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文献名1霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
文献名2第1篇 仕組の縺糸よみ(新仮名遣い)しぐみのれんし
文献名3第2章 慰労会〔1212〕よみ(新仮名遣い)いろうかい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-03-08 19:49:17
あらすじ
松彦と松姫は、出て行った四人が早く帰るようにと大広間で祈願をこらしていた。二人が教主館まで帰ってきたところ、一行七人が帰ってきた。

松彦と松姫は別館にて蠑螈別とお民が帰ってくるように祈ろうと言い、一同は慰労会を開いて休むようにと言い残して去って行った。お寅と魔我彦は迷信家のこととて、神への祈願で蠑螈別とお民がすぐに戻ってくるものと信じて、しきりに酒を飲んでいる。万公と五三公は酔って労働や恋愛についての議論を交わした。

お菊と万公が歌をうたい、皆ではやし立てる。五三公は歌を所望され、宣伝歌を歌った。最後は一同が脱線歌を歌いながら、いつのまにか夜を明かしてしまった。数多の参詣者はぞろぞろと大広間を指して参拝する。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年12月15日(旧10月27日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年9月25日 愛善世界社版22頁 八幡書店版第8輯 368頁 修補版 校定版23頁 普及版9頁 初版 ページ備考
OBC rm4602
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本文  松彦、松姫はお寅婆アさま、魔我彦、蠑螈別などの早く帰り来れかしと、大広間に於て祈願をこらし、教主館の玄関口まで帰つて来たところへ、ガヤガヤと囁きながら一行七人が帰つて来た。
松彦『あゝ五三公さま、蠑螈別さまは如何なつたかなア』
五三『大広木正宗の生宮は取逃しましたが、其代り奥さまの鈴野姫の肉宮を奉迎して来ました。将を射むと欲する者は先づ其馬を射よですから、女偏の馬を引張つて帰つておけば大丈夫です、鯨でも牝を取るとキツト牡がとれますからな、それにモ一つの副産物は義理天上日の出神の生宮を拾うて参りました、ハツハツハツハ』
『それは御骨折でした。サア兎も角内へお這入りなさいませ』
松姫『皆さま、御苦労でしたねえ、蠑螈別さまとお民さまは、たうとう取り逃がしましたかな、残念な事で厶いますね』
 万公側から、
『逃げた魚は大きいと云ひましてな、ヤツパリ呑舟の魚は網を破つて逃げましたよ。海老が一疋と帆立貝が一つ、ゴク貧弱な獲物で厶いますが、これでも今晩のお酒の肴には可なり間に合ふかも知れませぬ、エヘヽヽ』
松彦『ハア、兎も角結構だ、之から松姫館へ帰つて神様にトツクリと願つて来るから、先づ発見祝にお神酒でもあがつて下さい』
お寅『どうぞ蠑螈別が貴方の鎮魂で、今夜の中にでも此処へ引着けられて帰りますやうに御祈願して下さいな、松姫様も宜しく御願ひ致します』
松姫『ハイ、力限り願つて見ませう』
魔我『私もお民さまが引着けられて帰るやうに祈つて下さい』
松姫『ハイ、祈りませう』
万公『何と云つても、末代日の王天の大神様と上義姫様とのお祈りだから大丈夫だよ、なア海老に帆立貝、マア安心したがよからうぞ』
松彦『アハヽヽ、左様なら皆さま、御緩りと慰労会でも開いて、賑かうして下さいませ』
松姫『どうぞ十分にお神酒を召し上りませ、何程酩酊しても、鼻を捻ぢることだけはなりませぬぞや、ホヽヽヽ』
と云ひながら、松彦、松姫は二百の階段を足で刻んで行く。万公は下から二人の姿を打仰ぎ、
『御夫婦万歳、よく似合ひまつせ。お浦山吹さま、アツハヽヽヽ』
 松彦、松姫は後振り向きもせず、別館さして帰り行く。
 一同は大広間に参拝し、終つて教祖館に於て慰労の祝宴を開いた。ソロソロ酔がまはり出し、すべての障壁を取つてくだらぬことを喋り始めた。お寅も魔我彦も迷信家の事とて、ユラリ彦、上義姫夫婦の生宮が、早ければ夜明け前、遅くても明日の昼頃には、キツト両人の恋人を此処へ引戻してくれるものと思ひ、大船に乗つたやうな心持でニコニコしながら、無性矢鱈に土手を切らして酒を飲んだ。
万公『アヽア、エライ労働をやつたものだ。余程報酬を請求しなくちや、バランスが取れない。御苦労さまだつた位な報酬では、根つから有難くないからな、夜業までさされて、幾分かの割増を貰つたて、やり切れないワ』
五三『オイ万公、労働は神聖だ。俺だつて労働は貴様と同様にやつたのだ。労働の量に相当しただけの報酬を、権利として要求するのは道徳的には根拠のないものだよ。労働の報酬のみを以て当然の権利とみるならば、それこそ社会に弊害百出して世を混乱に導くより仕方がない、老者、病者、小児などは労働をせないからパンを与へないと云つたら何うするのだ。労働させて貰ふのもヤツパリ神様のおかげだよ。現代八釜しく持上つて来た労働問題は、人類の集団若しくは階級間の問題でなくして、神様と人間との問題だ。吾々三五教の宣伝使又は信者たるものは、如何なる場合にも、永遠の真理の上に立ち、時代を超越して居なければならない。神聖な神の道でありながら、労働問題を云々するやうな事は、チツと謹まねばなるまいぞ』
『それだとて、労働は天の恵を開拓するのだ、宣伝使だつてヤツパリ労働者でもあり、又報酬を要求する権利がなくてはヤリ切れないぢやないか』
『宣伝使、信者の神より賜はる報酬といふものは、信と愛と正しき理解との歓喜の報酬を即時に神から賜はつて居るぢやないか。仮令世の中の物貨生産の労働に従事し、相当の報酬を得るのを、今の人間は自分が儲けるのだと云つてゐるが、決して儲けるのではない、神から与へられるのだ。おかげを頂くのだ。自分が儲けるなンて思つたら大変な間違だ。人間と云ふものは自分から生きるこたア出来ない、許されて生きてゐるのだ。それだから人はパンのみにて生くるものに非ずと神が仰有るのだよ。パン問題のみで人間の生活の解決が付くのならば、世の中は殺風景な荒野のやうなものだ』
『吾々は、つまり言へば筋肉労働者だ。ヂツとしてゐて、口の先やペンを使つてゐるやうな屋内労働者とは、苦痛の点に於て天地霄壌の差があるのだからなア』
『そりや実に浅見だ。筋肉労働者は人体自然の道理に従つて活動するのだから、仮令汗を搾つても愉快なものだ、苦しいと云つても宵の口だよ。ペンを持つて著述をしたり、椅子に掛つて調査などをやつたりしてゐる者の労働の苦しみと云つたら、筋肉労働者の夢想だも及ばざる所だ。凡て人間と云ふものは人のやつてゐる事が善く見えるものでなア、誰だつて其局に当つてみよ、随分苦しいものだよ。上になる程責任も重く、単純な筋肉労働者の比ではない。俺も一度は青表紙と首つぴきをして、沢山の参考書をあさり、著述に従事したこともある。又土工にもなり、百姓にもなり、車力にもなつたが、ヤツパリ筆を持つ御用が一番楽さうに見えて一番苦しかつたよ。霊界物語の口述者だつて筆記者だつて苦しいものだ。お寅婆アさまの後を追つかけ、息切れするやうな苦しい目に会つたと云つても、体を休め酒の一杯も飲めば、それで済んで了ふものだ。著述家なンかになつてみよ、一分間だつて心のゆるむ隙はない、夢にだつて忘れることが出来ない程、心身を疲労させるのだ。マアそんな小六かしい話は打切りにして、今日は気楽にお神酒を頂き、又明朝の新しいお日様を拝むことにしようぢやないか。なアお寅さま、魔我さま、一つやりませうか、どうぞ一杯注いで下さいな』
お寅『婆アでお気に入りますまいが、御免を蒙りませう』
とニコニコしながら五三公に盃を渡し、燗徳利からドブドブと注いだ。かくして盃はクルクルまはり、宴ますます酣となつて来た。
 万公は思ひの外酔ひつぶれ、独舞台の様になつて言霊を発射し出した。
『随分何だなア、雀百までとか云つて、年がよつても恋愛といふものは下火にならないものと見えるな、エヽン、現にお寅婆アさまだつてさうぢやないか、俺やどうも此問題の解決にや、実の所が迷つてゐるのだ』
五三『恋愛は神聖だ、宗教的信仰と正しき恋愛とは、人間の霊魂を優美に向上させるものだよ。正しき信仰と完全な恋愛は人間の心霊を発育せしめ、永遠無窮の生命を与ふるものだ。併し現代科学者のいふやうな浅薄な恋愛観では駄目だ。凡て恋愛といふものは性欲から分科したものだ。そして性欲の中に可能性の形に於て始めて含蓄されてるのが恋愛だ。此世を造り給うた誠の神様が、人間の生命に性欲を与へ給うた時から、恋愛といふものを含蓄させておかれたのだ。信仰と恋愛は歓喜の源泉だ。歓喜といふものは心霊を永遠に保存し、且心霊の優美完全なる活躍を起さしむるものだ』
『成程、それだから今晩の大活躍も、ハアそこから起つたのだな。さう聞けば、お寅婆アさまの鈴野姫様が御活躍遊ばしたのも、義理天上さまが、舎身的活動の理由も解決がついて来た。五三公さまのやうに、さう綿密に云つてくれると、俺も恋愛に対しての煩悶を綺麗サツパリ排除することが出来たやうだ』
タク『ハヽヽヽヽ、恋愛の煩悶だなンて、そんな面でよくいへたものだ。チツとお前の顔と相談してみよ、エヽン』
アク『お菊さまの様なナイスと結婚させてもよい様な口吻を、お寅さまが洩らしたものだから、俄に色気づきよつて、変な気になつたのだから、正しからざる恋愛の煩悶に襲はれよつたのだ、アハヽヽヽ』
五三『こんな七六ケしい問答はやめて、今晩は盛にやらうぢやないか』
お寅『サ皆さま、今日は十分に酔うて下さい、メツタに鼻はつまみませぬからなア』
とお寅も今日は何と思うてか、主人気取になつて一生懸命に酒をあふり出した。だんだんと酔がまはつて来た。
万公『オイお菊さま、恋愛は先づ打切りとして、一つ御馳走に歌をうたひ、舞うて見せて貰へまいかいな』
お菊『万公さまのために歌ふのは一寸考へさして下さい、皆さまの御馳走ならば歌つても宜しい』
 お菊は立上り、扇を拡げて自ら歌ひ自ら舞ふ。一同は手を拍つて囃す。
『小北の山の神床で  花のお菊が酌をする
 酒より肴よりお菊さまが  万公さまの目についた
 ホヽヽヽヽ』
万公『コリヤお菊、馬鹿にするない、目についたのは俺ばかりでない。すぐに俺を向ふにまはし挑戦的態度を取るのだな』
タク『ヤツパリ万公さまが気にかかると見えて、乙姫さまが挑戦遊ばすのだよ、何事も善意に解するのだな』
万公『アハヽヽヽ』
 お菊は又歌ふ。
『目につかば、つれて厶れよ海の底、竜宮の海の底までも』
アク『妙々、面白い面白い、お菊さまに限る。モ一つ願ひます』
お菊『エヽヽー今日の日もエヽヽー
 くれーたアれど くれーたアれど
 エヽヤのサ、エヽーエヽー
 わがア殿はア
 ヤーレ、マーだ見えぬ
 ハーレヤーレエーヤのサアヽヽ
オホヽヽヽ、大きに不調法、これで御免蒙りませう』
万公『万万万、モ一つ所望だ。こんな所でやめられてたまるかい』
お菊『万さま、お前さまも男ぢやないか、返報がへしといふ事をようせないやうな者は、男ぢやありませぬよ。何でもいいから一つ歌つて御覧、さうすりや又私も取つときを放り出しますから……』
万公『エヽ仕方がない、女王さまの御託宣だ』
と云ひながら立上り、
『あそばむ為とて生れけむ  いたづらせむとて生れけむ
 あそ……ぶ子供の声聞けば  吾身さへこーそゆるがるれ
 あゝ惟神々々…………だ、アハヽヽヽ』
一同『ウツフツフヽヽ』
万公『花の盛り……が再びあらうか
 枯木に花は咲きはせぬ
 ドツコイシヨ ドツコイシヨ……だ
 竜宮は近いな 近いな
 乙姫さまが鼓うつ
 声が聞えて来るぢやないか
 其又鼓を何とうつ
 とどろ とどろと六つにうつ……
サアこれで満期免除を願ひたい、サア乙姫さまの番だ』
お菊『一枚、二枚』
『コリヤコリヤ、一枚二枚はモウこりこりだ、もつと気の利いた事を言はぬかい』
『ホツホヽヽヽ
 岩屋の中で蛸踊り
 珊瑚の島では亀歌ふ
 竜宮の波のはざまにて
 お菊乙女が黄金まく
 其又黄金を何とまく
 万公さまにやろと言うてまく
ホツホヽヽ』
アク『オイ中下先生、得意の程、お察し申します。モシ涎がこぼれますよ、オホヽヽ』
一同『ワハツハヽヽ』
万公『エヘヽヽ、皆よつてかかつて、此万更でもない万さまを馬鹿にしよる、併し随分持てたものだなア、オツホヽヽヽ、ウツフヽヽヽ』
タク『お菊乙姫さま、モ一つ願ひます、余り万公に揶揄つて貰ふと、後の始末に困りますからな、そこはよく取捨按配して歌つて下さい、何なら私の事も一つ、歌つて貰ひたいものだな』
お菊『これこれもうしタクさまえ
 私に会ひたくば河鹿の流れ
 おやなぎ小柳蛇籠のあひの
 小砂利交りの荒砂つかみ
 背戸の小窓にバラバラと
 投げておくれよ小雨ふると
 思うて私は出て会はう
 もしも万さまであつたなら
 雨戸をピツシヤリ閉め立てて
 長持の底にてふるうてゐる
 好きと嫌ひはこんなもの
 ヨイトサア ヨイトサア
 エヽエエー、はれやーれエイヤのサ………
モウこれで品切となりました。又製造が出来ましたら、皆さまの前に陳列致します、ホヽヽヽ』
五三『ヤア有難い』
お菊『先生、貴方も一つ願ひます。貰ひずては不道徳ですよ、ねえ皆さま』
五三『わたしは生れつきの無粋漢だ。面白い歌はうたへない、宣伝使としての相当な歌を歌つてみませう、折角の酒の興がさめるかも知れませぬが、やはらかい所へ堅いのが這入るのも、調和が取れてよいかも知れませぬ』
万公『何と乙姫様の前ぢやと思つて、シカツウ仰有るワイ、イヒヽヽヽ、サ早く所望だ所望だ』
五三『天地を造り給ひたる  神は常住にましませど
 お姿見えぬぞ果敢なけれ  人のおとせぬ暁に
 仄かに夢にみえ給ふ  あゝ惟神々々
 神の姿ぞ尊けれ
    ○
 祝詞の力は春の水  罪障氷と解けぬれば
 万法空寂の波立ちて  真如の岸にぞ打寄する
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
万公『何と時と場所を考へない結構のやうな、結構でないやうな歌だなア』
お寅『何だか先生の歌を聞きますと、髪の毛がシーンとして来ました。ヤツパリ万さまの歌とは大変に品格が違ひますなア、心の色が言葉に出るとか云つて、大したものですワ。何とはなしに爽快の気分が漂ひました』
万公『モシ先生、お目出度う。お寅さまは余程思召があると見えますよ。オホヽヽヽ、色男といふものは変つたものだな。何と云つても昔の別嬪だからなア、イヒヽヽヽ』
魔我『コレ万さま、そんな事云つては失礼ぢやありませぬか』
万公『そら失恋です。何と云つてもお菊さまにエツパツパをやられた立派な御人格者と、お民さまに肱鉄を喰つた、どこやらの哥兄さまと、蠑螈別さまにエツパツパのパアで置去りにされた、昔の別嬪さまと、三組揃うた失恋会議だから、チツとは失恋な事も仰有りませうかい。思へば思へば同情致します。同病相憐れむ同情ヨシノリさまだ。柔道行成次第に打つちやつておく訳にも行きますまい。あゝ不義理の天上日の出神に対し、軽業師玉乗姫が、あらう事かあるまい事か、大広木正宗さまをくはへて走るといふのだから、困つたものだい。イヒヽヽヽ』

魔我『大広木正宗さまに玉則姫
  かつさらはれて玉なしの魔我。

 鈴野姫ガチヤ ガチヤ ガチヤと鳴り渡り
  後追つかけて行くぞ可笑しき。

 打倒れ鼻打ち砕く鈴野姫
  われて飛出す玉は何処ぞ。

 地上姫恋の願お菊と思へば
  固い約束たがやし大神。

 面白い其面付は何の事
  万さま寅さま思ひやります』

万公『コラ魔我よ此万さまを何と思ふ
  恋にかけたら世界一人』

魔我『万人を口説いて一人出来ぬ奴
  広い世界に只の一人。

 ウフヽヽヽうろたへ騒ぎ暗の夜の
  お菊幽霊に肝つぶす哉』

万公『自分のみ二世の妻よと思ひしに
  玉乗りそこね落つる魔我彦。

 大広木正宗さまに金とられ
  後追つかけて鼻をとられつ。

 お寅さま何れおとらぬ恋衣
  破れて今日は縫ふすべもなし』

お寅『喧しい腰の曲つた魔我彦が
  恋を語らふ資格あるべき。

 片思ひ固く思うてゐたものを
  玉乗りそこねヒメ(悲鳴)をあげつつ』

万公『万これで失恋党の酒もりも
  一寸済みけり後は無礼講』

アク『見渡せば女男の好きこのむ
  面した奴は一人だもなし。

 其中でアクのぬけたるアクさまは
  中立地帯で安全なもの』

タク『タクさんにお宮に神はありながら
  此騒ぎをば他所に見るかな。

 此神は夫婦喧嘩の災を
  守り給へる不義理天上』

テク『魔我彦の顔は青森白木上
  蠑螈の別に横領姫されて』

魔我『花依の姫ではなくて鼻打の
  婆姫さまとなりにける哉。

 花依姫身魂変化て猿彦姫
  赤恥柿のみのる姫かな』

お寅『金竜姫取られて難儀に大足姫
  正宗さまは常世姫へ逃げたか』

魔我『ユラリ彦、上義の姫は今頃は
  さぞ睦じくおはしますらむ』

 かく互に脱線歌を歌ひつつ、何時の間にやら、カラリと夜を明かして了つた。数多の参詣者はゾロゾロと大広前指して参拝する、下駄の足音が乱雑的に聞えて来る。
(大正一一・一二・一五 旧一〇・二七 松村真澄録)
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