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文献名1霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
文献名2第1篇 仕組の縺糸よみ(新仮名遣い)しぐみのれんし
文献名3第7章 妻難〔1217〕よみ(新仮名遣い)さいなん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-03-11 16:09:38
あらすじ
喜久公の妻・お覚はまた、小北山に来て神がかりし、自分の身魂が神業に仕える尊い身魂だと聞かされて、ここで奉仕したら神代からの罪悪を洗われると思い込み半信半疑で仕えてきたが、今狐の仕業とわかってすっかり迷いが晴れたと、三五教に改心することを表明した。

お福はまた、お寅が自分の家に来てから口を切るようになり、お寅の神力を信じて全財産を寄進して一心に仕えてきたが、皆の話を聞いてウラナイ教の裏を知りすっかり愛想がつきたと歌った。

お福は、夫の竹公はまだ目が覚めないが自分はもうこんなところは止めたと、春公の手を握って外へ走り出した。お福は河鹿川の神政松の御神木までくると、今までよくもだましたと怒って苗木をすっかり引き抜いて川に捨ててしまった。

あとから竹公が追いかけてきた。竹公が怒り狂うお福をなだめるが、お福は大勢の前で狐の仕業だとすっぱ抜かれることになったのも、竹公が気が利かないから騙されたのだと責め立てた。

竹公はお前がしょうもない神がかりをするから自分が巻き込まれたのだと喧嘩を始める。晴公が中へ割って入り、誰がなんと言おうと自分は二人が神の身魂だと信じると言って喧嘩を収めた。

機嫌を直した竹公とお福は、春公と共に大広間へ帰って行く。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年12月15日(旧10月27日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年9月25日 愛善世界社版91頁 八幡書店版第8輯 392頁 修補版 校定版94頁 普及版36頁 初版 ページ備考
OBC rm4607
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本文  お覚は歌ふ。
『高姫司の開きたる  北山村の本山を
 蠑螈別や魔我彦の  司に従ひ喜久さまと
 これの聖地に来て見れば  思ひもよらぬ神憑
 思ひがけなや吾魂は  古き昔の因縁で
 木曽義姫の守護神  尊き神の御裔と
 聞いたる時の驚きは  何に譬へむものもなく
 其驚きと嬉しさの  雲に包まれゐたりけり
 尊き神の命令は  反くに由なく喜久さまと
 三年を越えし今日迄も  身を慎みて褥さへ
 別にいく夜の淋しさを  涙と共にしのびつつ
 これも昔の神代から  世を持ちあらした天罰が
 酬うて来たのに違ひない  かうして身魂の借銭を
 つぐなひ下さる事ならば  こんな結構な事はない
 限りもしれぬ罪悪を  直日に見直し聞き直し
 百目の質に編笠を  一介出してすますよな
 ボロイ尊い話ぢやと  ここまで教をよく守り
 神に仕へて参りました  其おかげやら今日は又
 結構な事が分り出し  半信半疑の雲はれて
 げに爽快な魂と  スツパリ生れ変りました
 これもヤツパリ小北山  鎮まりいます曲神の
 一つはおかげに違ひない  吾身に憑つた神様は
 木曽義姫といふ事ぢや  どこの狐か知らねども
 ようマア人の肉体を  うまく使うたものだなア
 これぢやに依つて人間は  注意をせなくちやならないと
 三五教の神様が  赤子の口にそら豆を
 かみくくめるやう親切に  諭して下さる御仁愛
 其お言葉をいつとなく  忘れて了ひウラナイの
 教司の高姫が  水も漏らさぬ弁舌に
 迷うた為に肝腎の  尊き親を袖にして
 訳の分らぬ神様に  迷うて来たのが情ない
 大きな顔して家の外  どうしてこれが歩けよか
 とは云ふもののこれも亦  仁慈無限の神様の
 お試しならむと見直せば  見直されない事もない
 あゝ惟神々々  神の御霊の幸はひて
 此神山に天地の  誠の神の降りまし
 世人を普く善道に  教へ導き吾身魂
 救ひ給ひて天国の  栄えを与へ給へかし
 旭は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  星は天より下るとも
 山さけ海はあするとも  三五教の神徳に
 眼を覚した上からは  如何なる事の来るとも
 決して邪教にや迷はない  曇つた眼は今あけて
 真如の光明ありありと  心の海に照り出した
 仁慈無限の神様よ  天の誠の五六七様
 何卒々々吾々が  汚い心を憐れみて
 誠一つの三五の  教を完全に委曲かに
 さとらせ給へ惟神  珍の御前に願ぎまつる』
 お福はまた歌ふ。
『さだ子の姫の肉宮と  鈴野の姫をかね給ふ
 内事司のお寅さま  吾家に現はれ来りまし
 ウラナイ教の信仰を  お勧めなさつた時もあれ
 不思議や妾の身体は  地震の如く震動し
 胸苦しくもなつて来た  此奴ア不思議とわれながら
 怪しみ疑ふ時もあれ  腹の底からウンウンと
 唸り出したる玉ゴロが  漸く喉へ上りつめ
 口を切らうとした時は  後にも先にもないやうな
 苦しい思ひを致しました  お寅さまが吾家へ来るや否
 不思議な事が出来たのは  偉い神徳ある人だ
 只のお方ぢやあらうまい  尊き神の御化身と
 信じて拝む折もあれ  息は追々楽になり
 旭の豊栄昇り姫  これからお前は因縁で
 俺が肉体かる程に  小北の山へ罷り出で
 信仰せよとおごそかに  自分の口から宣り伝ふ
 かうなる上は夫婦とも  疑ふ余地もあらざれば
 お寅婆さまの云ふままに  屋財家財を抛つて
 これの館に転住し  吾身に持てる財産は
 櫛笄に至るまで  売代なして神様の
 お宮の御用に立てました  それから私は何となく
 心驕りて知らぬ間に  旭の豊栄昇り姫
 霊肉一致の神柱  何たる結構な体よと
 夫婦が朝夕会ふ毎に  一人笑壺に入つてゐた
 然るに何ぞ計らむや  皆さまのお話聞くにつけ
 愛想もコソもつきました  何程神の仕組でも
 私をこんな目に会はすとは  余りヒドイ神様ぢや
 私はこれからスツパリと  思ひ切ります神いぢり
 御幣をかついで笑はれて  どうして此世が渡れませう
 コレコレもうし竹さまえ  お前は五六七成就の
 神のお宮ぢやなかつたか  まるで狐につままれた
 やうな思ひがすぢやないか  思ふ所か正真正銘の
 坂照山のド狐が  騙してゐたのに違ひない
 コレコレもうし竹さまえ  思ひ切るのは今だらう
 グヅグヅしてると松姫や  松彦さまに又しても
 眉毛をよまれ尻の毛を  一本もないまで抜かれますぞや
 あゝ怖ろしや怖ろしや  神を表に標榜し
 正しき此世の人間を  騙して食はうとする奴は
 虎狼の眷属だ  長居は恐れ逸早く
 ここをば立つて帰りませう  竹さまそれが不承知なら
 私は勝手に帰にますよ  コレコレもうし春さまえ
 お前と私と平常から  互に心が解け合うて
 しつぽり話をしたぢやないか  私が信仰やめたなら
 お前もやめると云ふただろ  サアサア早く帰りませう
 トチ呆け爺の竹さまは  まだまだお目がさめませぬ
 サアサア早う』と言ひながら  春公さまの手を取つて
 太い女がひんにぎり  トントントンと広前を
 夜叉の如くに駆け出し  坂道さして帰りゆく
 竹公驚き立上り  お福の後を追駆けて
 『旭の豊栄昇り姫  暫く待つた一寸待つた
 お前に言ひたい事がある  短気は損気ぢや待てしばし
 待てと申さば待つがよい  之には深いわけがある』
 声を限りに叫びつつ  坂道指して追うてゆく。
 お福は半狂乱の如くになり、河鹿川の川べりにある笠松の麓の堺の神政松の神木としるしてある千引岩の傍に走りより、
『コリヤ、神政松の神木、よう今迄おれを騙したなア。此普請は俺が蠑螈別に騙されて拵へたのだ。モウ今日から信仰をやめた上は、叩き潰さうと何うしようと私の勝手だ、エヽ怪体の悪い』
と力一杯押せども引けども、数十人を以て引張つた此巨岩、ビクとも致さばこそ、泰然自若、平気な顔でお福の繰言を冷笑してゐる。お福は十六柱の神になぞらへて植ゑておいた十六本の小松をグイグイと引抜きながら、
『エヽ神政松もへつたくれもあつたものか、アタいまいましい、奴狐め、騙しやがつた』
と言ひながら、握つては川へ流し、握つては川へ流し猛り狂ひ、
『コリヤ神政木、元の金にならぬか、性念があるなら、せめて一寸なと動いて見せよ。コラよう動かぬか、ド甲斐性なし奴、貴様は神だと申すが、まるで躄のやうな奴だ』
と云ひながら、あたりの石を拾つて、千引の岩にバラバラと打ちかけてゐる。そこへ春公、竹公は走り来り、
竹公『コリヤコリヤお福、マア気をしづめたら何うだ。サウお前のやうに一徹に怒つてくれると話が出来ぬぢやないか』
お福『エヽエ腰抜男が何を言つてるのだい、笑ふ門には福来る、お前の名はお福さまだから、三年先になれば一粒万倍にして福を返して下さると、蠑螈別や魔我彦が言ひやがつて、人の金を残らず巻上げよつた。丸三年になつた時、今日は万倍にしてくれるかと思つて待つてゐたら、一文も、どこからもくれやせぬ。それでも神政成就に近付いたら、百万倍にして返してくれるだろと待つてゐたのだ。最前から聞いてみれば、坂照山のド狐に騙されて居つたと云ふぢやないか、阿呆らしい、どうしてあんな処に居れるものか、今まで大勢の信者に旭の豊栄昇り姫様といつて崇められてゐたのに、大勢の前でスツパぬかれて、どうして此お福の顔が立ちますか。お前さまは気のきかぬ頓馬だから、私が人に顔が会はされないやうにして了つたのだ。此儘泣寝入りをしては世間へ会はす顔がないから、仮令何時までかかつても、此岩をひつくり返し潰さねば承知をせないのだよ。竹さま、春さま、何だ、ヒヨツトコ面して、何青い顔してるのだい、さうだから意気地なしと言はれるのだ』
『貴様がせうもない神憑をするものだから俺までが巻き込まれたのだ。罪は貴様にあるのだ、俺に不足をいふ筋は一つもあるまい』
『それだから頓馬といふのよ。何程嬶が勧めても、夫は夫の権利があるぢやないか、なぜ其時に一言気をつけてくれないのだ。お前も一緒に賛成をするものだから、此お福も怪しいとは思うては居つたが、竹さまが男の身で居ながら一番に賛成したものだから、ヤツパリ私の守護神は結構な神様だと思うて賛成したのだ。それがサツパリ当が外れて、世間へ顔出しが出来ぬ事になつて了つたぢやないか。本当にいまいましい、アンアンアン、返せ戻せ、私の出した金を』
『俺だつて、怪しいとは思つて居つたが、お前が一寸も怪しまないものだから、ヤツパリ本真かと思つたのだ。つまりどちらの魂も間が抜けとつたのだから、責任は両方にある。マア俺の云ふ事を聞いて、マ一遍大広間まで出て来てくれ、結構な話を聞かして貰つてやるから……』
『ヘン、責任は二人にあるなんて、何とマア卑怯な男だ事、女は蔭者、表には立ちませぬぞや。家長権の執行者はお前ぢやないか、何と云つてもお前が悪いのだよ。馬鹿野郎の頓痴気野郎だよ』
 竹公はムツとして、つかみつく、茲に夫婦は組んづ組まれつ、互に髪をつかみ合ひ、キヤアキヤア犬の噛み合ひのやうに云ひ出した。春公は中に割つて入り、
『マアマア待つて下さい、五六七成就の大神様、旭の豊栄昇り姫の大神様、神様の生宮が人間なみに喧嘩するといふ事がありますか、みつともないぢや厶いませぬか。これから五六七神政成就して旭の豊栄昇りに栄える松の神代が出て来うとしてゐるのに、肝腎の神柱がそんな事で如何なりますか。どうぞ三千世界を助けると思うて、春公に免じてお鎮まりを願ひます』
お福『何、春さま、お前はヤツパリわたしを旭の豊栄昇り姫と思つてゐるのかい』
『ヘーヘー、誰が何と云つても私は飽くまで信じます。そして竹さまは何処迄も五六七成就の大神様です、こんな事が違うてなりますものか。私はお寅婆アさまにタク、テク、お菊さまの云ふ事が気に喰はないのです。ドタマをカチ割つてやろと、腕が鳴り肉が躍つて仕方がなかつたのに、神様の前だと思つて涙を呑み辛抱してゐたのだ。誰が何と云つても、五六七成就の大神様、旭の豊栄昇り姫の大神様に間違はありませぬ』
 春公の言に二人はケロリと喧嘩を忘れ、ニコニコしながら、
お福『ソラさうでせうねえ、そんな事があつてたまりますものか。コレ竹さま、春公さまが証明してくれるのだから安心しなさい。これから二人が小北山を背負つて立たねばなりませぬで、三千世界の為ですからね』
竹公『ウーン、さうだな、大変だな、これから』
 お福は腹立紛れに引きむしつて川へ流した松の事を思ひ出し、忽ち大地に平伏し、拍手をうつて涙声、
『栄えの神政松、ミロク神代の御神木様、十六本の柱神様、真にすまない事を致しました。どうぞ許して下さいませ、其代りにすぐ十六本の松を植ゑてお返し申します、あゝ惟神霊幸倍坐世』

春公『竹さまの胸の村雲晴るさまは
  松の根元でキン言をふく』

竹公『アハヽヽヽお目出度う』
お福『神様、真にすみませぬ、有難う厶います、それなら之から、マ一度大広間へやらして頂きませう』
(大正一一・一二・一五 旧一〇・二七 松村真澄録)
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