初稚姫と楓は、火鉢を囲んでお道の話をしていた。いつしか話は高姫の話になり、さまざまな悪霊に魅入られている高姫を、二人で協力してなんとか救いたいものだと語り合っていた。
そこへ高姫がふすまをけ破って闖入してきた。二人をにらみつけて怒りに声を震わせながら、初稚姫と楓が、自分を害する相談をしていたと非難した。そして自分の足を後ろからさらえた楓を怒鳴りつけた。
楓は高姫に詫びを入れ、初稚姫もなだめようとしたが、高姫は逆にスマートに加えられたことに怒りだし、初稚姫を棍棒で打ち据えようとした。するとまたしてもスマートが駆けこんできて、高姫を引き倒した。初稚姫はスマートをおとなしくさせたが、高姫はスマートを一つ殴りつけ、怒鳴り散らして狂乱の態であった。
初稚姫、楓はスマートと共に珍彦の館をさして出て行った。高姫が火鉢を投げつけ、戸棚の膳や椀を投げつけて荒れ狂っていると、腹の中から声がして、自分たちは初稚姫と楓の生霊で、高姫の肉体を亡ぼすために取り憑いたのだ、と言い出した。
これは高姫自身の悪霊が、高姫が初稚姫・楓をますます憎むように仕向けるための策略であった。すべて悪霊が人を傷つけ苦しめようとするときは、このような手段を取って人間同士を憎しみ合わせるものである。大本の役員たり信者たるものは、十分に霊界の消息に通じて、彼らの詐言に迷わされてはならない。
高姫が怒りだすと、腹の中の声は、高姫の霊格の高さに往生したように芝居を打って、ますます高姫を増長させた。高姫は棍棒を抱えて珍彦の館を指して荒れる勢いすさまじく進んで行った。
高姫は、初稚姫と楓が話しているところに現れて、二人に向かって棍棒を振りかざした。またもやスマートが駆けてきて、高姫をその場に押し倒した。高姫は怖気づいて自分の居間に逃げ帰り、夜具をかぶって震えていた。
スマートは高姫の後を追ってきて、扉を引っ掻きながら唸りたてている。高姫も、高姫の体内の悪霊も、スマートの声に縮み上がって固まり、ふるえていた。