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文献名1霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
文献名2第1篇 仕組の縺糸よみ(新仮名遣い)しぐみのれんし
文献名3第3章 噛言〔1213〕よみ(新仮名遣い)かむごと
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-03-09 17:55:07
あらすじ
夜が明けて大門神社の広前の合図の太鼓が聞こえてきた。一同は祭壇の前に座を占めた。魔我彦は天津祝詞、お寅は神言を奏上した。

しかしその祝詞には蠑螈別とお民の逐電を読み込み、祝詞が終わった後も、蠑螈別とお民を返せなければ狐などの世話はもうしない、と祀ってある神たちに向かって大声でしゃべりだした。

お寅ははっと気が付いて教祖館へ姿を隠した。五三公と万公は、アク、タク、テクを信者の中へ交えておき、松姫の館をさして上って行った。

信者たちはお寅の祝詞や様子を見聞きして合点がゆかず、首を傾けて思案にくれていた。アクは壇上に登り、演説気取りで話し始めた。

そしてウラナイ教を開いた高姫自身が三五教に改心したこと、蠑螈別がお民と駆け落ちして逃げてしまったことを話し、それでもまだウラナイ教を信じるのかとすっぱ抜いた。

信者たちは道場破りだと騒ぎだし、自分は神の生き宮だとわめきたてる信者が壇上のアクめがけて襲撃した。アクは人ごみの中をすばしこく姿を隠してしまった。代わりにタクが捕えられ、鉄拳の雨を浴びせられている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年12月15日(旧10月27日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年9月25日 愛善世界社版42頁 八幡書店版第8輯 375頁 修補版 校定版43頁 普及版18頁 初版 ページ備考
OBC rm4603
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本文  夜はカラリと明け放れ、大門神社広前の合図の太鼓が七五三に聞えて来た。五三公、万公、お寅、魔我彦其他アク、タク、テクは数十人の信者の中を通つて一段高き祭壇の前に座を占め、魔我彦先づ天津祝詞を奏上した。つづいてお寅は又もや神言を奏上した。
 小北の山に神言。
『小北の山に神つまります、五六七成就の大神、旭の豊栄昇り姫の命もちて、嘘八百万の神等を餓鬼集へに集へ給ひ、餓鬼議りに議り給ひて、大広木正宗、鈴野姫命は、泥足原の水鼻汁を安国平姫命と知らぬ事依さしまつりき。頭と恥をかくよさしまつりし国土に汗膏とり神共をば、雁灯まはしにまはし給ひ、神掃に掃出し給ひて、今年は岩根木根立穴草の片屏風をも断りて、頭の髪の毛ぬき放ち、頭の焼を何時の間にやら墨塗つて、頭かくし依さしまつりき。斯く冠せまつりし夜の鬘と大山子欲高姫命、ヤンチヤ女と定めまつりて、白髪頭に墨塗立て、高姫の腹に枉津高知りて、雀親方の命の耳の御穴を塞ぎまつりて、頭の御鬘、日の焼を隠しまして、やさし女と誑り、喋る口中に泣き出でむ、赤の他人等が過ち犯しけむ、クサグサの罪事は、枉津罪とは、頭はられ、耳引かれ、目玉は火放ち、尻頻蒔き、禿頭に櫛さし、鶏屋の頭の、生剥ぎ、逆毛剥ぎ、糞小便屁許々多久の罪を、枉津罪と詔り別けて、臭き罪とは、生膚断、即ち腋臭、死膚断、即ちトベラ、白日床組、黒日床組、夜も昼も、己が母のやうな、年の違つた女と、をかしことせる罪、ハアハアと息喘ませ、叱言云ふ罪、獣犯せる罪、襟に這ふ虫虱の災、高姫神の災、黒姫鳥の災、借り借り倒し、うまい事せる罪、此処彼処でボツタクリの罪、沢山出でむ、斯く出でば、枉津神乱れ言以て、余りもせない金を、元も子も無く、打きり取られ、血を吐く思ひの、吾身の果、剰へ、此お寅姫を置去りにして、剰へ元のお民を連立ち、末の末までと、目を忍び、二人の仲を取り割きて、枉津の鶏屋の太い婆だと、旅装束にて、川を乗り越え、逃げ失せにけり。斯くならば、最早是非なし、枉津神は魔我の岩戸を押開きて、魔我の八重雲を、厳の千別に千別きて、聞召さむ、砕けつ神は、高姫の尻に、黒姫の尻に、とりつきまして、高姫の便、黒姫の便を、嗅別けて聞召さむ、かく聞召しては、罪と云ふ罪は、充ち充ちにけりと、吝みたれ神の、阿呆の痩我慢、泡吹き放つ事の如く、悪縁生みきり、夕のお神酒を、悪神、貧乏神の、吹払ふ事の如く、尻をうつべに居る大船を、屁こき放ち、糞こき放ちて、雪隠の中に放き落す事の如く、落ちた沫が、元に返りて、返り討する事の如く、飲んだる酒は一つもあらじと、腹を痛め気を痛め給ふ事を、高姫の尻、お民の尻より、真逆様に落ち滝津、河鹿川の瀬に在す性悪姫と云ふ神、蠑螈別を大肌の腹の中に喰はへ行かむ、かく喰はへ行けば、阿呆らしの尻の、尻糞の、焼糞の、沫の矢鱈に飛びます、穴あけつ姫と云ふ神、大広木正宗、お民を抱へ持ち、嬶となして酒飲みてむ、かく嬶と酒飲みては、屁吹き戸に在す屁放戸主と云ふ神、根の国、底の国に屁こき放ちてむ、かく屁放き放ちては、根の国、底の国に在す、腹立ち擦り姫と云ふ神、揉みさすらひ失ひてむ、かく牛馬泣いては、ウツソリした、お寅の身にも、心にも、恋と云ふ恋はあらまし、遂げさし給へと、議らひ給へ、気をつけ給へと申すことを、馬鹿の耳振り立てて聞召せと、頭つつこみ、つつ込みも枉申す、あゝ叶はぬから、目玉飛び出しましませよ』
お寅『さあ、皆さま、御苦労で厶りました。これで大方、蠑螈別さまも帰つて来るだらう。もしも帰らなかつたら神罰が当り、野垂死をせにやならぬから、嫌でも応でも帰つて来るだらう。松姫さまが御祈願して下さつてるのだから、もはや間もあるまい。大広木正宗の肉の宮、貞子姫命、行長春命、言足姫命、鈴野姫さま、桃上彦命さま、地上姫命様、いつもお前さまは俺の世話になつてるのだから、正念があるのなら、今日一遍でよいから、手別けして大神様のお助けによつて、大広木正宗さまの肉の宮を、袖か袂を皆銜へて引張つて来るのだよ。之が出来ぬやうの事だつたら、お前は犬より劣つた狐だ。如何しても今日中に大広木正宗さまの肉の宮を俺の前につん出して下さらなくちや、もう此お寅もお給仕致しませぬぞや。お給仕どころか、皆宮から放り出して焼いて了ふのだから、お前さまも今日は千騎一騎の処だ。狐が出世して神の名を名告り、結構なお給仕をして頂いた方がよいか、放り出されたがよいか、ここは一つ思案のし所ぢやぞや。此お寅に対しても素知らぬ顔をして居られる義理ぢやあるまい』
と何時の間にやら、人の前も忘れて大きな声で喋り出し、ハツと気がつき袖に口をあて、顔を隠しながら教祖の館へ逸早く姿を隠した。
 五三公、万公はアク、タク、テクを信者の中へ交へ、一同の噂を聞き取らしむべく云ひ含めおき、松姫の館をさして上つて行く。
 七五三の太鼓の音  響き渡ると諸共に
 彼処や此処の宿舎より  寄り集まりし信徒は
 大門神社の広前に  有難涙を零しつつ
 鼻汁をすすつて太祝詞  唱へ居るこそ殊勝なれ
 お寅婆さまは中啓を  右手にキチンと握りしめ
 左の手にて袖たたみ  其足音も淑かに
 水色袴をサラサラと  音させながら五三公や
 万公其外三人を  後に従へ神壇の
 前に現はれ叩頭し  手を拍ち終り例の如
 天津祝詞を奏上し  生神言を宣りつれど
 心乱れし其故か  側より耳たて覗へば
 以前の如く不可思議な  祝詞の如くに聞え来る
 心のせいか耳のせいか  或は曲津の悪戯か
 合点の行かぬ次第ぢやと  五三公、万公初めとし
 並み居る信者も首傾げ  思案にくれて居たりけり
 中上先生のアクさまは  鳥なき郷の蝙蝠を
 気取つて壇上にはね上り  高卓子を前に置き
 コツプの水をグツと飲み  演説気取りで述べ立てる
 其スタイルの可笑しさよ  懐探りて塵紙を
 取り出し鼻をツンとかみ  又もや紙を折り重ね
 再び鼻をツンとかみ  目やにを拭ひ歯糞とり
 無雑作に懐へつつ込んで  又もやグツと水を飲み
 オホンと一声咳払ひ
『これこれ満場の諸君達  貴方は此処の神様を
 信仰なさるは宜けれども  随分用心なさらぬと
 商売繁昌病気平癒  子孫長久は中々に
 思うた様には出来ませぬ  天国浄土の有様を
 皆さま心に刻み込み  中有界や地獄道
 いろいろ雑多の神様の  尊き教を体得し
 置かねば何程信神を  して見た処で無益ぞや
 私はもとはバラモンの  神に仕へた者ですが
 野中の森で図らずも  三五教の宣伝使
 治国別の弟なる  松彦一行に廻り会ひ
 誠の道をよく悟り  此処迄ついて参りました
 まだ温々の信者とて  教理はしつかり知らねども
 岡目八目人の目は  あんまり違ふものでない
 バラモン教に比ぶれば  ウラナイ教はましだらう
 さはさりながら皆さまよ  此処に祀つた神さまは
 天地の元の根本の  月日の神や世の初め
 御用なされた神さまが  祀つてあると思ひますか
 それ程尊い神ならば  ウラナイ教を開いたる
 高姫さまは何として  三五教に兜脱ぎ
 黒姫さまと諸共に  神の司になつただらう
 ここの点をばよくよくも  考へなさればウラナイの
 教の値打も分るでせう  正宗さまの肉宮は
 信者となつて来て居つた  衣笠村のお民さまと
 暗に紛れて此館  脱け出で一本橋渡り
 野中の森を乗り越えて  もう今頃は河鹿山
 祠の森の近辺に  逃げて行つたに違ひない
 お寅婆さまが驚いて  髪ふり乱し其後を
 追つ駆け行きし其様を  眺めて愛想がつきたぞえ
 之でも皆さま御一同は  まだ懲りずまにウラナイの
 道を信仰なされますか  一寸意見が尋ねたい
 同じ事なら三五の  神の教を信仰して
 喜び勇んで現界に  生れ出でたる本分を
 尽して神をよく信じ  天国浄土へ上るべき
 準備を早くなされませ  松姫さまは久し振り
 別れて程経し夫に会ひ  夫婦親子の名告りをば
 首尾克くなされましたぞや  頂上に建つた石の宮
 三社ともに祀り替へ  此世の元の神様を
 斎きまつりて天地に  怯ぢも恐れも致さない
 国治立の大神の  誠の御霊を鎮祭し
 神の恵を十分に  頂く事になりました
 是非に今夜は小北山  小宮の端に至る迄
 一つも残らず祀り替へ  変性男子の御霊
 教へ給ひし神様を  お祀り替へる段取と
 愈なつて来ましたぞ  嘸や皆さま驚いて
 狼狽へなさることだらう  もしや嫌なら今の内
 ここをば捨ててスタスタと  吾家をさしてお帰りよ
 あんまりうまい口車  乗り切りなさつた皆さまは
 容易に私の言ふ事を  受取り遊ばす筈はない
 もしや此中一人でも  分つた人があるならば
 今夜の此処の御遷宮に  参加なさるが宜しからう
 強つて勧めはせぬ程に  一寸気をつけ置きまする
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
 斯の如くアク公は小北山の祭神の素性をスツパ抜いた。百人許り集まつてゐた金太郎の信者は俄に騒ぎ出し、形勢刻々に怪しくなり、彼方此方の隅々から、
『アク公とやらを引摺り落せ、叩き伸ばせ、道場破りだ、宮つぶしだ。俺達は、こんなことを聞いて見逃しにやならない。リントウビテン大臣の生宮が承知致さぬ』
と喚き立てるものがある。一方には岩照姫の生宮が承知致さぬぞやと、金切り声を絞つて泣声でぞめく。其外五六七成就の大神、木曽義姫の大神、大照皇大神宮の肉宮などと自称する信者が、俄に狂ひ立ち、壇上のアクを目がけて襲撃し、鉄拳の雨を降らす、足を取つて引摺りおとす、恰も日比谷ケ原の選良其儘の光景を演出した。アクは人込の中を、スバしこく潜つて姿を隠した。其代りにタクが捉へられ、悪言暴語の代償として鉄拳の雨を浴びせかけられ半死半生となつて、其場に倒れて了つた。忽ち大門神社の広前は阿鼻叫喚、一大修羅場が勃発することとなつた。あゝ叶はぬから目玉飛出しましませよ。
(大正一一・一二・一五 旧一〇・二七 北村隆光録)
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