祠の森に現れた偽杢助の正体は、八岐大蛇の片腕として名も高い、獅子と虎の忠誠を備えた怪しの動物であり、名を妖幻坊といった。
一方、高姫は祠の森の御社を蹂躙せんと出て来た悪霊に魂を奪われてしまった。妖幻坊は高姫をたぶらかして夫婦に成りすまし、生地を隠していた。しかし初稚姫の霊光と、お供の猛犬スマートに恐れて逃げ出し、スマートに眉間をかぶりつかれてひとまず逃げて行った。
妖幻坊と高姫が、珍彦夫婦を亡き者にしようとした毒殺の企みも、楓姫の枕元に現れた文殊菩薩が授けた霊薬によって何事もなく終わった。
スマートに傷つけられた妖幻坊を癒そうと、薬の茸を採ろうと大杉に梯子をかけた高姫も、梟にこつかれて墜落し、寝込んでしまった。高姫は、初稚姫の献身的な看病によって回復した。しかし高姫は初稚姫をねたみ、その神力をおそれて再び奸策を企みはじめた。
高姫は回復すると、一度も見舞いに来なかったと珍彦の館に文句を言いに上り込んできた。しかし対応した楓は逆に高姫の災難を嘲笑い、父母に毒を盛った罰だと非難してかかった。また珍彦と静子が、毒殺未遂の件を斎苑館に報告し行くと高姫を脅して帰そうとした。
高姫と楓は言い争いになり、怒った高姫はこぶしを固めて楓を打ち付けた。楓は大きな声で叫び、人を呼ぶ声が酒盛りをしていたイル、イク、サール、ハル、テルにまで届いて五人はその場にかけつけた。