダラ姫に話した。
ヤスダラ姫はこんな眼か、と大声を出した。カールチンが見ると、ヤスダラ姫の口は耳まで裂け、蛇の目傘のような目をむいていた。カールチンは驚いて闇の道をイルナの城門さして逃げていく。