初稚姫は河鹿峠を降ってくる途中にお寅、魔我彦、ヨルの一行に出会い、祠の森に父・杢助がいることを知った。斎苑館にいるはずの父が祠の森にいることにいぶかしさを感じながらも、三人に別れを告げて祠の森に向かった。
一方、高姫と杢助は、珍彦夫婦に盛った毒が効きはじめたと思いこみ、彼らの死後に変身の術を使って自分たちが入れ替わり成りすます相談をしていた。
そこへ受付のイルから、初稚姫がやってきて父・杢助に会いたいと言っているとの報せがあった。杢助は、自分が高姫を後妻に取ったばかりで娘に会うのは恥ずかしい、また宣伝使となった娘を甘やかしてはいけないと言い訳をして、森に隠れてしまった。
杢助に化けた唐獅子の化け物は、実はスマートが恐くて逃げ出したのであった。スマートはにわかに唸りだして森林に駆け出して行ってしまった。
初稚姫は不審に思いながらスマートが飛び込んだ森林を見ていると、スマートは前足に傷を受けて帰ってきた。
初稚姫は高姫が止めるのも聞かずに奥に進み入った。スマートも足を引きずりながら初稚姫の後に従う。高姫は初稚姫が来たことを知らせるために声を限りに杢助を呼ばわったが、聞こえてくるのは山彦だけであった。