ケースが脱いだ着物も見当たらなくなっていた。北へ進んで行くと、川があったので三人は横たわって体を洗い、川端の草をちぎって手ぬぐい代わりにこすり、ようやく臭気を洗い落とした。
一同がこれからどうするか思案していると、どこともなく笠、蓑、衣類が降ってきた。よくよく見れば自分の着物で、臭気はなく乾いている。初と徳は、狸が神様に叱られて洗濯をしたのだ、これも信仰のおかげだと感謝している。
実際は、半ば腐った菰が立派な衣服に見えていたのであった。三人は嬉しそうに着かえた。ガリヤとケースは斎苑の館に急ごうとしたが、初と徳は、三五教の敵である杢助と高姫がこのあたりに隠れているに違いないから、そいつらをやっつけて行こうと引き留めた。
初と徳は、小北山で杢助と高姫が明かした企みをガリヤとケースに説明し、自分たちも使い捨てのひどい目にあったことを語った。ガリヤとケースもこれは聞き捨てならないと、萱の草原に二人が潜んでいないか探し始めた。
すると四人を呼び止める者がある。初と徳は、お千代とお菊が四人を呼んでいるのを認めた。お千代は、高姫と杢助が魔法を使って浮木の森に城郭を構え、三五教の信者を引っ張り込むのみか、説得に向かった松姫も捕えて牢にぶち込んでしまったのだ、と助けを求めた。
初と徳は、松姫を助けて自分たちの裏切りを許してもらおうと思い直し、ガリヤとケースは松姫が松彦の女房だと知って、どうしても助けなければと、お千代とお菊に案内されて曲輪城の表門を指して進んで行った。
すると向こうから綾錦をまとった美人が七八人、手に駕籠を持ち花を摘みながらやってきた。その華やかさとしとやかさに、四人の男は魂を奪われて見とれている。