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文献名1霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
文献名2第4篇 神犬の言霊よみ(新仮名遣い)しんけんのことたま
文献名3第15章 妖幻坊〔1309〕よみ(新仮名遣い)ようげんぼう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-07-22 15:39:06
あらすじ
春雨の降りしきる頃、高姫は腹中の憑霊たちと斎苑館を占領する空想を描いてひとり笑壺に入っている。初稚姫はこのごろ、高姫の命令によって珍彦館に籠り、神殿や大広間にしばらく姿を現すことを禁じられていた。

スマートも姿を見せないために、悪孤たちは元気がよかった。高姫は一弦琴を取り出して歌い始めた。高姫は琴を引く芸は持っていなかったが、憑依している蟇先生が肉体を使って琴を弾じていた。

妖幻坊は厠から戻ってきた。そして高姫の琴芸に感心し、ひとしきりからかった。高姫は、日の出神のお筆先を書くからといって、酒をあてがって杢助を自室に帰した。高姫は筆と墨を用意し、一時ばかりかかって筆先を書きあげた。

そしてイルにこれを大声で拝読させて、珍彦館にいる初稚姫にも聞かせて改心させてやろうと思い立ち、書き上げたばかりの筆先三冊を三宝に乗せて受付にやってきた。高姫はイルたちにこの筆先を書写して、それを初稚姫に聞こえるように拝読せよと命じると、自分の居間に帰って行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月23日(旧12月7日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年12月7日 愛善世界社版205頁 八幡書店版第9輯 225頁 修補版 校定版211頁 普及版104頁 初版 ページ備考
OBC rm5015
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本文  春雨の降りしきるシンミリとした窓の中、四辺の空気も和らいで、物に熱し易い高姫の頭はどことはなしにポカポカと助炭の上に坐つた様な心持がする。高姫は腹中に潜める沢山のお客さまと、徒然の余り、斎苑の館を占領すべき空想を描いて、独り笑壺に入つてゐる。腹の中から義理天上と称する兇霊は、何とはなしに此頃は元気がよい。それは初稚姫が高姫の命令によつて、珍彦館に籠居し、暫く神殿又は大広前に姿を現はす事を禁じられ、且スマートを追ひ返したと云ふ喜びからである。併しながらスマートは変現出没自由自在の霊獣なれば、決して何処へも行つては居ない。只初稚姫の身辺近く侍し、人の足音が聞えた時は、早くも悟つて床下に身を隠すことを努めてゐたのである。高姫は一絃琴を取出して歌ひ始めた。無論高姫は琴などを弾く様な芸は持つてゐない。憑依してゐる蟇先生が肉体を自由自在に使つて、琴を弾ずるのであつた。
『チンチンシヤン、シヤツチンシヤツチン、シヤツチン、チンチン
 春雨にしつぽり濡るる露の袖
 こつちが恋ふれば杢助さまも
 同じ思ひの恋心
 チンチンチン、シヤン……シヤンシヤン、シヤツチン、チンチリチン、チンーチンー
 すれつ、もつれつ、袖と袖
 会うて嬉しき此館
 玉国別の身魂をば
 此高姫を守護する
 義理天上日出神
 深い仕組に操られ
 やうやう此処に宮柱
 太しき建てて神々を
 斎きまつりて珍彦や
 静子の方を後におき
 宮の司と相定め
 後白浪と道晴別
 其他の家来を引連れて
 何処をあてとも永の旅
 出で行く後に入り来る
 神力無双の杢助さま
 身魂の合うた高姫が
 昔の昔の大昔
 神の結びし縁にて
 やうやう此処に巡り会ひ
 其神徳を世の人に
 鼻高姫とホコラの森
 二世も三世も先の世かけて
 自由自在の麻邇宝珠
 厳の身魂の玉椿
 八千代の春を楽しみに
 二人の仲は岩と岩
 堅き契を結び昆布
 神楽舞をば鯣の夫婦
 実にも楽しき吾身の上
 杢助さまも嘸や嘸
 嬉しい事で……あらう程に
 思へば思へば惟神
 日出神の引合せ
 厳の御霊の御守り
 瑞の御霊の悪神が
 千々に心を配りつつ
 妨げなせど神力の
 充ちたらひたる夫婦が企み
 とても破れぬ悲しさに
 今は火となり蛇となりて
 心をいらち胸こがし
 騒ぎまはるぞ……いぢらしき。
 シヤツチン シヤツチン、シヤツチンチン シヤツチンチン、チーンリンチン、チンリン チンリン チンツ、シヤーン シヤーン』
と弾き終り、一絃琴を傍に直し、膝の上に両手をキチンとついて、床の間の自筆の掛軸を眺めながら、
『ホホホホ』
と嬉しげに笑ひ興ずる。妖幻坊は廁から廊下をドシンドシンと、きつい足音させながら襖をあけて入り来り、
『高姫、お前は不思議な隠し芸を持つてゐるのだな。俺は又そんな陽気な事はチツとも知らない、信仰一途の熱狂女だと思うてゐたよ。イヤもう感心した』
『ホホホホ、能ある鷹は爪かくすと云ひましてな。今迄此高ちやまも、爪をかくして居つたのだが、今日は此通り春雨で、何とはなしに心が淋しいやうでもあり、花やかなやうでもあり、お琴をひくには大変に天地と調和が取れるやうな気分になつたものですから、久し振で一寸爪弾きをやつてみましたのよ』
『情趣こまやかに四辺の空気を動揺させ、次いで此杢助の心臓迄が非常に動揺したよ。俺も今迄永らくの間、斎苑の館に御用をして居つたが、二絃琴の音はいつも聞いて居るけれど、一絃琴はまだ聞き始めだ。一筋の糸の方が余程雅味があるねえ。一筋縄ではいかぬお前だと思つてゐたが、到頭正体が現はれよつたなア。アツハハハハ』
『コレ杢助さま、余り揶揄つて下さるなや』
『カラが勝たうが日本が勝たうが、そんなこたチツとも頓着ないのだ。兎角浮世は色と酒だからなア。オイ高ちやま、一杯注いでくれないか』
『杢助さま、貴郎は酒ばかり呑んで居つて、一度も神様に拝礼をなさつた事はないぢやありませぬか。神様にお仕へする者が、それ程無性では、皆の者の信仰をつなぐ事が出来ぬぢやありませぬか。貴郎が模範を示さなくちや、役員や信者迄が神様の御拝礼をおろそかにして困るぢやありませぬか』
『俺は斎苑の館に居つても総務をやつて居つたのだ。総務といふものは一切の事務を総理するものだ。祭典や拝礼などは、又それ相当の役員にさせばいいのだ。ここには珍彦といふ神司が置いてあるのだから、俺はマア遠慮しておこかい。何だか神様の前へ行くと恐ろしい……イヤイヤ恐ろしく霊がかかるので、又大きな声でも出しちや皆の者がビツクリするからなア。それで実は拝みたくつて仕方がないのだが、辛抱して御遠慮して居るのだ。吾々の身魂は霊国の天人だから、神教宣伝の天職が備はつてをるのだ。祭典や拝礼は天国天人の身魂の御用だ。神界には、お前も知つてゐるだらうが、互に其範囲を犯す事は出来ない厳しい規則が惟神的に定められてあるからな』
『成程、それでお前さまは拝礼をなさらぬのだな。さうすると私は霊国天人ですか、天国天人ですか、何方だと思ひますか』
『勿論お前だつて、ヤツパリ霊国の天人だよ。それならばこそ義理天上さまが、毎日守護神人民に教ふる為に、神諭をお書きなさるぢやないか。其生宮たるお前はヤツパリ相応の理によつて、肉体的霊国天人だからなア』
『流石は杢助さま、偉いものだなア。何だか私も此間から拝礼が厭になつて仕方がないのよ。又曲津が腹の中へ這入つて来やがつて、大神様を恐れるので、こんな気になつたのかと心配して居りました。併し、貴郎の説明に依つて何も彼も身魂の因縁がハツキリと分りました。ヤツパリさうすると、此高姫は偉いものだなア』
『そりやさうとも、杢助さまの女房になる位な神格者だからなア、お前も亦これでチツと筆先の材料が出来ただらう』
『ヘン、馬鹿にして下さいますなや。人に教へて貰うて、筆先なんか書きますものか』
『それでも見てゐよ。キツとお前の筆先に現はれて来るよ。俺がこれだけお前に聞かしておくと、義理天上さまが成程と合点して、キツと明日あたりから、霊国の天人といふお筆先を御書きなさるに違ないワ。何せよ、模倣するのに長じてゐる肉宮だからなア』
『お前さまが今言つた言葉は、決してお前さまの力ぢやありませぬぞや。義理天上さまがお前さまの身魂を使うて此高姫に気をつけなさつたのだよ。これ位な道理が分らぬ様な杢助さまぢやありますまい。お前さまが、こんな事を仰有るやうになつたのもヤツパリ時節だ。高姫に筆先を書かす為に、義理天上様が、お前さまの口を借つて一寸言はせなさつたのだから、これからの筆先はよつぽど奇抜なものが現はれますで、マア見てゐなさい。お前さまだけにはソツと見せて上げますワ』
『ハツハハハ、また出来上りましたら拝読を願ひませうかい』
『杢助さま、一寸俄に神界の御用が忙がしうなつたから、貴郎はお居間へ行つて、お酒でもあがつて休んでゐて下さい。お前さまが側にゐられると、思はし筆先が書けませぬからなア』
『ハツハハハ、お筆先の偽作を遊ばすのに、私が居るとお邪魔になりますかな。それなら謹んで罷りさがりませう。御用が厶いましたら、御遠慮なくお召し出し下さいますれば、鶴の一声、宙を飛んで御前に伺候致しまする。ハハハハ、高ちやま、アバヨ』
と腮をしやくり腰を振り、ピシヤツと襖を締めて、吾居間へ帰りゆく。そして中から突張りをかへ、怪物の正体を現はしてグウグウと鼾をかいて寝て了つた。
 高姫は俄に墨をすり、先のちびれた筆をキシヤ キシヤとしがみ、墨をダブツとつけて一生懸命に書き始めた。一時ばかりかかつて書き終り、キチンと机の上に載せ独言、
『義理天上さまも追々御出世を遊ばし、お書きなさる事が大変に変つて来た。こんな結構な教は人に見せるのも惜しいやうだ。併し之をイル、イク、サール、ハル、テルの幹部に読ましておかぬと、高姫の肉宮を安く思つて仕方がない。又肝腎の事が分らいではお仕組の成就が遅くなつて、どもならぬから、惜しいけれど、一つ此処へ呼んで来て拝読させてやらうかな。初稚姫にも聞かしてやれば改心するであらうか……イヤイヤ待て待てモウ暫く隠しておかう、発根と改心が出来たら読むやうになるだらう。何だか初稚姫は、私の筆先を心の底から信用してゐない様な心持がするから、読めと云つたら読むではあらうが、身魂の性来が悪いから、充分に腹へは這入るまい。杢助さまの教だと云へば、聞くかも知れぬが、さうすると日出神の神力がないやうにあつて、都合が悪いなり……困つた事だなア。待て待て、一つこれは考へねばなろまい。ウーン成程々々、イルに大きな声で拝読さしてやらう。そして珍彦の館へ、あの受付からならば突き抜けるやうに聞えるのだから、此結構なお筆を耳に入れたならば、イツカな分らぬ初稚姫も、成程と耳をすませ改心するに違ひない、此筆先で押へつけるに限る』
とニコニコしながら、書いた筆先二十枚綴を三冊ばかり、三宝に載せ、目八分に捧げ、襖をスツと開け、ソロリソロリと勿体らしく受付指して進み行く。受付では担当者のイルを始め、ハル、テル、其他の連中が胡坐をかいて自慢話に耽つてゐる。
ハル『オイ、イルさま、お前一体此受付で偉さうにシヤチ張つて居るが、月給は幾ら貰つて居るのだい』
『まだ珍彦さまが、定めて下さらぬのだ。ナアニ別に神様の御用するのだから、何なつとヒダルないやうにして貰へさへすりや、月給なんかいらないよ。結構な神様の御用をするならば、献労の積で、無報酬で御用さして頂きたい。併しながら高姫なんかの指図を受けねばならぬとすれば、相当の給料を貰はないと厭だなア』
『それなら幾ら欲しいと云ふのだい』
『マア一ケ月十円位で結構だ』
『貴様、バラモン教ではモチと沢山に貰うてゐたぢやないか』
『さうだ、五十円に一円足らずで、四十九円の月給だ。アハハハハ、ハル……併しお前は幾ら頂戴して居つた』
『俺かい、俺はザツと十八円だ』
『成程、それでは毎日九円々々の泣暮しだな、エヘヘヘヘ』
と他愛もなく話に耽つてゐる。そこへ高姫は三宝に今書いたばかりの、まだ墨も乾いてゐないボトボトした筆先を目八分に捧げて入り来り、
『コレ、皆さま、何を云つて居るのだい。お前さま達は、神様の御精神がチツとも分らぬ八衢人間だから困つて了ふ。受付といふものは、一番大切なお役ぢやぞえ。奥に居る大将は仮令少々位天保銭でも、受付さへシツカリしてさへ居れば、立派な御神徳が現はれるのだ。ここへ立寄る人民が、受付の立派なのを見て……あああ、受付でさへもこんな立派な人間が居るのだから、ここの教主は偉い者だらう……と直覚する様になるのだ。をかしげな、訳の分らぬ人間が受付に居らうものなら、何程教主が立派な神徳があつてもサツパリ駄目だからな。今義理天上様から、結構な結構なお筆先が出たによつて、ここで之を拝読いて、ギユツと腹に締め込みておきなされ。そして立寄る人民に此お筆先を読んで聞かすのだよ。併しお直筆は勿体ないから、お前さまがここで写して控をとり、お直筆をすぐ返して下され。結構な事が書いてあるぞや』
イル『ハイ、それは何より有難う厶ります。早速写さして頂きまして、拝読さして貰ひます』
『ヨシヨシ、併しながら読む時には、珍彦さまの館へ透き通るやうな声で、読んで下されや』
『此お筆先はまだズクズクに濡れて居りますな、只今お書きになつたのですか』
『ああさうだよ。今書いたとこだ。結構なお蔭を、ぢきぢきにお前に授けるのだから、神様に御礼を申しなさいや』
『エエ一寸高姫さまにお伺ひしておきますが、此お筆先は今書いたと仰有いましたね。それに日附は去年の八月ぢやありませぬか。貴女は八月頃には此処に居られたやうに思ひませぬがなア』
『そこは神界のお仕組があつて、日日が去年にしてあるのだよ』
『さうすると、貴女は杢助さまに教へて貰つたのですな。それを教へて貰うてから書いたと云はれちや、義理天上様の御神徳が落ちると思うて、杢助さまに聞くより先に知つて居つたといふお仕組ですな。成程流石は抜目のない高姫さまだワイ』
『コレ、訳も知らずに何を言ふのだい。義理天上様が、去年からチヤンと神界で書いて置かれたのだ。肉体が忙しいものだから、肉体の方が遅れて居つたのだよ。お前達は霊界の事が分らぬからそんな理窟を言ふのだよ。何事も素直にいたすが結構だぞえ。それが改心と申すのだからな』
『エツヘヘヘヘ、さうでがすかなア、イヤもう恐れ入りました、感心致しました、驚きました、呆れました、愛想が……尽きませぬでした。有難う厶いました』
『コレ、イルさま、ました ましたと、そら何を云つてるのだい』
『エーン、あの、何で厶います、ましだ……と云うたのです。つまり要するに、日出神様のお筆先は、厳の御霊のお筆先よりも幾層倍マシだと思ひまして、ヘヘヘヘ一寸口が辷りまして厶ります。余り立派な事が書いてあるので、呆れたので厶います』
『コレ、まだ読みもせない癖に、どんな事が書いてある……分るかなア』
『ヘ、エ、そこがそれ、天眼通が利くものですから、眼光紙背に徹すと申しまして、チヤンと分つて居ります』
『さう慢心するものぢやありませぬぞや。サ、早く写していただきなさい』
と少しく顔面に誇りを見せて、反身になつてゾロリゾロリと天下を握つた様な態度で、おのが居間へと帰り行くのであつた。
(大正一二・一・二三 旧一一・一二・七 松村真澄録)
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