祠の森の聖場に妖幻坊なる妖怪が現れ来たり、三五教の杢助時置師神の名をかたった。そして高姫と組んで聖場を占有し、館主珍彦ら真人を排除して大神の大神業を破壊しようと暴虐的活動を開始した。
しかし妖幻坊と高姫は、初稚姫の愛善の徳と信真の光に照らされ、また猛犬スマートに威嚇されて聖場を遁走した。
その遁走の途上、彼らは河鹿峠の谷道にてイクとサールの追っ手に会し、活劇を繰り広げる真っ最中、またしてもスマートが猛虎の勢いで現れてイクとサールの危難を救った。本巻は、敵が自らつまずいて途上に転倒し悲鳴を上げる場面までを口述している。
愛善の徳と信真の光に充たされた天国の天人界に籍を有する初稚姫と、狂妄熱烈な高姫、また肉体的精霊の妖幻坊、三つ巴の活躍は、憑霊現象の如何なるものかを知るにもっとも便利なものを信じる次第である。
読者は意をひそめてじゅうぶんに研究されることを希望する。口述者の瑞月も、またある精霊の神格を充たされたる媒介的活動によって、この大部の書籍を編することを得たのである。今後ますます御神助をもって完結の域に達することを天地の神明に願求する次第である。