高姫と妖幻坊はいちゃいちゃしながら酒を飲んでいた。そこへ初と徳の両人が青い顔をして帰ってきた。高姫が首尾を尋ねると、初と徳は松姫が言うことを聞かず、杢助を兇党界の化け物だと言っていると報告した。
高姫と妖幻坊は、初と徳が松姫にしてやられたことを悟った。妖幻坊は二人に、今度はしっかり武装していくように言いつけ、松姫を倒した方が上役になるとけしかけた。初と徳は喧嘩装束に棍棒を携え、松姫館に進んで行った。
お千代はスマートと共につつじの花をちぎりながら、向こうの谷の森林で遊んでいた。スマートはにわかに体をふるわせて、お千代の袖をくわえて引っ張り始めた。そこへお菊が走ってやってきた。お千代とお菊はスマートの様子がただならないので、もしや松姫の身に何かあったのではないかと松姫館に急いで戻り始めた。
松姫はただ一人、神殿に向かって神示を伺っていた。そこへ戸を押し破って初と徳がやってきた。二人は樫の棒を持って松姫に打ってかかる。松姫はそこにあった机を取って、神助を祈りながらしばらく防戦に努めていた。
松姫は数十合も戦ってもはや体力尽き、二人の棍棒に打ち殺されようかというとき、宙を飛んで駆けてきたスマートは、初と徳の足をくわえて引き倒し、唸りながら睨みつけた。
二人は起き上がり、ほうほうの態で杢助と高姫のところに逃げて行った。初と徳の報告を聞いた杢助と高姫は、なかなか松姫をやっつけるのが容易でないと悟ると、初と徳が勝手に松姫に乱暴を働いたということにして、松姫を懐柔する策に出た。