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文献名1霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻
文献名2第4篇 鷹魅糞倒よみ(新仮名遣い)ようみふんとう
文献名3第17章 五身玉〔1291〕よみ(新仮名遣い)いずみたま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-06-30 09:12:41
あらすじ
イル、イク、サールは、ハルとテルが高姫からせしめた酒を、楓姫に酌をさせながら飲んでいた。三人は酔いが回ると脱線してあたりかまわず歌いだし、楓姫にちょっかいを出しては逆にからかわれ、笑いさんざめいている。

ハルとテルはそこへやってきて、奥にいる杢助と高姫に聞こえると一同に注意した。酔った三人は、我々は正当な三五教の信者であり、玉国別から正式に祠の森の御用を仰せつかったのだから、団結して杢助と高姫の方を逆に追い出してやろうと息巻いた。

ハルも賛成し、五人はどやどやと高姫の居間になだれ込んだ。杢助の姿は消えてしまい、高姫は一人でたたずんでいた。五人が乱入して杢助と高姫を追い出すと歌を歌うと、高姫は怒って怒鳴りたてた。

しかしイクは、自分たちは団結して杢助・高姫を追い出すのだと鼻息が荒い。高姫は下手に出て、玉国別が留守の間だから、祠の森にいる者たち仲良く御神業に奉仕しようと呼び掛けた。

ハルは、お神酒のおさがりをもらっても干渉しないようにと高姫に釘をさし、高姫はその代わりに日の出神の生き宮である自分の言うことをよく聞くようにとして、その場は収まった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月19日(旧12月3日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年11月5日 愛善世界社版260頁 八幡書店版第9輯 128頁 修補版 校定版267頁 普及版120頁 初版 ページ備考
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本文  イル、イク、サールは、やさしき楓姫に酌をさせ乍ら四辺を憚りチビリチビリと飲んでゐたがソロソロ酔ひがまはるにつれて脱線し四辺構はず唄ひ出した。
イル『おい、イク、サール、如何だ。かう黙つてクビリクビリとやつてゐた処で酒が沈んで仕方がないぢやないか。チツト歌でも唄つたら如何だい。エーイ』
イク『宜からう宜からう一つ唄はうかな。
 日の出の神の義理天上  イソの宮から降つて来て
 朝から晩までコテコテと  白い粉をば顔に塗り
 一寸眺めれや雪婆か  ヨイトセー ヨイトセー
 もとの木阿弥杢助が  ブラリブラリとやつて来て
 何だか俺は知らないが  目出度い事が出来たさうだ
 お寅婆さまや魔我彦や  ヨルの兄貴に扮装して
 ヤ、ドツコイシヨ ドツコイシヨ  うまく眼を晦ました
 おかげでお酒やお肴が  これ程沢山戴ける
 ア、ヨイトセー ヨイトセー。
アハヽヽヽヽ、エヘヽヽヽヽ、うまいうまい、こんな事なら毎日でもあつて欲しいものだ。僅か蓑笠着て一丁ばかり行つて酒を飲み、又帰つて此処で楓姫の白い手で……イヒヽヽヽヽ、ぼろいぢやないか』
サール『ナヽヽヽ何がぼろいのだい、エーン。これ位な味なくもない酒を飲まされて、見た事もない様な生肴をつきつけやがつて、アタ甘い、それが何結構なのだ。糞面白くもない。俺や、モウ自棄だ。之から義理天上日の出神の処へ行つて一つ管を巻いて来てやるのだい』
イル『こりや こりや さう八釜しう云ふない。ハル、テルの哥兄が気を揉むぢやないか』
サール『ナヽヽヽ何ぢや、木をもむ、そんな事があつて堪らうかい。木をもむ奴あ三目錐だ。俺は鉋だぞ。親の脛を削り、腕を削り又高姫の肴を削り、削つて削つて削りまはす鉋だ。それだからかんながら霊幸倍坐世と云ふのだ。エヘヽヽヽヽあゝ酔ふた酔ふた。楓さま、おい何だ。イルの方に妙な視線を向けてゐるぢやないか。チツと俺の方にも向けたら如何だい』
楓『ホヽヽヽヽ、あまりイルさまは男前のいい、何処ともなしに虫の好く方ですから、一生懸命に視線を向けてイルさまですよ』
イク『おい、楓姫さま、このイクには如何だい。思召しは厶りますかな』
楓『イクら仰有つて下さつてもイク地のないイクさまの方へは私の視線がイク道理が厶りませぬわ。ホヽヽヽヽ、お気に障ましたらイクへにもお詫致します』
イク『こりや、あまり馬鹿にすない。イクら女だつて、酒の上だつて、あまりの暴言吐くと此拳骨が貴様の頭の上にポカンとイクさまだぞ』
楓『山田の案山子の様なスタイルで、オヽヽヽ可笑し、これイクさま、弥之助人形の踊一つ、して御覧。貴方ならよく似合ふに違ひないわ。丁度渋紙に顔かいた様なスタイルだからね』
イル『アハヽヽヽヽ、面白い面白い』
イク『ヘン、馬鹿にしやがる。楓、覚えてゐやがれ。月夜の晩ばかりでないぞ。暗の晩に首筋がヒヤリとしたら俺だからな』
楓『何とマア気障な男だ事。あゝ臭さ、臭い臭い。息のかからぬ処に行つて下さい。お前の口はまるで鰯のドーケン壺を交ぜかへした様だわ』
サール『これ、楓さま、此面はお気に入りますかな』
とニユツと前に出す。楓は頬辺をピシヤツと叩き、
楓『エーエ、好かぬたらしい男だ事。お前はサールの人真似だよ。悪戯た事をなサールと、此楓だつて量見はしませぬぞえ』
サール『ヤー、こいつは恐れ入つた。如何したら姫さまのお気に入るのですかな』
楓『さうだね。私の好きな男は酒を飲まない、さうして色の白い、年の若い、頭の毛の黒い、目のパツチリした、口許のしまつた鼻のツンモリとした男が好きだよ』
サール『さうすると、その条件に合格したのは此サールかな。只欠点は酒を飲むだけの事だ。これ楓姫さま、そんなら今日限り酒は一吸も飲まぬ様にする。そしたらお気に入るだらうね』
楓『エー、好かぬたらしい。誰がお前の様なスカンペイに秋波を送るものがありますか。冗談もいい加減にしなさい』
と小さい柔かい手で頬辺をピシヤピシヤと殴る。サールは頗る御機嫌で相好を崩し涎を垂らし乍ら、
サール『エツヘヽヽヽ、姫さまのおやさしい手でピシヤピシヤとおいでやしたのだな。憎くて一つも叩かれやうかと云つて、俺にはホの字とレの字だな。おい、イク、イル、羨るい事はないか』
イク『ハヽヽヽ、馬鹿だな。子供上りの女に玩弄にされやがつて、何の態だ。それだから高姫の風来者に放り出されるのだ』
サール『放り出されたのは俺ばかりぢやない。貴様等両人も同様ぢやないか』
イル『何、一寸芝居したのだ。何も貴様、よう考へて見よ。高姫や杢助に命令を受けたのぢやない。俺等は此宮を創立遊ばした玉国別御夫婦から任命されたものだ。云はば高姫如きは風来者だ。彼奴は屹度イソの館を放り出されて来たに違ひないぞ。それでヨルや魔我彦がイソの館へ行くのを頻りにとめやがるのだ』
サール『さう聞けばさうだ。高姫に何も遠慮会釈があるものか。俺等は祠の森の常置品だ。之から高姫を揶揄つてやつたら如何だい、面白いぞ』
イル『うん、そりや宜からう。それよりも土堤ぎり、此処で大声張り上げて唄つて見ようぢやないか。さうすりやビツクリして高ちやんがやつて来るかも知れぬぞ』
 かかる処へハル、テルの両人は走り来り、
ハル『おいおい、チツト静にしてくれぬか。奥へ聞えるぢやないか。それだから貴様等に酒を飲ますと困ると云ふのだ。なあテル公、困つたものぢやないか』
テル『うん、本当に仕方のない代物だな。コリヤコリヤ三人の奴、もつと静かにせぬか』
サール『イヤー、魔法使のハルに、テル、ヤー、先程は御苦労で厶りました。お蔭さまで此通りお寅婆さまも、魔我彦さまもヨルも、夜中も、昼も今日も明日も明後日もお酒を頂きまして結構な睾丸の皺伸しをさして頂きました』
ハル『睾丸の皺伸しはいいが、さう大きな声を出しちや困るぢやないか』
サール『声の大きいのは俺の持前だよ。臍下丹田から副守が発動して責めるのだからな。おい、ハル、テルの哥兄、よう考へて見よ。俺等は別に高姫に遠慮する必要がないぢやないか。珍彦様や静子様、楓さまは申すに及ばず、吾々六人はバラモン組とは云へ今は三五教の立派な信者だ。否祠の森の役員だ。誰に遠慮会釈が要るものか。高姫と杢助を、同盟してオツ放り出してやらうぢやないか』
ハル『成る程、そりや、さうだ。さア之から一杯機嫌で高姫の居間へ乗り込み、一談判やらうかな』
一同『賛成賛成』
とヒヨロヒヨロし乍ら、長い廊下を伝ふてドヤドヤと高姫の部屋へ転げ込んだ。高姫は今やフツと気がついて火鉢に凭れて煙草をくゆらしてゐる処であつた。四辺を見れば杢助の姿は何処へ行つたか影も形もない。高姫は心の中で、
高姫『アーア、何だか怪体の奴が出て来たので、杢助さまも私に恥かしいと見えて、森の散歩でもやつて厶るのかな。大きな図体をしても気の弱い男だな。然し義理天上の生宮にはもつて来いだ。あまり男がテキハキすると日の出の神の勤めが仕難うて仕方がない。神様もうまく配剤をして下さるものだ。あゝ有難い有難い、此生宮も何だか肩幅が広くなつた様な気がしますわい』
と独言つつ笑壺に入つてゐる。五人の泥酔者は襖をガラリと開け、居間に雪崩れ込み、捻鉢巻をし乍ら毛の生えた尻を引きまくり、
五人『祠の森に、デツカンシヨ  デカイお尻据えよつて
 デツカンシヨ デツカンシヨ  日の出の神とは何の事
 元をただせば居候ぢやないか  魔法使と騙まされて
 それを誠と思ひつめ  喜んでゐる様な盲神
 デツカンシヨ デツカンシヨ  サア サア之から出て貰はう
 俺等五人は祠の森の  神の任さしの常置品
 挺でも棒でも動かない  デツカンシヨ デツカンシヨ
 さアさア杢助、高姫さま  早くトツトとお帰りよ
 お前に頼んで来てくれと  云つたぢやあろまい、御勝手に
 お出たのだから御勝手に  お帰りなさるが宜しかろ
 ア、デツカンシヨ デツカンシヨ  お寅婆さまや魔我彦や
 ヨルの三人今頃は  河鹿峠を鼻唄で
 ア、ウントコドツコイ ドツコイシヨ  三五教の宣伝歌
 歌ふて渡つて厶るだろ  やがて四五日経つたなら
 八島の主の神さまの  屹度使が見えるだろ
 其時やアフンと高姫が  肝玉潰すに違ひない
 思へば思へば気の毒だ  これこれもうし高チヤンよ
 お前の足許明い中  杢助親爺と手を曳いて
 ここをば立つて下さんせ  之が吾等のお願ひだ
 之程優しう頼むのに  四の五の吐して出て行かな
 俺も男だ腕まかせ  直接行動に出まするぞ
 さアさア早く返答を  聞かしてくれよ義理天上
 贋の日の出神さまよ  アハヽヽヽ、アハヽヽヽ
 ホンに心地のよい事だ  高姫夫婦を放り出した
 あとは珍彦静子さま  天女のやうな楓さま
 智慧も器量も優れたる  イル、イク、サール、ハル、テルの
 五人の男が頑張つて  祠の森の神徳を
 四方八方に輝かし  大神さまのお恵みを
 世界のものに施して  ミロク成就の神業に
 立派に仕へて見せませう  アハヽヽヽ、アハヽヽヽ。
おい、高姫、如何だい。もういい加減に尻をからげたら宜かりさうなものだな。ヨルがもし帰つたら化けが現はれるのだから、其前にトツトと帰んだ方がお前の身のためだぞ』
 高姫は目に角を立て煙管をグツと握り、
高姫『こりや、五人の耄碌共、何処へ行つて、けつかつたのだ。日の出神の義理天上を何と心得てる。仮令イソの館の八島の主が何と申さうとも、彼奴は人間だ。誠の生神は日の出神様だぞや。大国治立之命の片腕とおなり遊ばす日の出神の生宮を粗末に申すと、神は堪忍袋が切れるぞや。そしてイル、イク、サール、お前は一旦暇を出したのぢやないか。盆すぎの仏の様に、ド甲斐性のない、又、帰つたのか。一旦放り出した以上は帰んでくれ帰んでくれ、日の出神が一秒時間だつて置かぬと云つたら置きはせぬぞや』
イク『アハヽヽヽ、吐したりな吐したりな。こりや高姫、此方を誰方と心得てる。イルイクサールの神、又の名はハルテル彦の命だぞ。五つの身魂が一つになつて守護致す、五身魂の神を何と心得てる。グヅグヅ致して居ると目から火の出神としてやらうか。さアさア早く帰んで貰はう、祓ひ給へ清め給へ』
高姫『何とまア、もとのバラモンのガラクタだけあつて、分らぬ男だこと。そんなら暫らく放り出すのだけは猶予して上げようぞ。その代り徹頭徹尾高姫の云ふ事を聞くのだよ』
イク『ヘーン、うまい事仰有いますわい。イルイクサールの神又の御名はハルテル彦神さまに対し、家来扱をすると云ふ事があるか。チツと階級と云ふ事を考へて貰ひたいものだ』
高姫『おい五人の役員さま、父死して牆に鬩ぐ兄弟、相親しむと云ふ事があるぢやないか。肝腎の玉国別さまが留守なのだから日の出神の云ふ事を聞いて、私は教の親となり、お前等は兄弟となつて仲よく御神業に奉仕したら如何だい』
ハル『ヤー、高姫さま、お前さまの方から、さう柔かく出りや此方も文句はないのだ。其代りお神酒のお下りを何程飲つても、滅多に干渉はせぬだらうな』
高姫『アヽ仕方がない。暫らくはお前らに任して置かう。其代り日の出神の仰有る事は何事も聞くのだよ』
 五人一同に、
『イルイクサールの神、又の御名はハルテル彦命、義理天上贋日の出神の申す事確に聞き済みありたぞよ、アハヽヽヽヽ』
高姫『ウフヽヽヽヽ、エー仕様もない』
(大正一二・一・一九 旧一一・一二・三 北村隆光録)
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