右守のカールチンは墓場に迷い込み、怪物におどかされて卒倒した。目を覚まし、十五夜の月の光をたよりに、あくまでヤスダラ姫に会おうと宵闇の道を駆け出した。
入那川の橋までやってきた。いつもは濁っている川が不思議にもこのときは一丈あまりある川底まで透き通って見える。カールチンは思わず覗き込むと、妻のテーナ姫が水底をもがきながら流れてきた。
不意に背後にユーフテスが現れ、妻のテーナ姫をなぜ救わないのだ、とカールチンをなじる。川底のテーナ姫の叫び声は泡となって上ってきて、これもカールチンの不道徳をなじる。
するとヤスダラ姫も川底を流れてきて、テーナ姫と同じところに沈んだ。カールチンはヤスダラ姫は救おうと川に飛び込もうとする。
カールチンはユーフテスが止めるのを振り切って着衣のまま川に飛び込んだ。ユーフテスと見えた男は白狐の姿になってどこかへ行ってしまった。
右守館の守備ハルマンは、カールチンの帰りが遅いのを心配して探しにやってきた。イルナ川の橋まで来ると、川底から浮き上がってくる影があるので飛び込んで救い上げれば、主人のカールチンであった。
カールチンは気が付き、ヤスダラ姫はどこだと問いかける。ハルマンはそんな人はいないと答えてカールチンを抱えて館に戻った。